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世界の労働者のたたかい : 非暴力と多様性を基軸にした国際連帯――ポルト・アレグレで開催された第5回世界社会フォーラムに参加して
投稿者: rodo-info 投稿日時: 2005-5-1 12:30:00 (5437 ヒット)

非暴力と多様性を基軸にした国際連帯――ポルト・アレグレで開催された第5回世界社会フォーラムに参加して




村岡  到
「労働通信」2005年3月号の記事より


 1月26日から31日にブラジルのポルト・アレグレ(歓喜の港)で開催された第5回世界社会フォーラム(WSF5)に参加した。

 今年で5回目となるWSFは、各国政府が集まるスイスのダボスでの世界経済フォーラムに対抗する国際的イベントで、昨年はインドのムンバイで10万人を集め、今年は135ヵ国から15万5000人が参加した。

全文を読むには下記の<続き・・・>をクリックしてご覧下さい。


 WSF5について日本のマスコミではまったく取り上げられていないが、27日の「朝日新聞」に「『連帯税』で貧困解決を――ダボス会議で仏大統領提案」という小さなコラムが載っていた。これは、WSF5の主要な構成団体であるATTAC(市民を支援するために金融取引に課税を求めるアソシエーション)が主張するトービン税(投機的な国際金融取引への課税)を取り入れたものであろう。このように、WSFは明らかに現実の国際政治・経済に影響を与えているのである。

 公的な国際機関としては国連だけが代表を送るにとどまったが、ダボス会議にも出席したブラジルのルラ大統領(労働者党)が二七日、ベネズエラのチャベス大統領が30日に参加、それぞれ1万余の聴衆の熱狂的な声援を受けて演説した。ルラ大統領には批判のブーイングもかなり加えられたが、「貧困撲滅問題を解決するため、この問題を再び今年9月の国連総会に提出する」と表明した(チャベス大統領の演説については後述)。

 真夏のブラジルは連日30度以上の炎天下で、美しい河口に沿って徒歩だと1時間以上はかかる広大な会場に大小200余のテントが張られ、総計2500の企画が展開された。冷房されたテントもある。参加NGOは2000を越えた。登録料はブラジル人13レアル、外国人30レアル(一レアルは50円)。登録といっても、WSF5のロゴが印刷された大きな布袋と首からかけるカード(氏名を書く)を配布するだけで、それがなくてもどの企画にも参加できるから、登録しない人も多いに違いない。ブラジル人が7割位という人もいた。ジャーナリストの登録も7000人近いという。

 日本からの参加者は、JR総連25人、AALA(日本アジアアフリカ連帯委員会)12人、全労連8人、ピースボート6人、9条連5人、ATTACJapan、全労協、レーバーネット、など総計70人くらいか。韓国からはこの二倍は参加したようだ。

多様で巨大な企画に驚く


 まず、このWSF5はポルト・アレグレ市全体が支えているように思えた。騎馬警官が常時配備されて交通整理し、バス道路沿いにWSF5の旗が正規に掲げられ、バスの中にも案内が掲示され、WSF5行きの表示のあるバスも走っている。前記のテントの設営、清掃だけ考えても膨大な経費が掛かっているだろう。仮設の便所も何カ所かにズラッと並んでいる。インターネットの配信設備も完備している。公園には個人用の小さなテントが張られ3万5000人の青年が野宿した。シャワーが野外に設営されている。とても登録費でおぎなえるものではない。PT(労働者党)の市長が落選したので、前回よりは非協力とも言われているが、恐らく万単位の労働者が設営にかかわっていたであろうし、行政の協力なしにはとても実現するものではない。日本にも革新自治体の時代があったが、これだけのイベントに協力する自治体がどこにあるだろうか。

 参加者の膨大さにも驚く。しかも連日である。とても日本では想像もつかない規模である。パンフレットにドイツ語、英語、ポルトガル語で印刷されている主要な企画だけでも七六もある。WSF5発行の新聞もほぼ毎日発行され、企画が案内されている。ダンスの渦も、デモもある。道路には露店が延々と並んで、食べ物やお土産を売っている。夏祭りの様相である。かれらにとってもまたとない稼ぎ時である。


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テントで設営された会場


 政治的新聞や写真、書籍も少なくない。一番人気は何と言ってもゲバラである。バッグ、Tシャツ、バッジ、それも数種類、みなゲバラがこっちを向いている。ホーチミン、マルクス、レーニン、トロツキーもある。ローザ・ルクセンブルクの写真は見なかったが、企画のなかにはテーマにしていたところもあった。

 ブラジル共産党(PCB)は12ある政党のなかで11位だという(12位はエコロジストの党)が、大きな赤旗で各所で宣伝していた。かれらの機関紙は「新しい社会主義世界は可能だ」と大書している。第一党のPTが目立っていた。デモも展開していたし、書籍販売なども活発だった。

 会場の雰囲気は、青年も女性も多く、肌の色も顔つきもさまざまで、西部劇でしか見たことのない、鼻に棒を刺したインディオもいた。カラフルな民族衣装のデモもあった。快晴でもあり、熱気にあふれていた。女性は豊かな胸をはばかることなく露出しているし、入れ墨が多いことにも文化の違いを感じた。野外のシャワー場では男女が混じって海水浴みたいに女はビキニ姿で身体を洗っていた。

 日本からの参加者は、前記のように70人くらいだろうが、研究者の参加が特に少ないのは、日本のかれらが思想的に混迷して活力を失っていることの現われと言える。帰国後に新聞をめくってみても報道すらない。ただ、共産党の「赤旗」だけが現地報告をいちおう載せていた。

 企画は無数なので、取り上げられないテーマはないだろう。グローバリズム、反戦、環境、労働運動、社会主義、マスコミ、宗教、女性、児童、何でもありである。
 大きな特徴は、主催者による企画は一つもなく、すべてが自主企画であることだ。反グローバリズムの立場から資本主義批判やイラク反戦が主要テーマになったのは当然であるが、文化の多様性問題も重視された。500回あまりの舞踊や、舞台劇、コンサート、写真展示会、それに工芸品展示会などの活動が展開され、「異なる民族の異なる文化があるからこそ、豊富多彩で絢爛たる世界になる」と主張された。

 来年以降については、来年は世界の各大陸ごとに開催し、07年にアフリカで開催すると、国際評議会で決まった(最終決定は4月の国際評議会で)。その後ベネズエラのチャベス大統領が来年はベネズエラで開催したいと表明したので、ラテンアメリカはベネズエラで開催されるようだ。最終日に開催された「世界社会運動会議」でイラク戦争反対などの共同行動をよびかける文書が採択された。30日に開かれた世界反戦会議では3・19〜20の国際行動が合意され、世界社会運動会議でも確認された。

 国連、IMF、WTOなどの国際機関の民主化や貧困撲滅に向けた国際的運動も提起された。

熱狂的に迎えられたチャベス大統領


 第5日目の30日に1万人収容の円形スタジアムでベネズエラのチャベス大統領の演説会が開かれた。会場外にもあふれ、立錐の余地もなかった(司会演壇の後ろだけは警備のためか空席)。

 その日、会場近くの河ぞいの道路を歩いていたら、ゲバラの旗を持った男2人女1人の青年に出会い、写真を撮らせてくれと頼んだらOKしてくれて、別れようとしたら、「自分たちはこれからチャベスの集会にいくのだが、あなたも行かないか?」と誘われ、渡りに船と同行した。3時間近く公園で列をなして待たされたが、私も熱狂の渦に巻き込まれた。彼らはアルゼンチンの学生で1人は法学部で、「オーストリア社会主義の法学者グスタフ・ラートブルフを知っているか」と聞いたら、知っていた。グラムシに興味があるとも言っていた。ゲバラの故郷で生まれたことを強く誇りにしていた。

 集会の司会者には、STOP WARと大きな文字のTシャツ、ゲバラのTシャツを着ていた人もいた。最初の2時間は音楽で、有名な歌手やギタリストが演奏。ガンタナモーレというキューバ革命の出発点であったガンタナモ基地襲撃にちなんだ曲、黄金のコンドル、など次々に会場全体を揺るがせて、一体感が高まる。私の前に座っていたブラジル共産党の年配の女性は大きな赤旗を両手に拡げて興奮しながら足踏みしたり絶叫していた。

 すり鉢状の中央の演壇前で、大きな白い☆型に、闘争、組織、参加、統合、団結、民主政、社会主義、とそれぞれの単語が書かれた七つの星が、舞踏とともに波打っていた。そこに、かのブッシュ大統領が短い演説で40回も発した「自由」がないことが、私には大いに意味があるように思えた。

 チャベス大統領は、真っ赤な長袖のシャツで大声援のなかで登場し、火を吹くアジテーションを一時間以上展開! 大男で、太い指で鼻の下や目のまわり、額を何度ぬぐいながら、大きな身振りで、反帝国主義・社会主義を強調し、アメリカ帝国主義への批判を叫んだ。その度に会場は割れるような拍手と大声援。日本でもサッカー会場で「オーレオレオレオレーオ」と声援が飛ぶが、それと同じに「オーレオレオレオレーオ チャベス」と大合唱となり、演説が三度も中断した。チャベスは、ゲバラ、シモン・ボリーバル、ホセ・マルティの名前を繰り返し、トロツキーにも毛沢東にも言及した。アルゼンチンの法学生がスペイン語ができ、チャベスがスペイン語だったので、彼がところどころ英訳してくれた。チャベスはゲバラを讃える歌をうたい、同時に時代状況の違いを指摘して、今や武器ではなく、巨万の民衆に支持されることが必要だと説いた。一国の大統領が、周辺国の民衆にこれほど熱狂的に受け入れられ支持されていることは何と素晴らしいことか。チャベスはベネズエラ一国を越えて、ラテンアメリカ全体の英雄である。

 チャベス登場まえには、音楽の合間に司会者などが説明。彼らもまた「ブラジル、ベネズエラ、南アメリカ、社会主義」と調子をつけて大合唱を誘う。国名の部分には他の国名が入る場合もある。ここでは、<社会主義>は疑問無き合い言葉となっている。

ボランティア宿舎を提供する教師


 最後に、私の宿泊に関連して、WSFにかかわるブラジル人の一端を紹介したい。
 私の宿泊はホテルが満杯なので、民間のボランティアによる私宅の提供に頼った。運良く会場からバス一四分の住宅地で、女性の教師が3LDKの部屋を鍵ごと渡してくれていた。彼女は母親の家に行き、私は1人でそこで6泊した。8階建て6棟が金網で囲われ、ガードマンが常駐している高級住宅。見晴らしも良く、設備も整っている。こんな高級のマンションの主がフォーラムなどという社会的運動に協力するのか、と思いながら、彼女と不器用に会話した。

 彼女は、朝は7時30分から中学生を、昼は小学生を、夜は社会人を相手に農業を教えている。各4時間で月曜から金曜まで毎日12時間も働いている(有給の夏休みが二カ月)。それで月に1500レアル。教育の社会的な評価が低いから低賃金なのだと言っていた。そのマンションは一六年のローンで月に850レアル、他に管理維持費が約200レアル。後11年払えば自分のものになるという。彼女の車はおんぼろのフォルクスワーゲンで、運転席の隣のドアは半分壊れていて、1回では閉まらない。力まかせに押さなくてはならず、運転の最中も絶えず気にしていた。二度目に乗車したさいは、そのドアは使わなかった。彼女は対抗する新車をみると、あれはホンダだとか言って、欲しそうだったが簡単に手に入るものではない(セダンは約4万レアルもするからだ)。

 彼女は、PT(労働者党)の党員で、手のひらを越える大きさの、中央にPTと書かれたビニール製の真っ赤な星を見せてくれた(街中では赤いPTバッジやPCBバッジを胸につけている青年も散見できる)。彼女は教師の労働組合にも参加しているが、組合費はわずかに月に10レアルで活発ではないようだ。彼女は第1回のWSFにも参加していて、今回も初日に私の登録を案内してくれて、自分も登録した。

筆者


 第1回の時はポルト・アレグレ市の市長がPTだったので、今回よりもブラジルとしては盛り上がっていたという。

 彼女は、2日目にはパンや野菜を買ってきてくれ、5日目には家族(兄姉など)との昼食に呼んでくれた。最終日には飛行場まで車で送って来て出国カウンターで別れた。

 まったく見ず知らずの外国人に、わずかの宿泊費で鍵まで渡して、住居を提供する。こんなことは日本で考えることができるであろうか。私自身について、できるかと自問すれば、余程信頼する友人でなければ無理だ。他にもそういう人は居るのかと聞いたら、たくさん居るということだった。ブラジル人の開放的な気質なのであろうか。WSFが極一部の狭い世界の出来事ではなく、広く根づいている証しでもあろう。彼女によると同じマンションの別棟からもWSF参加者が二人いるということだった。知らない人だというから、どうやってそのことを知ったのかは分からないが、わずか200家族くらいのマンション群に少なくとも3人の参加者がいたことになる。日本なら数千人の団地からでも滅多に同じ集会に参加する者はいないだろう。

 私は、この女性教師に出会うことはもうないであろうが、彼女の親切を忘れることはないであろう。

 ともかく、片道37時間もかけての地球の丁度裏側への旅は、私にとって、きわめて大きな収穫となった。また、いくつも考えるべき課題を教えられた。そして、いくつもの新しい出会いがあった。

 電子機器の発達の点でも隔世の感が深いが、1920年代や30年代のコミンテルンの時代にはとてもこのような世界的イベントは考えられなかったであろう。今や、中央集権の時代ではなく、非暴力と多様性を基軸にした開かれた統一・共同行動が求められる時代になったのである。そこに歴史の大きな前進がある。

<注> 韓国からの参加者から、韓国の民主労働党とブラジルの労働党とは定期的な協議の場を数年前からもっていて、その人もWSF5の閉会後にサンパウロで同様の会議に出席すると教えられた。

村岡 到(むらおか いたる)
オルタ・フォーラムQ事務局長
『カオスとロゴス』編集長

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