ドコモショップ労働者 高橋エリ子
『労働通信』2000年5月号
NTTドコモの携帯電話をあつかっているドコモショップでパートではたらいています。
ドコモはNTTグループのなかでは「急成長」の分野といわれ、通話だけでなく情報通信サービスの機能をもつiモードはこの一年間で加入者が560万人をこえました。しかし利用者の料金滞納はばく大に増えているし、労働・雇用構造は何重もの下請け構造になっています。
わたしたちの業務は、携帯電話やPHSの新規販売や機種の変更はもちろんですが、一般代理店ではできない解約や料金収納、故障受付などの各種顧客サービスを直接窓口でうけつけ、端末コンピューターに顧客情報を入力し、携帯電話の番号を入れたり消したりしながら、お客さんサービスをする仕事です。
支店と支店直轄の代理店であるドコモショップだけが、料金支払いのときの請求書が再発行できるために、毎月はじめ、通話停止日(携帯電話の料金を3カ月滞納した人の電波を止める日)には、店のシャッターをあけたとたん、支払いにかけこんでくるお客さんがつぎつぎにやってきて、この日は椅子にすわるひまもありません。
ドコモは全国で九ブロックに分社されていて、大都市圏をのぞくと支店は、各県に一つです。NTTグループ全体が支店の統廃合や窓口業務を大幅にへらしてリストラ「合理化」をすすめているのにともない、こうした窓口業務のおおくが人件費の安い派遣スタッフと代理店雇いの社員やパートにまわされてきています。窓口で働いているのはほとんどが20代から30代前半までのわかい女性です。
仕事はおなじですが、わたしたちはショップごとに雇われているので、労働条件はばらばらです。ドコモ本社や支店は土日祝日は休みで営業時間はだいたい9時から5時半ですが、ショップは年中無休で夜も営業が最近ふえています。私の職場でも年中無休で夜も営業のため、パートは早番と遅番にわかれて出勤し、通常の時間帯が時給900円、夜と土日が1000円です。この地域では「時給が高い」ので、離婚して子どもをかかえた人や独身者がおおく、夫の扶養控除の枠内ではたらきたいという人はほとんどいません。
ここではたらきはじめたとき、社長は、「県内で女性がはたらきやすいトップレベルの職場にします」といっていました。ところが賃金は時給のみ。ボーナスは低く、ドコモの新製品や販売キャンペーンにあわせて目標を突破したら「お食事会と金一封」という具合で、実績、能力主義も徹底しています。
交通費の支給はゼロ。通勤のための駐車場代も一部自己負担で給料から天びきされ、税金や社会保険料をひくとパートの賃金で生活するのはたいへんです。
結局、おカネをかせごうと思えば、長時間労働しかありません。二十代で子どもがいる「バツ一」の女性で、ほんとうは朝10時出勤、夕方5時までの勤務なのに、窓口がいそがしいとそのまま夜の九時ちかくまでのこり、しょっちゅう10時間〜11時間労働をしている人がいます。休日や夜にべつのところで短時間の仕事をしている人も数人います。
慢性過労で風邪をひきやすい人がおおく、ダウンで休んだものは、賃金がへり、のこったものはぎりぎりの人員で休憩時間もほとんどとれず、「チョー忙しい」と悲鳴をあげながらフル回転ではたらいたあげく、オーダーミスやレジまちがいがおこりやすくなってたいへんです。1日の最後のしめで、料金のレジミスを発見するとその日出勤した者全員にペナルテイーを頭割りでマイナス分を徴収することもありました。
ちょっと前、モバイル関連商品の売上台数を各ショップできそいあい、一番のショップにドコモが賞金をだすというキャンペーンのとき、「これからは業務連絡はEメールでします。全員が○○ボードを買ってください」と従業員に強制的に買いとりをいってきました。
「どうして強制なんですか? それっておかしくないですか?」「わたしはパソコンがあるので業務連絡のメールなら、そっちでできます。○○ボードはいりません」と拒否する人がでて、けっきょく全員に商品は配ったものの、代金は給料から天引きできませんでした。
「ここは時給が高いっていうけれど、自前がおおいから、ぜんぜん高くないよ」「パートの給料だけではいきていけない」といった話がよくでます。
ドコモの窓口の仕事にたずさわっている女性たちは、おしゃれや恋愛話に花を咲かせるいまどきの若い娘たちですが、もう一方であたらしい動きに敏感で、パートだろうが、まったくおくせずはっきりものをいい、他の職種ではたらいた経験もあるので、実態をしっかりみる力をもっています。みんなの一番の関心事はやはり賃金のことです。