『労働通信』2001年11月号

 アメリカ帝国主義は一〇月八日深夜(日本時間)、九月一一日に発生した「同時多発テロ」の報復として、アフガニスタンにたいし巡航ミサイルトマホークと戦略爆撃機を動員した攻撃を開始した。この攻撃にはイギリス軍も参加しており、日本の小泉内閣も世論の反対をおしきってテロ対策特別法案を成立させ、アメリカの「報復戦争」に参戦した。

中央アジアの資源が狙い

 われわれは、ニューヨークの世界貿易ビルにしかけた「同時多発テロ」をぜったいに容認することはできない。それは、このような突発的、衝動的な行動によってアメリカをはじめとする世界帝国主義の抑圧と支配をうちやぶり、世界のすべての労働者階級と人民が直面している苦難から解放することができないからである。しかし、われわれは、傍観者的な立場にたつことはできない。なぜなら、こうした事態にいたる過程には、アメリカをはじめとする先進資本主義国によるアフガニスタンをふくむアラブ・中東、アジア、アフリカなど発展途上国にたいする政治的支配が背景にあるからである。

 アメリカのブッシュ政権は、九・一一事件の容疑者を「イスラム原理主義者」のビンラディンだと断定し、かれが中心になっている「アルカイダ」という組織が今回のテロをおこなったと決めつけ、「正義の旗」なるものをかかげて「報復戦争」=実際は侵略戦争を開始した。われわれは、この侵略戦争に反対しなければならない。

 そのためには、軍事侵攻をうけているアフガニスタンがどのような国なのかを知らなければならない。アフガニスタンは一九七三年に、ダウド元首相のクーデターによって王制が打倒されて共和制が確立された。その後、七八年の軍部クーデターと七九年のソ連の軍事侵攻のもとで「社会主義」を標榜した政権が成立した。だが、この政権はソ連軍撤退後、アメリカ帝国主義の支援をうけたイスラム各派のゲリラ勢力によって打倒され、イスラム政権が成立した。しかし、この政権も内紛をつづけるなかで、タリバーンが急速に勢力をのばし九六年に首都カブールを制圧して、現在にいたっている。

 アフガニスタンの人民は、これまで王制によって長期にわたって搾取と抑圧をほしいままにされ、さらにたびかさなる内戦によって貧困と苦難をおしつけられてきた。これには、アメリカ帝国主義や、旧ソ連などの大国の政治的、軍事的干渉が背景にあることはいうまでもないことである。

 テロ発生の根拠は、帝国主義の支配とそれによってひきおこされる人民の貧困と苦難にほかならない。アフガニスタンにたいする帝国主義の干渉と支配は、アラブ・中東地域への政治支配と資源の略奪がからんでいるといえる。中央アジアには、豊富な油田や天然ガス資源が埋蔵されている。アフガニスタンの北側に位置するトルクメニスタンの巨大な油田と天然ガスに、アメリカ政府はこの一〇年らい、アメリカ主導による企業グループの開発計画を強力にバックアップしてきた。これらの計画は、トルクメニスタンからアフガニスタンを横切ってパキスタンにいたる石油パイプラインと天然ガス・パイプラインの敷設である。この計画の実現は、アメリカにとって重大な政治的、経済的利益をもたらすことになるといわれている。アフガニスタンの政治的不安定の根底に民族的な対立があることはいなめない。しかし、民族の統一をさまたげているのは、帝国主義による資源の略奪のための政治的干渉が背景にあることも事実である。

帝国主義から収奪される中東・アラブ諸国

 それはアフガニスタンだけでなく、アラブ、中東地域における帝国主義の歴史的支配をみればはっきりする。帝国主義がこの地域に侵略したのは、この地域がヨーロッパとアジアをむすぶ交易の中継点であるとともに、石油資源の豊富な埋蔵地だからである。この地域は、世界最大の油田地帯である。二〇世紀の初頭にイランで石油が発見されていらいこんにちまで、各地で油田がほりあてられており、世界で確認されている石油埋蔵量の六三%がこの地域に集中している。現在、世界におけるエネルギー消費の四割をしめる石油は、欠かすことのできない第一位のエネルギー資源である。同時にそれは、医療、生活用品、建材、各種素材など日常生活用品全般を生みだす化学工業の原材料でもある。だが、この地域の国国は、こうした豊富なエネルギー資源をもちながら、王族とごく一部の支配階級をのぞいて、圧倒的多数の人民は貧困と無権利な状態におかれている。

 サウジアラビアなどペルシャ湾岸の産油国の石油生産は、アラブやアジアなど低賃金の外国人労働者によってささえられている。経済も石油産業にかたよった奇形的なものであり、主要な産業であった農業も衰退し、輸入にたよらざるをえない状況にある。また、このアラブ・中東地域は第二次世界大戦後、四次にわたる中東戦争、イスラエル軍のレバノン侵攻などいく度となく戦争がひきおこされ、戦火のたえたためしがない。このなかで、おおくの人人が殺され、数百万人のパレスチナの住民が土地をうばわれて難民化をしいられている。また、一九九一年には、イラクにたいする帝国主義の戦争、すなわち湾岸戦争がひきおこされている。これらの戦争は、すべてといっていいほど帝国主義の湾岸地域における石油資源の略奪とその権益維持のための戦争であった。

 アメリカをはじめ帝国主義国は、この地域でぼうだいな利潤をえている。たとえば、メジャーとよばれる国際的な石油独占体がそれである。この独占体は、アメリカ系がエクソン、モービル、テキサコ、シェブロン、イギリス系がブリティッシュ・ペトロリアム、イギリスとオランダの合弁によるロイヤル・ダッチシェルの六社である。このメジャーは、石油採掘に必要な資金、採掘する技術、生産技術、そして輸送や販売網をもって国際的な石油市場を支配している。これらのメジャーは、第一次世界大戦を前後する時期から一九三〇年代にかけてペルシャ湾地域に進出して石油資源を略奪し、生産コストの二〇倍から三〇倍の価格で世界中に売りさばき、ぼろもうけをしてその地位をきずいてきた。

 世界における大企業の売上高ランキングの第三位がアメリカのエクソン、四位がイギリスとオランダの合弁のロイヤル・ダッチシェル、八位がアメリカのモービル、九位がイギリスのブリティッシュ・ペトロリアム、一八位がアメリカのテキサコなどである。一九七〇年代にはいって、石油産業の民族産業化がすすみ産油国の石油収入が増大したが、それも人民の生活の向上と文化などの発展につかわれず、巨額の石油収入はオイルダラーとして国際金融市場へながれこみ、開発計画への投資、さらには武器輸出(産油国側武器の調達)などというかたちでそのほとんどが帝国主義国のふところにはいっていく。こうして中東・アラブ諸国は、帝国主義の世界経済の網の目にくみこまれて収奪されている。

帝国主義の橋頭堡=イスラエル

 イスラエルは、中東・アラブ地域における帝国主義支配の一つの柱となっている。このイスラエルは戦後、一九四八年にアメリカなど帝国主義の援助のもとに建国された。アメリカ帝国主義は、このイスラエルを中東における軍事的橋頭堡として位置づけて育成してきた。四次にわたる中東戦争のなかでアメリカ、イギリスは、イスラエルに政治的、経済的、領土的な安定的地位をあたえるために支援してきた。人口四三七万人という小国イスラエルが国家予算の二割以上を国防費に投入して最新鋭兵器を装備し、中東・アラブ地域で軍事大国として君臨できるのは、アメリカが全面的にささえているからである。アメリカは、対外援助費の四分の一をイスラエルの援助にあてている(一九八九年の資料によるもの)。そのほかにも、在米ユダヤ人の送金というかたちでテコいれしており、これが年間総額約五〇億ドル(イスラエルの国家予算の約二割)にものぼり、その他にもさまざまなかたちの援助をおこなっている。アメリカ帝国主義は、「アラブ対ユダヤ」という対立にたいしてみずからが「調停者」の役割を演じているが、アラブ地域への政治的支配と石油など権益の確保のためにイスラエルをつかっていることは明白である。現在、おおくのパレスチナ人はイスラエル軍によって殺され、ぼうだいな人人が難民化されているのもこのためである。

侵略戦争に反対

 小泉首相はいちはやく、「日本はアメリカの報復を全面的に支持する」と無条件の忠誠を宣言し、自衛艦をインド洋上に派遣して事実上の参戦にふみきった。一〇月一八日には、テロ対策特別措置法案(自衛隊による軍事物資輸送、難民救済)を国会提出からわずか二週間で、自民、公明、保守の与党三党などの賛成多数で衆院で可決させ、憲法が禁じるとしてきた集団自衛権の行使にふみこみ、憲法九条をふみにじる暴挙にでた。

 かれらは、「テロ撲滅」を口実にしているが、それはこの戦争の性質をおおいかくすものである。これまでの歴史的な事実があきらかにしめしているように、かれらがすすめる戦争は帝国主義の利権をまもり、帝国主義に反対する闘争を抑圧し、資源を略奪する戦争である。とくに、ソ連・東欧など社会主義の崩壊による「米ソ二極構造」という戦後の階級関係がくずれてから、また湾岸戦争とそれ以後のアメリカ帝国主義の横暴はゆるしがたいものとなっている。さらに、ブッシュ政権の成立後は、「米国の国益」をふりかざして、アメリカ主導によるグローバル化の促進と、多国籍企業による市場支配の強化、ミサイル防衛計画の推進、CTBT(包括的核実験禁止条約)の批准の放棄、地球温暖化防止の京都議定書からの離脱、南北朝鮮の和解と統一に横やりをいれるなど、その横暴なふるまいはきわめて露骨になってきている。

 こんにちのテロは「報復戦争」では解決することはできない。この真の解決は、帝国主義による干渉と資源の略奪をやめさせ、アフガニスタンをはじめとする発展途上国の政治的な独立、主権と領土を保障し、産業の発展と貧困の撲滅を国際的に保障することである。

 日本の労働者階級と人民は、こうした観点からアメリカの「報復戦争」と小泉政権の戦争への参加に断固として反対しなればならない。

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