メインメニュー
このサイトについて
話題のテーマ
出版物紹介
アクセスカウンタ
10040135

2473 :昨日
0704 :本日
会員専用ページ・ログイン
ユーザ名:

パスワード:


パスワード紛失

新規登録
職場の実態レポート : 働くことを考える(1)
投稿者: rodo-info 投稿日時: 2007-1-22 0:00:00 (1751 ヒット)




「労働通信」2006年7月号の記事より


 昨年、本誌では「職場の変化」をテーマに毎号連続的に記事をとりあげた。そこでは、雇用形態や労働時間、仕事のあり方が大きく変化するなかで、労働者の意識情況や人間関係も変化してきていることをつかんできた。
 そのなかでは、いま社会的に問題となっているNEET層――自分のやりたい仕事を見いだせず、就職もできず、また仕事のなかで自分の能力をみがいていく機会させ失っている層がいる一方で、複雑化・高度化している仕事を精力的に、積極的に取り組み、自分なりの目標や人生設計をもって、自発的に動いている層も確実に増えていることがあきらかになってきた。こうした青年層をどう労働運動のなかに登場させていくかは大きな課題となっている。
 そこで本誌ではこの問題をもう一歩、踏み込んでいくために、「働くこと」にたいして、青年層だけでなく中高年層や、あるいは各種の雇用形態で働く労働者が、それぞれどのように感じて、何を望んでいるのかを読者の皆さんとともに考えていきたい。今回は、「スキル・アップ」について考えたい。





全文を読むには下記の<続き・・・>をクリックしてご覧下さい。


<スキル・アップが日常の会話に>

 ここ数年、労働者の日常会話でもマスコミの報道などでも、「スキル・アップ」とか、「キャリア・パス」「キャリア・アップ」という言葉がよく話題にのぼるようになっている。
 「スキル・アップ」とは、能力の向上といった意味だ。「キャリア・パス」「キャリア・アップ」とは、仕事の経験を積みながら、次第に能力を高めていくための順序、あるいはそのために職場を異動する経歴のことをいう。
 職業能力の向上という意味では、今でも昔でも「スキル・アップ」が求められているのは同じことだが、終身雇用制が崩壊し、雇用の流動化や「成果主義」賃金が導入されるなかでのそれは、従来とは違った意味合いを持ちはじめている。


<現在の職場は通過点>

 大手メーカーの法務部門に転職したAさん(男性、32歳)は、「ここで自分がどれだけ実力をみがけるかが勝負です」という。
 Aさんは大学を卒業後、ある企業に営業マンとして就職したが、ノルマに追われる毎日に嫌気がさして、半年でその会社を辞めた。一念発起して、弁理士をめざすことを決意し、特許事務所に転職し、特許出願の明細書を作成するなどの実務をこなしながら、弁理士の資格をとるための勉強を続けてきた。英語も不可欠のスキルだと考え、TOEIC800を取得した。
 その後、「もっと違う世界もみてみたい」と思うようになり、弁理士事務所を退職して、派遣会社に登録した。いくつかの企業に派遣されて、特許を扱う実務に従事してきた。そうしたなかで最近、長年の念願がかなって弁理士の試験に合格することができた。
 法律上は、弁理士の資格があれば、自分で特許事務所を開業することができるが、いまのままでは、だれも顧客がつかない。Aさんは、どうするかさんざん迷ったすえ、知的財産スタッフを募集していたある大手メーカーの法務部門に正社員として転職することを決めた。国際競争がはげしくなっている今日、メーカーにとって特許は死活の問題だ。世界的な規模で競合他社の動向を把握し、自社の特許戦略を立案し、確実に特許を取得していく仕事だ。英語が得意なAさんには、膨大な海外の特許情報を短期間で翻訳し、上司に説明することも求められる。仕事は派遣のときとは比べものにならないぐらいに責任が重く、長時間労働がつづく。
 「でも、ここで実力を身につけ、人脈を広げたら、将来、役に立つと思います」とAさんは語る。
 Aさんにとって、いまの大手メーカーに正社員として就職したことはけっして終着点ではない。将来、自分の事務所をもつことを目標に、あくまでも自分のキャリア・アップの通過点と考えている。


<高まる将来への不安と希望>

 Aさんの場合は、かなり「うまくいっている」例かもしれない。
 終身雇用制が崩壊し、学校を卒業後、必ずしも正社員として就職するとは限らなくなっている今日、どの労働者も、10年ぐらい先をみすえた「キャリア・アップ」の見通しを考えざるを得なくなっている。それは、自分が本当にやりたいことは何かを考え、追求するという、若者らしい志向ともむすびついている。
 郵便局の非常勤職員として働いているBさん(男性、23歳)は、大学を卒業し、ある会社に就職したが、やはり大学で学んだ法律関係の仕事をしたくなり、会社を辞めて、もう一度専門学校で勉強をしなおしている。
 Bさんは、「人生のことを考えると悔いを残したくない。僕にはこれがやりたいという仕事がありませんでした。いまさらこれがというのもない。毎日あくせく働いて疲れて帰ると自分が何のために働いているのか考えさせられます。プロ野球で楽天に指名されたのに、楽天にいきたくないという選手がいるのが信じられない。プロ野球という自分の好きな会社に入れて、ぜいたくをいうなといいたい。僕なら楽天でがんばって好きな球団にいけるように努力したい」という。
 ある会社で派遣の営業職として仕事をはじめたCさん(女性、30歳)の場合は、自分のキャリア・パスの軌道修正を考えている。
 Cさんは、大学卒業後、税理士事務所で働きながら、税理士の資格を取るための勉強をしていた。
 当時、大学院の修士課程を出ると試験科目の一部が免除になる規定があったので、数年間勤めた税理士事務所を退職し、大学院へ進学した。
 2年間で大学院を終了したが、その後も税理士の試験には受からなかった。
 「30歳をむかえて、これ以上続けるのはちょっと無理だと思って、税理士の勉強は一時お休みにして、方向転換しました。一つの目標をめざして粘り強く勉強するのもいいけれど、『自分はこれしかしないんだ』と決めてかかるよりは、別のことも経験してみようと思うようになったのです。その道で、成功すれば、それでもいいし、その経験を積んだ上で、また税理士の目標へ向かって勉強してもいいと思います。今は、はっきりとした展望がないのが正直なところですが、とにかく今の会社での仕事ぶりがまわりに認められるよう精一杯努力するだけです」という。
 中小企業で営業事務の仕事をしているEさん(女性、26歳)は、「いまの私には、これといった専門的な知識とか、スキルがない。これをやっていきたいという目標も見えてこない。早く結婚して、専業主婦という道もあるけれど、将来のことを考えると何かを身につけなくては不安だ。せめて英語ぐらい身につけたい。学生時代も英語は好きだったので」と考えている。
 そのことを先輩に相談したが、「何かの目標なしに漠然と英語だけやっても身につかないんじゃないかな。英語ができる人ぐらいゴマンといることだし。もっと専門的な仕事でスキル・アップを考えたらどうかな」とアドバイスを受け、何をやっていけばいいのか真剣に考え始めているという。


<能力の高い人には「やさしい」会社>

 成果主義賃金が導入されるなかで、正規雇用の労働者にいっそう強くスキル・アップが求められている。
 大手メーカーの製造部門で働くFさん(男性、40歳)はいう。
 「確かにスキル・アップは仕事ができるか否の判断基準であることは間違いありません。当社でいえば、現場では国家技能検定などがあります。
 しかし、あくまで受講する目的は、会社から成績が『良い』という評価をもらいたいからです。そこがメインで自分の能力を高めることというふうにとらえる人は少数です。ですから、上司から資格試験を受けないかというお誘いがあって、はじめて受ける場合が大多数です。自分から自己啓発でのぞむケースはやはり少ないです」という。
 別の大手電機メーカーのGさん(男性、30歳)は、「この会社は、従業員教育も充実しており、やる気さえあればこたえてくれる会社だとは思います。でも、能力の高い人にはやさしいが、そうでない人にはきびしい会社だと思います。結構プレッシャーがあります」という。
 かつての官公労型労働運動の拠点として、およそ「スキル・アップ」という考え方とは縁がなかった郵政公社の職場でも、民営化を前にして、「接遇マナーのスキル・アップ」がいわれるようになった。一ツ星から三ツ星の3段階評価がなされ、一ツ星は全員取得が指標にされ、二ツ星からは任意取得になっている。
 若い世代や役職者は、任意の二ツ星や三ツ星の取得のため、日曜日の自主研修会で学習したり、本を買って勉強するなどして、積極的にチャレンジしている。しかし、スキルが賃金の評価につながっていくといわれているため仕方なく受験している傾向が強い。


<労働者の助け合いはどこへ>

 郵便の職場では、年配の労働者の大部分は二ツ星、三ツ星の「接遇マナー」を受験しない。「時間外にそうしたものをするのはおかしい。勤務時間内にきっちりと研修をするべきだ」という考え方からだ。
 Hさん(男性、50歳代)は、「労働者が共同で作業をしても能力や恣意的な評価で賃金に格差がつきます。同じ仕事でも個人的な能力差はあります。そこは助け合ってやってきました。そうした気持ちがなくなりつつあります。組合とか関心がなくなるのはそういう問題もあるのではないでしょうか」と話していた。
 さきに登場した大手メーカーの製造部門のFさんも、「私が仕事をしてうれしかったのは後工程の人が喜んでくれたり、これをいったいどうするのかという難問を解決できたりしたことです。若者のなかにはみんなで一つの目標に向かってなしとげる喜びが失われていると昨今の職場の雰囲気をなげいている人もいます」という。
 最初に登場したAさんも、気丈のように見えて、悩みを率直に相談できる場がほしいという。これまでの職場や勉強のなかで知り合った人のなかで、信頼できる幾人かの人たちとはメールでやり取りしたり、ときどき飲みにいったりして、相談にのってもらっているという。


<スキル・アップを支援する労働組合>

 このようななかで、労働組合がスキル・アップを組合員の要求ととらえ、その支援を積極的にすすめる動きも数年前からはじまっている。
 電機連合では、年功型賃金が成果主義賃金へと変わり、スキル・アップやキャリア形成も「会社が何とかしてくれるもの」から、「自ら切り開くもの」へと変わっているなかで、「他力本願的なキャリア形成」ではなく、「自らが形成していく」積極的な労働者を増やすための支援策として、「電機産業職業アカデミー」(通称:職アカ)の活用推進をおこなっている。
 「職アカ」は次のような趣旨で運営されている。
 「組合員一人ひとりが、豊かで幸せな生活の実現のために、今持っているスキルや資格などの点検をおこない、働く場の環境変化やさまざまな変化に戸惑うことなく、プラス思考で職業能力をみがき、今の仕事でより高い成果を発揮する、あるいは新たな仕事にチャレンジするなど、早い時点で個人のキャリアデザイン・ライフデザインを描き、目標とする自己実現が可能となるようサポートします」。
 具体的な内容としては、‥正職業分析やキャリア形成に関する相談を受け付けるコンサルティング活動、■稗圈∋務・管理、営業・経営、ヒューマンスキル、ものづくりなど各分野の企業の教育研修講座や公的な能力開発セミナーの受講支援、4覿箸虜陵兢霾鵑猟鷆 宗修覆匹鬚こなっている。
 JPU(日本郵政公社労働組合)の04年の近畿地方大会でも、口頭レベルではあるが、全国にさきがけてキャリア・アップ支援をうちだしている。その具体的内容は、人事異動でまったく違う職場に配転したとき、受け入れ職場の仲間のフォローも必要であるが、JPUの組織として個人が新しい職場の仕事を習得できるようサポートできる体制づくりである。
 あわせて、公正な評価を求める運動もつよめている。ある組合役員は、「賃金に能率給導入が決定されてこの3年で大きく変化しています。まず、自己評価で自分のスキルの段階を3段階で評価されられるし、そのことが賃金評価につながります。人事異動や配転で多くの職場のことをこなせることで評価が高くなっています。労働組合は恣意的な評価をできるだけなくし、ガラス張りの評価を求めているがまだ、恣意的な評価が残っているように思います」と話していた。


<検討すべき課題>

 スキル・アップはこんにち、いやおうなしに労働者につきつけられた問題となっている。それは、財界が労働者をより効率よくつかって「国際競争」にうちかつために、終身雇用制から雇用の流動化へ、年功型賃金から成果主義賃金へと労働市場の「構造改革」をすすめていくなかで浮き上がってきた問題である。それはまた、社会全体が高度化し、どのような仕事でも比較的高度で専門的な知識が求められるようになっているという技術的・社会的要因もくわわっている。
 だが、スキル・アップ、スキル・アップといわれるが、それはいったい何なのか? 各種の国家資格、語学の検定、ソフトウエア・各種技能の検定、修士や博士などの学位をとることなのか? 実務経験そのものか。もっと広い意味でのコミュニケーション能力や管理能力、企画力、プレゼンテーション(発表)能力、問題発見・解決能力、折衝能力・・・・なのか。これらが、相互にどう関係しているのか。これらの能力をどうやって評価していったらいいのか。みんなが疑問に思っていることである。
 さらに、これにたいして労働組合がどう対応していったらいいのか。前向きにとらえるのか、後ろ向きにとらえるのか。スキル・アップを図りたいという労働者の要求にこたえる活動をすすめるとしたら、それを労働者の団結や連帯へとどう高めていくのか。
 さらに労働組合として、個々のスキル・アップ支援をおこなうだけでなく、労働のあり方としてどのような姿を政府や財界などに要求していくのか、その構想も労働者の要求にもとづきながら考えていく必要もある。
 いますぐここで回答は出せないが、今後の「働くこと」のシリーズのなかで、ひきつづき考えていきたい。皆さんのご意見をお待ちしている。







 

 『労働通信』は、現代の労働者が直面する問題や日本と世界の労働運動について隔月刊で編集、発行している雑誌です。

 編集委員は全員が職場ではたらき運動に参加している労働者です。また、全国の職場で奮闘している活動家のみなさんからの投稿にささえられて発行しています。

 購読料は、1部500円(送料込み)、年間で3,000円です。

 購読のお申し込みは「労働通信」ショッピングモールからどうぞ。
 






印刷用ページ このニュースを友達に送る
検索
テーマ別の記事(選択してください)
テーマ別の最新記事
[ HOME ] [ NEWS ] [ BBS ] [ DOWNLOAD ] [ LINK ] [ FAQ ]