『労働通信』2000年11月号
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いま、さまざまな産業で、非正規雇用が拡大している。これらの労働者は、パート、アルバイト、非常勤、臨時社員などとよばれているが、実際の仕事の内容は、正規社員とまったくかわらない場合もおおい。なかには、非常勤雇用で10年、20年をこえる「永年勤続」の労働者もいる。だが、かれらのおおくは、劣悪な労働条件のもとで、いつクビをきられるかもしれない不安定な状態におかれている。
こうした不安定雇用労働者の雇用と権利、労働条件をまもるたたかいは、日本の労働運動のおおきな課題の一つとなっている。 本誌では今回、非常勤職員の「雇い止め」=解雇に反対してたたかっている岡山中央郵便局の労働者と、期間労働者みずからが組合を結成してたちあがった日本郵便逓送岡山支店の労働者からお話をうかがった。 |
岡山中央郵便局非常勤職員・池田幸司さん
岡山中央郵便局労働者・東 節雄さん に聞く
| 岡山中央郵便局では、ささいな理由から雇い止め=解雇をいいわたされた非常勤労働者、池田幸司さんの解雇撤回闘争が、郵政労働者(正規職員)や地域の労働者の支援のもとでたたかわれている。このたたかいの当該である池田幸司さんと「池田さん裁判を支える会」事務局の東節雄さんにインタビューした。 |
――まずは、今回の解雇問題の経過をおしえてください。
東 きっかけは今年の6月1日に池田さんの配達先である市役所でちょっとしたトラブルがおこったことです。
池田さんがいつものように、市役所の地下駐車場に郵便車をとめ、市役所内の配達をおえてかえってくると、市役所の公用車が郵便車のうしろをふさいで発進できないようにとめてありました。
守衛がやってきて、「君にはいってなかったが、このスペースは今年の春からとめてはいけないようになったんだ。このつぎからはとめないようにしてくれ」というので、池田さんが「わかりました」とこたえると、守衛は運転手に公用車をのけるようにいいにいきました。
ところがやってきた公用車の運転手は池田さんにたいして謝罪するように一方的にいってきました。池田さんは、きょうはじめて駐車禁止を知らされたことをつたえようとしましたが、聞いてもらえず、「どけろ!」「どけない!」の口論になってしまいました。
最終的には守衛長がやってきて、運転手に公用車をのけさせたわけですが、その直後に守衛長は岡山中央郵便局にたいして「苦情」の電話をいれました。
そしてその日の午後4時ごろ、池田さんが総務課長によびだされ、1時間以上にわたって「事情聴取」をされました。
――「事情聴取」は、どんなものだったのですか。
池田 一応、ひととおりの事情の説明をしました。もともと、あの場所に駐車してはいけないことを知らされていなかったのですから、こちらに一方的に非があるのではないこともいいました。
ところが、総務課長は、「たとえ、こちらに非がなくても、お客さんを不快にさせること自体がいけない。お客さんなんだから、むこうがわるくても、あやまれ」といい、「だいたい君はふだんどんな配達の仕方をしているのか、やってみなさい」と要求してきました。わたしがいつものように、「ありがとうございました」といって配達するやり方を再現すると、課長は「そういうやり方でお客さんから苦情がくるわけがない。なにか問題があるのではないか」とさらに追及してきました。
そして課長は、「反省しないのなら、これ以上やとえない」「雇用期間の7月29日でやめてもらう。それまでに態度をあらためたらそれ以降も考える。ただし、今度苦情があれば、その時点でやめてもらう。わたしの権限で決定できる」と発言しました。
結局、わたしは「今後苦情があればやめます」という誓約書を書かされました。これを書いて「おわり」にしようと思ったんです。
東 このとき、わたしたち職場のなかまは、池田さんが総務課長によびだされて一時間ちかくも帰ってこないので、「どうもおかしい」という話になり、「事情聴取」の場へふみこんでいったんです。そうしたら、ちょうど池田さんが「誓約書」を書かされていたときであり、提出しないようにアドバイスしました。
――かりに「誓約書」を提出したとしても、8月以降も再雇用されるとはかぎらないし、むしろ解雇を正当化するのにつかわれるだけだという判断だったわけですね。
東 そうです。実際、翌日の6月2日には、当局は池田さんにたいして、7月29日付で退職させるという内容の「退職予告通知」なるものを池田さんにわたそうとしたのですが、池田さんは受け取りを拒否しました。
池田 前日の課長の発言と、話がちがいますから。「態度があらたまったら再雇用も考える」といっていたのに、まだ態度がかわったかどうかわからないうちから解雇を通告してきたので、「退職する意思はありません」といって受け取りを拒否しました。
東 そして6月5日には、総務課長が「7月5日でやめてもらう」と発言しました。池田さんが、「態度をあらためれば、その後も考えるといったじゃないですか」というと、課長は「そんなことはいっていない」とつっぱねました。
その後、池田さんは当局に文書で申しいれをしたり、岡山一般労組に加盟して団体交渉をしたりして、7月5日づけの解雇は撤回させましたが、結局、7月29日で解雇され、現在にいたっています。
――だれでも経験することですが、客先でのトラブルや労働者同士のトラブルなどはいつでもおこることです。市役所の駐車場でのトラブルもささいな問題じゃないですか。ましてや、一人の労働者を解雇するような問題じゃない。
東 実際にわたしたちがあとで市役所に確認をとったところでは、市役所側も「担当者(池田さん)をかえてくれ」とはいったけれども、やめさせろとまではいっていません。ところが、こうしたことは無視しています。
――正規雇用の職員なら、こんなにかんたんに首を切ることはできません。しかし、郵便局では、正規職員とはべつに、有期雇用の非常勤(「ゆうメイト」)やパート、短時間職員(正規雇用ではあるが労働時間が短い職員)などの労働者がはたらいています。池田さんも非常勤の一人だったわけですね。
東 当局にいわせれば、これは「解雇」じゃない。2カ月ごとに契約を更新するのであり、7月末で契約はおわり、8月以降の再契約をしないというだけのことだ、しかも一カ月以上前に「退職予告通知」をしているのだから、労働基準法にも違反していないというわけです。
――しかし、判例でも、たとえ有期雇用の労働者であっても、反復的に労働契約を更新していれば、普通の常用雇用の労働者とおなじようにみなすべきだというのがありますよね。池田さんの場合、いまの仕事を何年ぐらいつづけてきたのですか。
池田 3年になります。郵便配達の仕事がおもしろそうだったので、就職しました。
東 郵便の仕事に興味をもってはいってきた人は貴重な戦力です。わたしも池田さんとおなじ岡山中央郵便局第二集配課の労働者としてはたらいているわけですが、池田さんは市役所や企業などの大口の配達を担当し、職場の同僚からもたよられる存在でした。
――都市部の郵便局では、正規職員と非常勤の比率が半半ぐらいであるとか、場合によっては非常勤のほうがおおい職場もたくさんあります。
東 岡山中央郵便局でも、正確な数字は把握できていませんが、「ゆうメイト」の存在なしに、仕事はなりたちません。しかし、当局は、二カ月ごとの労働契約があるから、どんな無理なことをいっても、非常勤はおじけづくだろうという態度だったと思います。
池田 僕としてはそういうことは納得できませんでした。自分に非がないのにあやまれというのもおかしいし、それをみとめなかったらクビというのは納得がいきません。
――さっきからの話を聞いて一つ感動したことは、東さんたち正規職員のみなさんが、「ゆうメイト」である池田さんの問題を自分たちのことのようにとらえて運動していることです。ふつうなら、「あの人は非常勤だからしかたない」となりがちですね。労働者のなかに「身分差別」があるような状態ですね。
東 わたしたちの第二集配課では、不十分ではあるけれども、「ゆうメイト」のことも自分たちの問題として考えていこうという雰囲気はあります。
たとえば、就業規則のうえでは、非常勤にも忌引きなどの特別休暇はみとめられることになっているんですが、当局はそれを非常勤の労働者に知らせていないし、管理者自体が知らない。たまたま非常勤の労働者で、身内に不幸があってどうしようかという事例があって、非常勤の忌引きの問題を調べたりして、当局に忌引きの特別休暇をみとめさせたこともあります。
それいらい、非常勤の労働者を雇い入れるにあたっては、権利・義務の関係を本人に周知させるようにしています。
こういう組合的な活動以外にも、仕事のうえで非常勤の労働者にかかわりをもった労働者は、非常勤の人たちに気をくばるという雰囲気をつくってきました。ですから、池田さんが6月1日に「事情聴取」されたときも、職場のなかまが、「東さん、いったいどうするつもりなんだ」と聞いてきました。あのときは、正直いって、自分の立場がとわれました。
――運動の取組としてはどうでしょうか。
東 わたし自身、全逓の組合員ですから、池田さんの問題について全逓の支部から当局に話をしてもらいました。しかし、いまの全逓としてはこれ以上のことは組合としてとりくめないということだったので、池田さんは、岡山一般・ワーカーズユニオン(全国一般傘下の岡山地域の個人加盟労組)に加盟し、当局との団体交渉や市役所にたいする事情聴取などをおこなっています。
そして、9月3日には、
| 建設業 | 製造業 | 運輸・通信業 | 卸・小売業、飲食店 | サービス業 | |
| 男女計 | 7.8 | 15.1 | 13.3 | 38.8 | 20.2 |
| 男 | 6.1 | 4.0 | 6.7 | 15.0 | 8.3 |
| 女 | 17.1 | 39.3 | 41.7 | 61.7 | 30.7 |
――郵便にかぎらず、いま日本全体で非常勤や臨時、パート、派遣労働者などの比率が増えています。かれらは正規職員や正社員、本工などとかわらない仕事をしながら、賃金は半分以下で、いつクビを切られてもおかしくない状態におかれています。今回の池田さんの問題は、池田さんだけの特殊な問題ではなく、そうした全国の非常勤や臨時、パート、派遣労働者全体の理不尽な状態をかえていくためのたたかいだと思います。
東 わたしたちもそういう思いで「支える会」を結成しました。しかし、ある弁護士さんに相談したところ、裁判的にはむずかしいのではないかといわれました。たとえ勝利したとしても、非常勤職員の立場にもどるだけだ、と。つぎの契約更新のときに「雇い止め」といわれればおしまいだと………。あとは本人の意思がどうかだといわれました。
池田 僕としては、納得できない。かならず勝利するという気持ちでたたかっていきたいと思っています。
東 いま、裁判闘争を準備しています。ぜひとも、全国のみなさんのご支援をお願いしたいと思います。
――ありがとうございました。
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