『労働通信』2001年11月号
わたしは、コンピュータの基盤をつくる工場ではたらいています。昨年までの好況のなかで、会社は新工場の建設をすすめてきましたが、ITバブルの崩壊で新工場の完成予定を大幅に遅らせようとしています。
わたしがはたらいているA工場には、一二〇〇人ぐらいの労働者がはたらいていますが、三〇〇人ぐらいが正社員・本工で、九〇〇人ぐらいが派遣、期間、パートなどの不安定雇用労働者です。
そこで、二七歳の派遣会社の社員が即刻やめさせられるという事件がおきました。その事件というのは、この派遣社員が朝九時からの全員体操にでる前にまちくたびれて、床に手をついてすわりこんでいたところ、ドアがあいて小指を負傷したことです。床にすわること自体が規律違反だということです。
また、まじめにはたらいている期間社員が、期限切れということでつぎからつぎに解雇されています。
いまは、残業がカットされている。いそがしい時期には、残業しなければ職制に文句をいわれていました。いまは残業をすれば文句をいわれるという状況です。労働者は、ローンの支払いなどがかさむため、残業手当があってあたりまえの生活になっています。残業手当がなくなると、月に一〇万円はちがうといわれています。派遣社員は、日給が八〇〇〇円で八月などは出勤日数がすくないうえに、残業がないために手取りは一五万円にしかなりません。
正社員で構成される労働組合は、「会社の安定」、「自分たちの生活の安定」のために、派遣社員や期間社員が必要と考えています。それにくらべ派遣社員や期間社員は、資本の都合でいつでも首をきられ、減給されても当然という位置におかれています。作業現場は、ほとんどが派遣社員、期間社員が動かしています。だから一人一人の労働者の技術水準があがるはずもありません。不良品の山ができています。
それを何とかしようと、その専門社員を本社からつれてきて指導させています。数人のチームをつくり、トヨタの生産方式で工程管理をして、QC運動でしゃにむに「労働意欲」をかりたてようとやっきになっています。ジャストインタイムで定時の休憩時間もとりあげ、生産のあがらない社員には個別の指導がはいります。トイレの時間もはかられていることもあります。「不良品をつくるむだをなくそう」、「不良品を何個以下にせよ」とはっぱをかけ、さらにさまざまな不良品状況のグラフをつくってあちこちの壁にはりつけています。
さいきん、不良製品を減らすチェック体制がとられました。この任務をうけたのが、一年前に入社してきた男子社員です。現場にはいって不良品カットのゴミ箱をあさったり、現場の労働者にいろいろ質問したりしています。しかし、なかなかうまくいかないので、上部にごまかし、つじつまをあわせるような報告をしています。現場からひきぬいてつくったチェック班からは、「チクルな!」、「裏切りものがきた」と反発をくったと、かれはなげいています。
会社側は、労働者を正社員とその他の低賃金で無権利の不安定雇用の派遣・期間社員をつくって分断し、製品の歩止まりをあげさせて生産性をあげることで血まなこになっています。かれらはしめつける一方で、「自主性」、「民主的」をとなえて思想的にひきつけようとすることもわすれてはいません。しかし、そんなにうまくいっていません。労働者のなかに、「チクルな!」、「裏切り者がきた」と公然と反抗する姿や、「めだたないよう適当にやる」という消極的ではあるが反抗の力がみえています。