『労働通信』2001年9月号


加速する電機産業の構造改革

電機産業労働者  谷崎 肇

 ITバブルの崩壊や米国経済の減速に端を発した半導体、パソコン市場の悪化をはじめとする不況の波は、日本国内における電機産業の構造改革を急速に加速している。資本はその利益追求のため、そして自身の生き残りをかけて、低コスト労働力を中国をはじめとする海外にもとめている。それは、じゅうらいの製造部門だけではなく、いわゆる「ホワイトカラー」の職域にまでおよんでいる。とくにソフトウェア開発部門などの海外シフトは周知のとおりである。

 一方、国内の労働者にたいしては、「希望退職」や早期退職優遇制度、極端な人員再配置により人員整理をだいたんにおこなっている。また、成果主義の名のもとに労働者同士の不健全な競争をあおり、賃金カットや高残業、サービス残業にむすびつく仕組みを確立しつつある。

 ほんらい人間に恩恵をもたらすべきIT化の波は、一方で業務の効率化をうながすが、その効率化は即人員削減につながっている。そのようななか、労働者はより高度な知識や技術を修得することを要求され、それについていけない者はほうりだされるという構図ができている。職場では、「できる者」と「できない者」が明確に区別された賃金体系が形成されている。

 労働の質の点からみると、あきらかに二極分化がすすんでいる。一方で、比較的裕福な家庭に育ち高度な教育を受けた労働者は、高度な知識や技術をどんどん身につけ企業の欲する人材に育っていくが、逆の境遇で育った労働者は、そのスキル(技術、技能)を身につける機会もすくなく、しかもかれらの労働力の市場評価は低く、前者との賃金・待遇の格差は広がるばかりである。前者の者も常に他の労働者との競争がつきまとい精神的な疲労は極限に達している者もすくなくない。

 このように職場環境は、みえないところでも悪化しており、過労死、仕事を苦にした自殺、精神な病をきたす者があとをたたない。グローバル競争のなかで、いまや国内企業は、このような構造改革をおこなわないと生き残れない状況におちいっている。しかし、この改革のいきつくところは、さらなる失業率の増大と生活不安からくる個人消費の低迷、そしてデフレスパイラルの深刻化である。さらに国内産業の空洞化も急速にすすんでいくであろう。これは、資本にとって自分の首を自分でしめているようなものであるが、資本はこの矛盾を解消するためにさらに構造改革をおしすすめるという愚行の輪から脱出することができないで、あえいでいる。

 他方、大手企業の労働組合は、明確な方針を提起できる指導政党不在のもとで、企業の存続発展が雇用確保の最善策であるというささやかな希望のもと、資本の構造改革に肯定的な態度をしめしている。さらに、資本への忠誠を誓うがごとくストライキ基金の積み立てを停止したり、組合員に返却するなどゆゆしき事態となっている。たたかう意志のない組合に魅力をなくした労働者の組合離れが加速していることも深刻な問題である。

 このような情勢のもとで、わたしたちは、あらゆる手段をつかって資本およびそれに追随する小泉政権の「改革」の化けの皮をはぎ、その本質をあきらかにしめしていかなければならない。この「改革」が、資本を肥えさせ、労働者・勤労者を飢えさせるものであるということを明確に、具体的に、理路整然と訴え行動していかなければならない。とくに労働組合へのはたらきかけは、ますます重要な課題となるであろう。

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