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集 21世紀の第1章を開く労働運動の課題

『労働通信』2001年1月号

【歴史】 20世紀の社会主義の成功と挫折――その紆余曲折の発展

【情勢】 腐朽する支配階級と変革を求める人人のたたかい

【課題】 労働運動の現状を打開し、21世紀を切り開くために


情勢

腐朽する支配階級と変革を求める人人のたたかい

 20世紀の最後の数カ月間、アメリカや日本の政局は混迷をつづけた。アメリカの大統領選挙では、1カ月以上も次期大統領がきまらないという前代未聞の事態となった。日本でも、人人の政治不信が高まるなか、加藤紘一元自民党幹事長が、野党提出の森内閣不信任決議に賛成することを表明しながら土壇場で腰砕けになるという混乱ぶりである。

 こうした情勢は、支配階級が腐朽する一方で、広範な人人がいまの社会や政治にたいする怒りと自覚を高め、21世紀にあらたな社会の変革をもとめてたちあがっていることをしめしている。

関与と拡大の戦略の破たん

 アメリカ大統領選挙の混迷は、アメリカ帝国主義の腐朽と衰退を象徴したものである。

 10年前、アメリカ帝国主義は、ソ連、東欧諸国を崩壊させたのちの世界戦略として「関与と拡大」とよばれる戦略をうちだした。それは、核兵器をはじめとする最大最強の軍事力を保持し、日欧などの旧来の同盟国との関係をつよめ、ロシア、中国をいっそうふかく資本主義市場にくみこもうとするものであった。そして軍事面の重点を「対ソ包囲網戦略」から、中東と朝鮮半島で同時に戦争がおこっても対応できる「二正面同時勝利戦略」へと転換した。

 経済的には、IT(情報技術)産業や金融などで国際競争力をつよめ、IMF(国際通貨基金)、WTO(世界貿易機関)、世界銀行などをつかって途上国への経済的支配をつよめるというものであった。

 だが、こうしたアメリカをはじめとする帝国主義の政策は、いきづまりをみせている。

南北朝鮮統一へむけた動き

 そのもっとも象徴的なできごとは、南北朝鮮の自主的平和統一へむけた動きである。
(本誌2000年7月号参照)

 アメリカは、朝鮮民主主義人民共和国を「テロ支援国家」などと指定し、経済的に封鎖し、「核疑惑」を口実に軍事的恫喝をかけ、国際的にも孤立させてきた。だが、北朝鮮は「苦難の行軍」と表現されるほどのきびしい状況のもとで人民を団結させ、軍事力を強化し、アメリカの軍事的圧力にぜったいに屈服しない姿勢をとってきた。そして、2000年にはいってからは、イタリアやオーストラリアとの国交正常化などの多角的な外交攻勢を展開し、中国との団結もつよめながら、歴史的な南北首脳会談を実現し、「民族自主」の力によって南北統一をかちとるとの共同宣言を発表した。

 アメリカは対北朝鮮政策を修正せざるをえなくなり、米朝高官の相互訪問をつうじて、北朝鮮にたいする「テロ支援国家」のレッテルをはずさざるをえなくなった。

 これらの一連の動きは、北朝鮮を転覆しようとしてきた策動をうちやぶるだけでなく、極東におけるアメリカ帝国主義の支配をうちやぶるうえで重要な意味をもっている。

グローバル化反対闘争

 いま一つの動きは、99年12月にシアトルでひらかれたWTO(世界貿易機関)の首脳会議が決裂したことにみられるように、アメリカを頂点とする帝国主義がおしすすめているグローバル化、「自由貿易体制」、規制緩和、民営化などに反対するたたかいが全世界でひろがっていることである。
(本誌2000年1月号参照)

 とくにアジア、アフリカ、ラテンアメリカなどの諸国は、WTOを軸にした「自由貿易体制」が先進国による発展途上国にたいする収奪をいちだんとつよめるものであるとして抗議の姿勢をつよめている。

 先進資本主義国内部においても、グローバル化や「IT革命」、規制緩和が実行され、大量の非正規雇用労働者の増大、中小零細商工業者のなぎたおし、農業の破壊がすすむなかで、規制緩和やグローバル化に反対する労働運動が発展している。

 アメリカ本国においてさえ、かつて反共労働運動のチャンピオンであったAFL・CIO(アメリカ労働総同盟・産別会議)のなかで、戦闘的労働運動の再生を標ぼうするジョン・スウィーニーらのグループが指導権をにぎり、労働者の生活と権利をまもる大衆行動をつよめている。かれらは、社会主義をめざす勢力ではないが、UPS(宅配便会社)の闘争ではパート労働者二万人を正社員にするという要求をかちとり、グローバル化反対をかかげてWTOシアトル閣僚会議に反対するたたかいでも重要な役割を演じた。
(本誌2000年7月号参照)

 そのほか、中東では、湾岸戦争後、アメリカの主導のもとでの「中東和平」がすすめられてきたが、最終局面で破たんし、イスラエル占領・暫定自治のもとにあるヨルダン川西岸、ガザ地区においてパレスチナ民衆のあらたな「インティファーダ」(民衆蜂起)の炎がもえあがり、パレスチナ独立へむけて歴史の歯車がまわりはじめている。

 フィリピンでも、アメリカのあとおしをうけてきたエストラーダ大統領の違法賭博の発覚をきっかけに、エストラーダ打倒をめざす大衆闘争が支配階級の一部もまきこんで、急速に高まっている。フィリピン共産党をはじめとする革命勢力はこの政治危機を利用して、農村における武装闘争を強化し、大衆闘争を強化し、可能なかぎり広範な統一戦線を発展させ、労働者、農民などの基本大衆への教育と組織化を最大限に強めようとしている。
(本ホームページ「フィリピン特集」参照)

米日欧の矛盾

 ヨーロッパや日本などの帝国主義諸国は、グローバル化や規制緩和、「IT革命」など、アメリカと同様の政策をうちだし、労働者や勤労人民を犠牲にしていきのこりをはかろうとしている。だが、そのことは、アメリカ、ヨーロッパ、日本などの帝国主義同士による世界の市場や権益をめぐる争奪を激化させ、「大競争時代」の到来をもたらしている。これも、アメリカ一極支配を困難にする要因となっている。

 その顕著なあらわれが、情報通信、金融、自動車、電機などあらゆる産業で、アメリカ、ヨーロッパ、日本などの巨大企業同士の世界的な規模での合併や資本・技術の提携などがすすんでいることである。それは、企業同士の国際的な「協調」がすすんでいることを意味せず、むしろ相手を利用し、だしぬくために合併や提携をおこなうものであり、競争はますます激化せざるをえない。

 政治的には、ヨーロッパ諸国はEU(欧州連合)の結成を軸に、独自の戦略をつよめ、アメリカ帝国主義と対抗する方向をとっている。資本主義が復活したロシアも、NMD(米本土ミサイル防衛)の導入などをめぐってアメリカ帝国主義との対立をふかめている。

 このもとで、アメリカがイラクを封鎖しようとしても、フランスやロシアがいち早くイラクとの関係を強化するなど、アメリカの一極支配をほころばせている。

社会主義の「改革」の動き

 こうした情勢のなかで、中国、北朝鮮、ベトナム、キューバなどの社会主義国は、ソ連、東欧諸国の崩壊の教訓をふまえて、方法と度合いにちがいはあるが、いずれも「自己改革」をはかろうとしている。

 中国共産党は、極左的な「文化大革命」を収束させたのち、社会主義建設の重点を経済建設におき、「四つの基本原則」(@社会主義の道、A人民民主主義独裁、B中国共産党の指導、Cマルクス・レーニン主義、毛沢東思想――の堅持)と「改革・開放」を「二つの中心」とする「中国の特色を持つ社会主義」の建設をすすめてきた。いらい、二十数年間、中国は天安門事件の逆風にもたえながら、西側の科学技術や資本を導入し、「市場経済」の原理もとりいれて飛躍的な経済成長をとげてきた。

 対外的には、中国は第三世界諸国との連携を重視し、米欧、米ロの矛盾をも利用しながら、アメリカの一極支配に反対する外交政策をうちだしている。グローバル化がすすむなかで、WTOにも参加し、中国に経済的利益をもたらすとともに、そのなかでアメリカ帝国主義の覇権主義に反対し、国際政治経済の新秩序をうちたてることをねらっている。

 朝鮮民主主義人民共和国も、南北首脳会談がひらかれるもとで、金剛山の観光開発や自由貿易地域への韓国資本の導入をてこに、対外開放と改革をすすめようとしている。

 キューバ共産党も第五回全国大会で、「今後数年間における経済成長を五%から六%にきめ、ひきつづき外国の投資を奨励する政策を実行し、自国の経済自由地域と工業団地を発展させる」との方針を決議している。同時に、九月の国連ミレニアムサミットでは、カストロ議長が「政治・経済・技術力を独占する一部のゆたかな国が、われわれをよりまずしくしようとしている」「現在の政治・経済秩序は人類の利害に奉仕していない」と演説し、帝国主義による世界支配体制をきびしく批判する立場を堅持している。

 「改革」をすすめてきた社会主義国では、経済面で一定の成果をかちとっているが、国内の貧富の格差の拡大や幹部の腐敗、資本主義イデオロギーの影響などもつよまっている。これらの国がこうした問題を克服し、社会主義の再生と国際共産主義運動の再構築へとすすむのか、それとも資本主義の復活へと後退するのか、ひきつづき注目し、研究していくことが重要となっている。

破たんする自民党政治

 国内の情勢をみるならば、つぎの三つの特徴をあげることができる。

 一つは、戦後の自民党を中心とする政治支配が破たんしていることである。戦後、日本の支配階級は利権によって各業界・地域のボスを買収し、諸階級の人民を選挙に動員して自民党による政治支配をかためてきた。だが、こんにちそれは深刻な国家財政の危機をもたらし、人人の反発もつよまって集票機構がうまくうごかなくなっている。だが、自民党は「財政改革」が緊急の課題であることをわかっていながらも、目前の利権と票をうしなうことをおそれて、あらたなビジョンをうちだすことも、「自己改革」をすることもできなくなっている。「改革」をきどった加藤紘一氏もやはりおなじ穴の狢(むじな)であった。

 そして、「有名人候補」によって自民党の得票をふやすために参議院選挙法を改悪するなど、理念もなにもない党利党略に終始している。

 二つめは、かれらがあたらしいビジョンをうちださないまま、危機の犠牲をすべて人民に転嫁する政治だけはつぎつぎと実行にうつしていることである。

 かれらは、南北朝鮮統一へむけた動きに逆行していぜんとしてアメリカ帝国主義の世界戦略に従属し、アメリカの戦争に自衛隊のみならず、地方自治体や企業など日本全体を自動的に動員する周辺事態法を成立させた。つづいて市民の電話やファックス、電子メールなどを警察が盗聴できる通信傍受法を成立させた。さらに憲法の改悪を射程にいれて国会に憲法調査会を設置した。

 介護保険制度が正式にスタートしたが、その実態はこれまでの介護の水準を大幅にレベルダウンするものとなっている。追いうちをかけるように年金制度の改悪や医療保険制度の改悪などがつづき、「カネの切れ目がいのちの切れ目」となる事態がおこっている。

 あいつぐ少年犯罪への対策として少年法も改定されたが、諸外国の例をみても「厳罰主義」によって少年犯罪が減少したことはなく、むしろ少年から教育と更生の機会をうばい、いっそうの犯罪の温床をつくるだけのことである。

 グローバル化によって世界的な規模での市場競争がつよまるなかで、金融、鉄鋼、化学、情報通信、自動車、交通運輸、流通などあらゆる産業で、国際的な規模での企業再編・合併があいつぎ、これにともなって企業の倒産、リストラ「合理化」の嵐がふきあれている。法律的にも、産業再生法や商法改悪などによってリストラの手助けがすすめられている。失業者は314万人(4.7%)にのぼっている。日本の多国籍企業は、安い労働力と資源、市場をもとめてアジアをはじめとする世界各国への進出をすすめて製造業などの国内産業を空洞化させつつあり、「IT革命」による「合理化」はさらに首切りをうながしている。
(本誌2000年5月号「生き残りを賭けた総力戦――自動車産業の国際的再編の背景」を参照)
(本誌2000年11月号「IT(情報技術)は産業をどう変えるか」を参照)

 三つめの特徴は、こうした政治にたいして、労働者、勤労人民の怒りは鬱積(うっせき)し、政治と社会の改革をもとめる要求と行動が高まっていることである。

 2000年6月の総選挙では、連立与党が大敗し、つづく長野県知事選挙や栃木県知事選挙でも既成政党の相乗り候補が落選した。そこでは、与党だけでなく、かれらとの対決点を鮮明にしえない野党も人人からみはなされていることがあきらかとなっている。

 「唯一の革新」をとなえる「共産党」は、これを政権参加への絶好の機会とみなして、規約から「社会主義革命」などの文言を削除し、自衛隊の容認へと道をひらく方針を採択した。これは、政権に色めきだって右より旋回し、大衆からの支持を失っていったかつての社会党とおなじ道をあゆむものである。

 既存の政党や労働組合、組織のほとんどが腐敗し、まったくたよりにならなくなったいま、おおくの人人が政治への関心を高め、自分たち自身の力でものごとを考え、判断し、行動しはじめている。この動きは決してとどめることのできないおおきなながれとなって21世紀の最初の1ページをひらこうとしている。

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