『労働通信』2001年11月号
『労働通信』のホームページにたいして、おおくの方方からご意見や情報をお寄せいただいているなかで、労働相談が高い比率をしめている。
たとえば、理由もなくボーナス半額カット(運送業)、拘束時間がメチャクチャで残業もただ働き(保母)、代休がとれない(消防署員)、二七時間連続勤務で休日出勤も手当なし(公立病院看護婦)、入院したら解雇された(アルバイト)……。もっとひどいのは労働者がなんらかの事情で退職するとき、労働者のささいな失敗を理由に巨額の損害賠償を請求したり、社宅がわりに会社がかりあげていたアパートの敷金・礼金を給料から勝手に天引きするといった例もあった。企業秘密をもちだす危険があるとして退職をみとめないケースなどなど、労基法違反承知どころかまったく無知な経営者が存在している。
これらの相談事例の一部を、ホームページにも掲載している。
今号では、最近の相談事例を紹介したい。これはあるアルバイトの方からいただいた相談である。
私はソフトウエア開発会社で事務や雑用のアルバイトをしていました。仕事にいきづまるとインターネットで気をまぎらわしながら二カ月が経過したころ、会社にいや気がさして辞めたい旨を社長につたえて了承されました。その後、それまでの給料をうけとりにでむくと、社長は「仕事中にインターネットやソフトを不正使用していたので裁判所に訴える。給料は減給する。まず謝罪をしろ」といって一〇〇万円の損害賠償に応じるようもとめてきました。給料は実際に減給されていました。一〇〇万円の損害賠償なんて不可能なので、ひたすらあやまりましたが聞きいれてくれません。自分は会社に損害をあたえたことはないし、遅刻、早退もありません。支払う必要はないと思うけれど、どうすればいいでしょうか。
まず、一〇〇万円の損害の具体的根拠を会社にださせましょう。NTTやプロバイダが発行する請求書で、インターネットの不正使用で一〇〇万円もの損害をあたえた根拠がしめせるでしょうか。ソフトの不正使用について、会社保有ソフトの販売元企業(マイクロソフトなど)の不正コピー行為ならば法律違反であり、販売元からの賠償請求があるかもしれませんが、そのような事実はあるのでしょうか。具体的根拠がなければ、裁判などできません。
労働基準法第一六条では「使用者は労働契約の不履行(ふりこう)について違約金を定め、又は損害賠償を予定する契約をしてはならない」とさだめています。雇用されたときに会社が提示した「雇い入れ通知書」や就業規則のなかに、「ミスをした場合は○○円の賠償をすること」などとあらかじめ書かれてあればあきらかに一六条違反です。
ただし、過去の行政通達で、「損害賠償の金額を予め約定せず、現実に生じた損害について賠償を請求することは、賠償額の予定でないからさしつかえない」(昭二二年九月一三日発基第一七号)という考え方がだされています。しかし、今回のケースは、「現実的に生じた損害」の根拠がはっきりしませんので、損害賠償の請求はできません。
減給はどれくらいされたのでしょうか。労基法は、労働者への懲戒として減給をみとめています。しかし、一日の賃金の半額以内、あるいは一カ月の賃金の一〇分の一以下にかぎられています。しかも、このことは就業規則にあらかじめ定めていなければならないとなっています。減給の根拠はないといえます。
ちかくの労働基準監督署に相談するとともに、損害賠償問題については、市役所などの市民無料法律相談(弁護士が対応)を活用することをおすすめします。