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“派遣切り”の責任論 投稿者: えんどう たかし 投稿日:2009/01/11(Sun) 23:06 No.1422  
 以下は時事通信2009年1月11日(日)から引用

 与野党幹部は11日,テレビ朝日の番組に出演し,大量解雇が社会問題化している派遣労働者の待遇改善が必要との認識で一致した.国会で継続審議中の日雇い派遣を原則禁止する労働者派遣法改正案については,修正協議が本格化する見通し.野党は製造業での派遣労働の禁止を検討しているが,与党はこれに否定的で,調整は難航しそうだ.

 公明党の北側一雄幹事長は[派遣元,派遣先の両方が(労働者の)派遣で利益を得ている.企業としてちゃんと責任を持ってもらうよう法制化すべきだ]と述べ,派遣労働者と直接契約を結んでいない派遣先企業も雇用確保や待遇面などで責任を負うべきだと主張した.

 その具体策としては,派遣先企業が契約を中途解除した場合,再就職あっせんを求める厚生労働省指針を法律に格上げするとともに,解除後の一時的な住居確保などを挙げた.

 自民党の細田博之幹事長も,与党案をまとめた上で[調整すべきだ]と応じ,記者団には[なるべく早く提案したい]と語った.

 これに対し,民主党の鳩山由紀夫幹事長は同番組で[派遣先と派遣元の連帯責任をきちんとうたうことが大事だ]と述べ,国民新党の亀井久興幹事長も賛意を示した.共産党の市田忠義書記局長は[派遣先の責任をきちんと明確にして,派遣期間を超えて引き続き行う者は正社員にすべきだ]との考えを強調した. 

 引用終わり.

 政府・厚労省(舛添大臣)や自民党の派遣切りの責任問題についての認識は,派遣労働の法的関係について,雇用関係を軸に,派遣元の責任であるとしている. 雇用関係の終了は中途解約であっても,あくまで“派遣元と労働者との問題”という整理で逃げ切る方針である.
 一方,共産党の主張(後に民主党をはじめとする野党各党の主張がこれに足並みをそろえることとなった)などは,大雑把に言って派遣先に利益があるのであるから,派遣先が責任を持つべきであるという主張である(「利益説」と言えよう).

 言うまでもなく我が国の労働関係は,民法の規定を特別法である幾つかの労働関係法により修正しているのである. ところが政府や与党の主張は,労働関係に立つべき契約を民法の“雇用”により整理しようとしている点で誤りである.

 そもそも労働者派遣というのは,労働関係というものを「使用関係(=指揮監督)」と「雇用関係」に分け,個別の労働者について,前者を派遣先との関係,後者を派遣元との関係によって成り立たせようという制度である.
 労働関係というのは使用関係と雇用関係の総和を言うのであるから,これらが別々の法人が担っているからといって,雇い止め(失業)という行為・結果を個別化して論じることは誤りである.
 使用関係と雇用関係は当該労働者の労働という行為においては連帯しているのである. とくに派遣元は顧客である派遣先が少ないか,または一つの派遣先に多くの売り上げを依存している場合には,派遣切りが労働契約の終結を意味する蓋然性が高い. 現行派遣法もこの点,専ら派遣を禁止する理由となっている.

 「派遣切り」=「労働契約の終了」という結果について,派遣先と派遣元との因果関係が相当にある場合には,当然派遣先にも責任を負わせるべきなのである.
 また3年という派遣期間を超えていた場合や,同一労働に繰り返し使用されていた場合には,労働者と派遣先の「労働関係の暗示的意思の合致」もあると考えられる. この場合には,派遣元と労働者の雇用関係や,派遣元と派遣先との派遣契約を否定ないし弱める要素になると考えられる.

 先百歩譲って「雇用関係」を重視して派遣先に責任を負わせ,さらに使用関係については派遣先であって,使用関係の終了が派遣先と派遣元との派遣契約の終了という企業間の私的自治の問題であるとしよう.
 それでも,残る「使用関係」については,労働者と派遣先との関係であるとされるのだから,労働基準法や労働安全衛生法,労働協約,その他労働関係上労使の自治の問題については労使で自治権を有することとなる. 「労使」とは「労働者」と「使用者(派遣先)」のことである. 労働環境について労働者は使用者と交渉することが出来るのであり,この関係の内,労働基準法について言えば「第1条 労働条件は,労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない. 」とあり,派遣法により労働基準法が修正されているということは無い.
 何より“住居”という労働者や家族にとって生活と経済基盤を派遣先が管轄しているのであるから,派遣先は制度管轄者として「労働者が人たるに値する生活を営むもの」たらしめる作為義務があるというべきである. 解雇・雇い止めと同時に生活の場を失う労働者が出現することにつき派遣元の責任を認めるとするならば,派遣先もこの制度管轄者(ないし行為の支配者)として責任を負うべきである.

 厚労省(舛添大臣)の見解は,それこそ“稚拙”であろう.


新春『憲法』考・・・“勤労権のプログラム” 投稿者: えんどう たかし 投稿日:2009/01/08(Thu) 20:25 No.1421  
 今年も(テレ朝)「朝まで討論」を見た。

 非正規雇用労働者が置かれている状況についての、枝野・穀田・辻元各氏の現状認識は、概ね正しいと思う。
 緊急対策については、枝野氏も言われていた通り、一先ず共産党の言うような政策が必要だろう。
 企業の社会的責任論や、企業倫理論については、社会において大いに議論されるべき問題ではあるが、政策についての議論(規制制度・ルールの創設)とは別次元であるべきだ。これについても、枝野・穀田・辻元・労組関係各氏などが言われていた通りである。

 ところで、お金が無くなり住む家もなくなった労働者(求職者を含む)が、無銭飲食を行い、警察官に自首したという事件があったが、これは、当然ながら犯罪構成要件に該当する行為だが、違法性(違法性はあるだろう)・責任のところで無罪(ないし微罪処分か間違って送検されても起訴猶予)だと思う。
 振り返ってその背景を見ると、今回の派遣切り・期間社員の中途解雇などの中には、少なくとも派遣法違反(期間内違法解雇・直接雇用申し込み義務違反等)や労働契約法違反などがいくつか見受けられる。

 これらの中には、刑事罰を含むような犯罪と言える行為も幾つか存在すると考えられよう。なお、労働関係法違反は故意犯とされる。
 しかしながら、これら労働関係法違反について、司法警察員が捜査して送検したというような話題は皆無である(まあ、偽装請負についてはここ数年で幾つかあるが・・・)。
 このような法益侵害行為があり、構成要件に該当し、違法な行為であっても、これらの行為を野放しにしたり取り逃がしていること自体、現在の刑事行政における他犯罪と労働犯罪とを比べると、取締りから捜査・立件まで、警察比例原則が殆ど機能しておらず、本来刑事罰の威嚇により保護されるべき法益が、保護されていないのである。
 これを放置しての今後の派遣法の改正は、その効力の真偽が疑われる。

 そこで私は、派遣法を改正するに当たっては、労働行政に労働基準行政以外の部門(特に、職安・派遣・需給調整関係への)司法警察員の配置をさせるよう、また、検察における特別犯の捜査体制の整備が必要であると考える。勿論、労働基準行政における司法警察員の運用体制の充実もこれまでより一層必要である。

 ここまで来た現状を見るに、労働者各人に向けられた侵害行為だけでなく一般社会に対しても、労働犯罪は当に“犯罪”であって、労働関係に立つ契約は、「私法関係が修正されている」という性質を周知徹底させる必要性を強く感じざるを得ない。
 一部の政治家や経済団体首脳がことさらに言及するような“企業の社会的責任論”や“企業倫理”の議論は、制度議論のなかではあまり意味を成さないように思える。勿論、倫理が法というレベル(民主的合意という手続きを経たならば制度として機能するが)に達すれば意味がある。しかし、今は「基準」の議論と、これを担保する(法益侵害に対して攻撃する)「罪刑を法定すること」と、これの運用についてきちんと「比例させる」という議論が必要なのである。

 一昨年労働契約法(平成19年法律第128号)が、公布された。
 制定経緯としては、従来、労働者にとって最も身近な紛争相談窓口は、労働組合であったが、近年、労働組合の組織率は低下し、非正規雇用者や小規模企業の従業員など、労働組合加入率の低い層の、公的窓口への紛争相談が目立って増加してい田ということとも関係する。また、労働者の創造的・専門的能力を発揮できる自律的な働き方に対応した労働時間法制の見直しへの要求が指摘されており、そのためには労使当事者が実質的に対等な立場で自主的に労働条件を決定できることが必要であるという指摘もあったためである。
 そこで、既存の労働法規に規定されていない労働条件を定める必要性、判例での判断基準は蓄積されているものの、まだ定着しているとはいえない労働条件に関するルールを明文で定めたのが、この「労働契約法」である。

 前述の通り、労働契約法は、概ね定着している判例の判断基準を明文化したに留まるものである。施行されたからといって、直ちに大きな影響を与えることはないと思われたが、運用面では昨今の現状を見るに、予想が当たった。
 しかしながら変化もあった。労働契約法の制定により、労働者への周知、即ち「使用者の人事権行使に限界があること、労働条件を一方的に変更することが原則として許されないこと」等が周知されることになったのである。労働者各人の感覚・認識と、対応(行動)がそれ以前と異なってきたのである。
 
 権利は行使できること、行使して価値がある、ということを労働者が知ったというのが労働契約法の最大の効果であった。

 職業安定法・労働者派遣法・労働基準法・安全衛生法等には、刑罰規定までがある。これを周知させることと、これにより威嚇されている者が使用者(派遣先)・雇用主(派遣元ないし供給元)であるということを我々は今一度振り返るべきである。

 “コモンロー”ならぬ プログラム 、即ち「法律によって護られるべき権利」だからである。


新卒者の内定取り消し・・・ 投稿者: えんどう たかし 投稿日:2008/12/10(Wed) 23:39 No.1414  
 新卒者の内定取り消しが相次いでいるが、この内定の取り消しというのは解雇の法理と同様、合理的な理由が無ければならないとされる(内定を受けこれに合意した段階で、その後の就職活動を停止するのであるから、この時点で労働契約の成立とみるべきだからだ)。
 また、新卒者は、労働市場法上でも最優先に就業の機会が与えられる特別な法律上の利益を有するところである。
 その理由は、新卒者は毎年学校から社会に多数送り出されることから、就業先を確保しなければ毎年大量の失業者が輩出されて、失業者が毎年累積することになり、中途失業者・離職者との間で職の奪い合いが発生し、ひいては社会不安をもたらす要因ともなりうる。したがって、新卒者の就業先を確保することは、職を求める新卒者の利益のみならず、社会全体の利益にもなるからである。
 また、社会人としての出発点であることから、これらの新卒者を社会が職業人として温かく迎えることは社会全体の利益・幸福とも合致する(それが福祉国家の理念であったはずだ)。

 内定の取り消しを行った企業は、配当金の減額はもとより、資産の売却、役員人事の合理化(経営責任の明確化)や役員報酬のカット、既存社員の減給やボーナスカット、希望退職等、十分なリストラを行ったという実績を示すべきである。
 それでも、その分の社会的信用失墜を当該企業が背負うこととなろう。何せ、“新卒者を労働市場から自分の池に囲い込んでから捨てる”という不公正な行為は、職を求める新卒者の個人法益に反すだけでなく、明らかに社会にとっても不利益なのである。
 


Re: 新卒者の内定取り消し・・・ 投稿者: 管理人ラム 投稿日:2008/12/13(Sat) 10:14 No.1415  

一応、「内定」をもらったら、もう就職活動はしないわけですから、その会社から「内定」をもらったあとに、もっといいチャンスがあっても、そちらは蹴っている可能性もわるわけですね。そこまでしていたのに、「内定」を取り消されたら大変なことです。ましてや、今頃の時期になってから「内定」を取り消され、また、一からシューカツのやり直しではものすごく不利な状態に置かれますね。


Re[2]: 新卒者の内定取り消し・・・ 投稿者: えんどう たかし 投稿日:2008/12/14(Sun) 21:24 No.1416  

 >その会社から「内定」をもらったあとに、もっといいチャンスがあっても、そちらは蹴っている可能性もわるわけですね。<

 内定をもらうということについては、2段階に考えられます。
 つまり、ヾ覿搬Δ該当する学生に採用意思を伝え、△修慮紂該当する個別の学生が卒業後に就職(労働契約=一般には採用通知後にそれを受け取った労働者側(あるいは学生側)が契約を承諾)をするという意思を伝える段階です。
 「◆廚涼奮で、法律上「双方の意思の合致」があったとみなされるわけです。つまり、この段階で労働契約が締結されたとみる訳です。これを最近は『始期付解約権留保付労働契約』と呼んでいるようです。
 >蹴っている可能性<・・というより、この場合内定の承諾ですから、他のチャンスをを蹴っているのです。
 平たく言えば、求職する学生側は「卒業後は御社で働きます」、求人側の企業は「卒業後は貴君を我が社で雇用します」という契約なんですね。これは誰が見ても完全に契約でしょう。

 さらに、学生における新卒と、企業における初年度定期の長期採用は、双方の求職・求人活動の時期が一般に同一時期に行われ、且つ、上記内定(上記の通り「労働契約」の一種)行為も同様の時期であることから、内定をすることにより双方の労働市場が閉じる(お互いに窓口を閉じる)わけですから、これを一方が破棄すれば、契約違反ということになると考えられます。

 なお、ここで注意が必要なのは、私法上(民法)の契約では、いづれかが契約の解除を申し入れれば契約を解除することが出来るのですが、しかし、ここで考慮されなければならないのは、解約権留保(採用内定取消事由に基づく解約権の留保)が付いていると言う事です。これは「勤務開始時期を明示し、企業にそれを取り消す権利を保留させる労働契約という意味ですが、しかしこの場合、求人側が一方的に解約できるというものではなく、採用内定取消事由というものに求人した側も拘束されるということです。「解約」、すなわち“内定の取消”は、一般に言う『解雇』と同程度のものであると解されています(内定の取り消しは、「採用内定取消事由」に該当する場合のみとされます)。下記最高裁判例ご参照ください。
http://www.jil.go.jp/kikaku-qa/hanrei/data/108.htm

 さらに、私見によれば、これを企業側が一方的に破棄する“内定の取消”は、労働市場(職業安定法の趣旨)から言っても不当であると考えます。
 労働契約を結ぶ以前では、労働者は一身不可分且つ唯一の「労働力商品(つまり一人一つしか持っていないから一度しか売ることが出来ない“商品”)」を、市場で自由に一回だけ売ることが出来ますが、買い手(求人側)が一度これを買い付けるとその商品は市場から消えるわけです。
 しかし、この取引きを解約した場合にはどうなるでしょうか?。その商品が市場に戻り、再度自由に売ることが出来るでしょうか?。
 そうならないのです。つまり労働市場自体が閉じているのです。
 この場合、中途採用などの市場と異なり、新卒採用は双方が一時期且つ大量に採用する特殊な性質を持つのです。
 
 夏季限定の商品(例えば、スイカや桃)を、1軒の農家が生産するすべての量を発注し、既にトラックで自社に向かわせておいてから、これをお盆直前にキャンセルするのと同じなのです。
 これは明らかに不法行為で、市場を独占(他の競争相手を排除)しておいてから、解約を強要する野蛮な行為でしょうね。

 なお、本エントリについては、当方のブログ(下記URL)にて若干検討しておりますので、ぜひご覧ください。ご意見・コメントもお待ちしております・・・。
 http://blog.goo.ne.jp/gooendou_1958/e/93d260f0a10778cae3789523c46ec5de


資本主義の終わりの始まり? 投稿者: しまだ 投稿日:2008/12/04(Thu) 22:17 No.1344  
 「100年に一度の不況」の原因(?)
クリントン政権のブレーンの一人でもあったらしい、カリフォルニア州立大学の経済学教授、ブラッドフォード・ディロングによると、世界の流動的余剰資金(資本)の合計は160兆ドル(1京6000兆円)に達しているという。
 すると、世界各国のGDPの合計は5,400兆円なのでその3倍もあることになる。ちなみに、日本の2007年のGDPは560兆円、アメリカはその3倍ぐらい。
 < http://delong.typepad.com/sdj/2007/08/fear-of-finance.html > (クリックでは開かない? 手入力OK)

 又は、< http://delong.typepad.com/ > をクリック ⇒ archives ⇒ more ⇒ 06.august.2007 ⇒ Fear of Finance

 世界中のGDPを合計した額の3倍もある余剰資金、学者はその大きさが過剰流動性の状態だという。
 ということは、この資本主義世界は、もはや投資するものもないほど「カネ余り」に陥っているということだろう。
 だから、石油やトウモロコシや稀少金属、果ては、焦げ付きそうな住宅ローン、その保険証券などに投資(投機)するのも当然の成り行きかと思う。
 これは、資本主義世界の終わりの始まりのように思える。
なぜなら、人それぞれが豊かになるということより社会経済の発展こそ重要だとする市場原理の「使命」も終わりに近づいたように思えるからである。


Re: 資本主義の終わりの始まり? 投稿者: 管理人ラム 投稿日:2008/12/05(Fri) 21:24 No.1412  

しまださん、ご無沙汰しております。

> なぜなら、人それぞれが豊かになるということより社会経済の発展こそ重要だとする市場原理の「使命」も終わりに近づいたように思えるからである。

経済が発展すれば、GDPが成長すれば、「豊か」になるという価値観で来ましたが、それが豊かなのか、幸せなのか、わからなくなってきています。

ちょっと前まで実感のない「好景気」が続きましたが、一定のGDPの成長があっても、大企業だけが儲けて、働くものはどんどん切り捨て方の非正規雇用になるか、正社員であってもとてつもない長時間労働と成果主義のプレッシャーにさいなまれる。それが、一夜のうちに「大恐慌」。なのに、流動性のカネが有り余っている。

そういうなかで、物事の価値観ががらっとかわり、従来の枠組みがどっと変わりかねない情勢ですね。オバマの勝利も、そういう流れの中で起こったことでしょう。


二重派遣の罪数はどうなるのか? 投稿者: えんどう たかし 投稿日:2008/09/18(Thu) 01:14 No.530  
 ところで、労働局が言うように派遣元と労働者に雇用関係を認めた上で、2重派遣を職業安定法44条違反であるとした場合、罪数はどうなるのであろう?

 先ず、1罪と複数罪の区分という問題がある。これいついては、構成要件充足の数を基準とする「構成要件標準」説(通説)を採用するとして、入り口論では2罪成立の可能性を残すと言う判断だろう。
 そうすると続いて“法条競合”という問題があるように思われる。
 1.特別関係
 数個の構成要件が一般法と特別法の関係に当たるもの(例としては、横領罪と業務上横領罪が挙げられる。)。特別法に当たる構成要件に該当する場合には一般法に当たる構成要件には該当しない。
 2.補充関係
 数個の構成要件が補充・被補充関係に当たるもの(例としては、未遂罪と既遂罪が挙げられる。)。被補充的な構成要件に該当する場合、補充的な構成要件には該当しない。
 3.択一関係
 1つの行為に適用可能な構成要件が複数存在するが、それらが両立しないもの(例えば横領罪と背任罪)。そのうちの1つの構成要件のみに該当する。

 私は、雇用関係が認められる場合、多重派遣でも派遣法違反であると考えているから「1.」の特別関係と理解している。が、労働局は職安法違反とするのであるから、最初の1次派遣が派遣法違反、次の2次派遣が職安法違反であろうか?・・・

 労働局による告発を受けた検察官は、果たしてどのように処理するのであろうか、聞いてみたいところだ。

 派遣法と職安法・・・必要的共犯について

 「豊田兼彦」氏は、『必要的共犯についての一考察(2) 』において「二/特殊問題 −複数の法益を保護する犯罪への関与」の節で、以下のように指摘している。<以下はその引用>

  (1)「構成要件該当結果の惹起」に共犯の処罰根拠を求めるならば、「可罰的な共犯は、正犯行為の不法を構成する利益の『すべて』が共犯者に対しても保護されている場合にのみ存在する(4)」と解するのが、一貫した解釈であろう。一部の法益に関してのみ被害者である関与者も、完全な被害者と同様に、他の法規範に違反しないかぎり、共犯として処罰されることはない。

 (2)複数の法益を「択一的」に保護する犯罪については、被害者的な地位にある関与者も共犯として可罰的と解される余地がある。

 さらに、『第三節/特定の者を構成要件から除外している犯罪−犯人蔵匿罪・証拠隠滅罪』の節で、以下のように整理している。

 (1)判例は、「防禦権の濫用」などを根拠に、これまで一貫して犯人に教唆犯の成立をみとめてきた。
 犯人蔵匿・隠避罪について「単に犯人が逃げ隠れするのと、他人を身代わり犯人に仕立てるのとでは、刑事司法作用を害する程度にかなりの差がある。それ故、自ら行えば不可罰の行為を教唆することが可罰的となり得るのである(7)」とし、証拠隠滅罪について「『被疑者・被告人として政策的に保護すべき範囲』を超えた行為に出た場合には、処罰されることになるのである(8)」とされているのが注目される。<中略>

 しかし、これらの見解に対しては、犯人は正犯として期待可能性がない以上、共犯としてもやはり期待可能性はない。したがって、犯人は教唆犯としても不可罰と解すべきである、とする見解も有力である。<中略> 大谷教授も、「自己が他人を教唆して犯人蔵匿・証拠隠滅罪を犯させるのは、みずからを蔵匿させるについて他人を利用するにほかならず、また、自己の刑事事件につき他人を教唆して証拠隠滅を犯させるのは、自己の証拠隠滅行為について他人を利用するに他ならないから、犯人・逃走者みずからが犯人蔵匿・証拠隠滅を行った場合と同一の根拠で、この場合の共犯を不可罰とするのが妥当である。通説は、犯人・逃走者みずからが犯人蔵匿・証拠隠滅を行う場合と他人にこれを行わせる場合とでは情状が異なるとするが、期待可能性が乏しいという点では同じであると解すべきである」と主張されている。<中略>

 「惹起説」(「共犯者からみた構成要件該当結果の惹起」に共犯の処罰根拠を求める見解)からは、どのように解決されるのであろうか。
 (2)「惹起説」からの帰結    
 「惹起説」とは、共犯固有の不法、つまり「共犯者からみた構成要件該当結果の惹起」を共犯処罰の必要条件とする見解である。共犯の処罰根拠を「共犯自身の攻撃からも保護されている法益の侵害」に求める見解が「惹起説」である、といってもよい。このような見解に立つならば、犯人による自己蔵匿・証拠隠滅の教唆は不可罰となる。これが「惹起説」からの帰結である。 
 もっとも、このような説明の仕方に対しては、「刑事訴追および刑の執行という法益はやはり犯人に対しても保護されているのではないか」との疑問が、ヴォルターとゾヴァダから提起されている。たしかに、法益を「司法作用一般」ととらえるのが正しい理解であるとすれば、彼らのいうとおりかもしれない。しかし、ここで問題となる法益は、彼らが理解するような「司法作用一般」ではなく、あくまで「犯人蔵匿・証拠隠滅罪によって保護されている司法作用」である。そして、犯人蔵匿・証拠隠滅罪の構成要件から犯人が除外されている以上、この法益は犯人の攻撃からは保護されていないと解すべきではなかろうか。<以上引用・・立命館法学 1999年2号(264号)より> http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/law/lex/99-2/Toyota.htm  <長いので以下省略。>・・・

 上記指摘は非常に重要だと思う。職安法と派遣法について、2つの法律に規定される条文の関係が、特別関係か?、それとも択一関係か?を検討する際に考慮されるべきだろう。

 つまり、職安法で労働者派遣が除外されていることをもって単純に“択一関係”だとしてよいとするのには疑問があり、仮に択一関係であっても、共犯者についての取り扱いは必ずしも単純ではないと言うことだろう。

 派遣元(供給元)と派遣先(供給先)。昨今、世間で騒がれている偽装請負は、どのように処断されるべきなのだろう。そして、派遣法改正議論の中で、これまでの違反ををどのように整理すべきであろう。


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