ソ連崩壊から10年―― 社会主義の可能性を考える

11月シンポジウムの呼びかけ

『労働通信』2001年11月号

 一一月一〇日、東京の駒沢大学で「ソ連崩壊から一〇年――社会主義の可能性を考える」一一月シンポジウムが開催される(同実行委員会主催)。國學院大學の伊藤誠教授や作家の井上ひさし氏ら一四氏が呼びかけ人となり、『葦芽』同人、オルタ・フォーラムQ、社会主義理論学会、東京唯物論研究会などが協賛団体となっている。この一一月シンポジウムにむけたプレ研究会として、伊藤誠氏による「市場経済の陰の暴力性」(八月二五日、豊島勤労福祉会館)などの報告会もおこなわれている。シンポジウムのよびかけ人、賛同人となっている人人のなかでも、ソ連の崩壊や社会主義についての見解は多種多様でかならずしも一致していないようだが、いまの時期にこのテーマを正面からとりあげて論議する意義は大きい。以下、シンポジウムのよびかけ文を掲載する。


 ソ連崩壊から一〇年が経とうとしています。繁栄を誇っていたアメリカ経済は株式市場のバブル崩壊で失速し、それが世界経済に与える打撃が深く危惧されています。日本では出口の見えない不況が長期化しリストラの嵐で社会が荒廃し、憲法改悪の動きなど政治の右傾化が進行しています。新世紀を迎えたというのに内外ともに閉塞感が暗く周囲を覆っています。一頃、声高かに唱えられた「社会主義の敗北と資本主義の勝利」の声は完全に消え失せてしまいました。資本主義は依然としてその根本的矛盾を抱え込んでおり、人間と自然を利潤追求の道具としています。しかし、この状況を打開する根本的で斬新な提起もなお見いだすことはできません。そうしたなかで、多くの人たちが、自分が大切だと考える課題と格闘し、さまざまな努力を重ねているのだと思います。

 ソ連はそれぞれの共和国に分解し、資本主義へと体制転換しましたが、ロシアをはじめどこでも市場経済化は壁にぶつかり経済再建は難航し、社会の疲弊と困難ばかりが顕在化しています。終息の目途もなく泥沼と化しているチェチェン紛争など民族問題もいまだ未解決です。

 ソ連・東欧の旧体制はなぜ崩壊したのか、崩壊の意味は何なのか、なお広く共通の認識は得られていないと言えます。あるソ連史家が説くように、過去の忘却でも過去への未練でもない、「両面をバランスよく視野にいれる冷静で総合的な把握」こそが求められているのではないでしょうか。この問題は、ソ連・東欧にとくに興味がある人だけの課題ではなく、現代社会がどうなっていて、どうしたらよいのという問いと深くつながっていると思います。

 さらに、この一〇年の世界の動きをも視野に納めて、この閉塞状況を打破しなければなりません。地球温暖化の進行をくい止め環境をまもることも急務ですし、社会的規範が崩れるなかで教育の再建も必要です。従来のような経済成長ではなく、労働者・市民の立場に立った公正と平等が求められています。

 数多くの難問が山積しているなかで、何か一つの問題だけをこれこそ重要だなどとはとても言えません。ただその一つとして、ソ連などの崩壊の意味を問い、その教訓を明らかにし、〈社会主義の可能性〉を探る課題があると、私たちは考えています。

 ロシア革命から八四年、人間はどこまで歩んできたのか、二一世紀の課題は何か、をともに考える場を創りだすこと自体が、この時代には容易ではありませんが、おおいに意味のある試みです。

 この趣旨に賛同していただける方を求めています。ぜひご協力ください。

二〇〇一年五月六日 

呼びかけ人

伊藤 誠(國學院大学教授)
井上 ひさし(作 家)
宇井 純(沖縄大学教授)
岡田 進(東京外国語大学名誉教授)
岡本 磐男(東洋大学元教授)
上島 武(大阪経済大学教授)
小杉 修二(駒沢大学教授)
斎藤日出冶(大阪産業大学教授)
島崎 隆(東京唯物論研究会)
西川 伸一(明治大学助教授)
村岡 到(『カオスとロゴス』編集長)
望月喜市(北海道大学名誉教授) 
山口 勇(都立短期大学教授)
山根 献(『葦芽』同人)

協賛

『葦芽』同人
オルタ・フォーラムQ
社会主義理論学会
東京唯物論研究会


シンポジウム

11月10日(土)午後1時
駒沢大学(世田谷区駒沢)

■第一部 分科会

@ソ連とは何だったか、ソ連崩壊の教訓

*上島 武 カーとドイッチャーの歴史観の限界
*堀込純一 一党独裁体制の形成と主権原理
*村岡 到 ロシア革命と法(律)の問題


Aソ連崩壊の思想史的意味


*有井行夫 二〇世紀社会認識の構図と社会主義
*岩淵慶一 ソ連型社会主義の崩壊とマルクスの社会主義論
*小原耕一 ロシア革命とグラムシのヘゲモニー論


B二一世紀の新しい課題と社会主義

*小杉修二 地球温暖化と平等主義
*斎藤日出冶 ポストモダニズム時代の社会主義戦略
*長島誠一 緑の社会主義

■第二部 全体会 講 演 4時〜

大江泰一郎
二〇世紀社会主義が超えられなかったもの ――体制転換と法・法律

 参加費 一〇〇〇円
 懇親会 二五〇〇円

東京都千代田区神田駿河台1-1
明治大学駿河台研究棟721号室(西川研究室)
11月シンポジウム実行委員会

 電話03−5967−2168

目次へ戻る

この記事のTOPへ戻る

この記事へのご意見、ご感想をメールでどうぞ