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理論問題 文化・歴史 : 視点充電 ブラック企業 〜日本を食いつぶす妖怪〜(文芸新書)
投稿者: rodo-info 投稿日時: 2013-6-26 22:00:00 (989 ヒット)

日本が人が壊される実態を把握
戦略・提言はこれからの課題




ブラック企業 〜日本を食いつぶす妖怪〜

著者:今野晴貴

評者:前田力



 

 雑誌の『ワーカーズレポート』のWEB移行に伴う最終号で浅井リョウの『何者』をとりあげた。『何者』を読んだ時に就活生の間でささやかれる「ブラック企業」という聞きなれない言葉が気になっていた。何となく「胡散臭(うさんくさ)い企業、一流企業でない企業」という想像が頭の中に浮かんでいだ。

 普段はあまり「新書コーナー」に立ち寄ることもなく小説のコーナーに向かうのだが、ふと「ブラック企業」のタイトルが目についた。作者は今野晴貴、NPO法人POSSE代表であり、数多くの若者の労働相談を中心に活動するなかで調査や分析をしているようだ。

 著者は「ブラック企業」という言葉がリーマンショック後に現れた造語であること、それ以前はバブル崩壊後の「フリーター」「ニート」と呼ばれる主に非正規社員の雇用問題が社会的な問題として取り上げられてきたが、「ブラック企業」は新卒が掴みえた正社員の問題であることが大きな違いだと指摘している。

 就活という競争を勝ち抜いてやっとたどり着いた正社員、そんな彼らを待っていたのは、正社員を篩(ふるい)にかけて選別する「ブラック企業」の手口だった。定員以上に採用し、企業にとって従順な社員を育成するという洗脳教育と、企業にとって「使えないやつ」をコストとみなし、人間としての人格を破壊してでも自己退職に追い込むというものだ。一流企業と言われる枠からはみ出した彼らは、企業の方針についていけないのは自分が悪いからだと思いこまされると言う。「自分は人より劣っている。」「会社の方針についていけない自分が悪い。」そう思いこませれば、ひたすら耐えるか辞めるしか選択肢は無くなってしまう。

 長時間労働は当たりまえ、パワハラ、自己退職に追い込むためのカウンセリング室まで用意されていて、人間としてなっていないのは幼少期に問題があると反省文を書かされる。数時間に及ぶ研修と言う名のハラスメントが毎日続き精神的にも不安定な状況に追い込んでいくのである。しかしこうした実態がなぜ表面化しなかったのか。それは自己都合退職に追い込むことによって社会的批判から逃れると言う手口をブラック企業がとっているからであるという。今年は自殺者が何年かぶりに3万人を切ったと言うが、20代から30代の若年層の自殺者が増えているのとも無関係でないように思えてきた。

 また著者は雇用問題と労働契約の問題が日本社会のなかで培われてきた労働運動の闘いと結びついていると分析している。企業側にとっては労働組合の闘いによる労働条件改善の要求に終身雇用という暗黙の了解で応えながら企業の人事等の命令権を維持してきたし、労働者側も譲歩してきたのではないかと言う。しかし、労働運動が弱くなる中で企業の命令権だけが強くなっていると現状を見ている。

 著者はこうしたブラック企業に対して若者を中心とした労働者が戦略的思考をもって対応をしなければならないし、ブラック企業が単に一企業の問題でなく日本を食いつぶす妖怪としてとらえ社会的問題として政府も取り上げるべきだと提言している。

 しかし、提言と戦略的思考ということにしては非常に弱いような気がする。

 第一に政府として、企業の業務命令権を制約する。労働市場政策としては非正規雇用規制が必要であるといい、戦略的思考とはブラック企業の証拠をつかみ、提訴や団体交渉に訴えるということである。

 また、社会的な戦略としてブラック企業は労使関係の崩壊の間隙をぬって現れたのであれば、労使関係の再生こそが新しいモデルになる、企業別組合の枠を超えた新しい労使関係を構築することが私たちの世代に求められていると結んでいる。

 年間数百件の相談を抱え、提訴や団体交渉を進めてきた著者ならではの提言であり尊重すべきだとは思うが、具体的な提言としては弱く感じる。

 しかし今日、ブラック企業化が公務員企業にまで及んでいること、それに向かって闘えなくなれば企業だけでなく日本が、人が壊されてしまうと言う事実はよく把握できた。私たちの職場でもパワハラ問題がよく告発される様になってきた。運動が弱くなれば経営者は強くなると言うのがバロメーターにならぬよう戦略的な対応を考え、組織運動として組合員と話し合いたい。




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