2002年を迎えて

『労働通信』2002年1月号

 アメリカの「同時多発テロ」とアフガンへの「報復戦争」、さらには世界経済のあらたな危機の進行という切迫した情勢のもとで、二一世紀の一年めがおわりをつげて二〇〇二年のあらたな年をむかえた。

テロ、戦争、経済危機に直面した世界資本主義

 世界情勢の変動はいちじるしい。昨年、二一世紀をむかえるにあたって資本主義国の支配階級は、「戦争の世紀であった二〇世紀はおわった」、「社会主義の敗北と資本主義の勝利の世紀」などと歓喜した。しかし、中国の「天安門事件」やソ連・東欧の崩壊から一〇年あまりを経たこんにち、資本主義世界は「ITバブル」がはじけ、あらたな経済危機に直面した。そして、いまそれに拍車をかけるように「同時多発テロ事件」、アメリカの「報復戦争」がひきおこされ、いっそう深刻な経済危機がおしよせている。つかのまのアメリカの一極支配はくずれつつあり、破産の憂き目にあっている。

 アメリカをはじめとする帝国主義は、自国の労働者、人民を搾取して利益をむさぼり、さらには植民地・従属国にたいして資源を略奪し、労働者、農民など人民をしぼりあげて巨大な富を蓄積してきた。アメリカはとりわけこの一〇年間、横暴のかぎりをつくしてきた。かれらは、国境をこえ、独占グループ、企業の枠をこえて独占集中をすすめ、多国籍企業化、グローバル化をはかる一方で、ふだんに激化する資本相互、帝国主義国相互の矛盾とあつれきを緩和させるためにIMF・世界銀行などの経済機構、WTO(世界貿易機関)、APEC(アジア太平洋経済協力会議)などの機構をつくり、地域的にはEU(ヨーロッパ連合)、NAFTA(北米自由貿易機構)などの経済ブロックを形成して、世界規模の政治的、経済的な支配体制を確立するまでにいたっている。

 

 帝国主義の政治経済支配は、一方で少数の金持ちをつくり、片方にぼうだいな数の貧困人民をつくりだした。世界では、約一〇億人がすでに失業しており、約一二億人が生活貧困ライン以下の生活をしており、発展途上国をふくめ、世界で飢餓線上の生活を強いられている人人は数十億に達しているといわれている。

 貧困化は、発展途上国だけではない。先進資本主義国にもおよんでいる。アメリカの失業率は五・七%、日本は五・四%に達している。あのアメリカでさえも、生活貧困ライン以下の人は三四一〇万人、人口総数の三二・四%に達している。この貧富の差は、「同時多発テロ事件」がひきおこされた背景にもなっている。

 資本主義世界は、産業を発展させあらたな市場をつくりだすこともできず、労働者と人民のたえがたい苦難を解決することができない段階にある。資本主義的搾取制度をなくさなければ、決してこの苦難は解決できない。この根本的解決は、社会主義の実現によらなければならないし、社会主義が最終的に資本主義にとってかわることは、歴史的すう勢である。

労働者と人民だけに痛みをおしつける「小泉改革」

 日本社会もどうにもならない末期的症状である。失業、過重労働、少数の「グローバルプレイヤー」への富の集中とその他の企業の倒産、弱肉強食の社会風潮のまんえん、環境問題の悪化など、だれもが未来に明るい展望をいだけない事態となっている。未来をになう子供たちの学習意欲の喪失と学力低下なども大きな問題となっている。

 日本資本主義は、いくら手当をしても経済を回復させることのできない「不治の病」におかされている。政治家、官僚がからんでいる外務省の裏金づくりとその横領などの腐敗の構図、道路公団など特殊法人、医師会、ゼネコンなどとむすびついた自民党内の族議員による政官財のゆ着の構図は、腐敗と汚職にまみれた政治構造の典型である。小泉内閣は自民党内の「抵抗勢力」とたたかうと叫ぶことで国民から支持されている。しかし、小泉のインチキは、暴露されはじめている。医療制度では族議員の圧力で医師会の要求をのみ、道路四公団問題も族議員の要求を一部受け入れて妥協した。「痛みを分かちあう」というのはウソで、労働者と人民だけに「痛み」をおしつけている。

 その高い支持率を背景に、よわいものいじめの「構造改革」を強行しようとしているところに小泉内閣の反動性がある。小泉首相は、自民党内でも岸信介・元首相のながれをくむ派閥に属していた典型的な右翼的人物であり、中曽根、森などの首相経験者、石原東京都知事などの政治ブレーンをバックボーンにしている。かれらは、はやくから日本の戦後の総決算(ねらいは戦後の「民主主義」と「平和理念」への攻撃)をとなえ、靖国参拝、歴史教科書の改ざん、自衛隊法の改正、有事法制化、憲法改悪などをすすめ、反動的な政治体制の確立をたくらんでいた。かれらは、「報復戦争」を絶好の機会ととらえ、そのどさくさにまぎれて「テロ特別対策法」をわずか三〇時間の審議で成立させて、自衛隊の紛争地域への派遣、集団的自衛権の行使を合法化し、アメリカがひきおこす戦争に事実上参戦した。

 小泉内閣の「構造改革」は、「改革工程表」をうちだし具体的に動きだした。政府は、「不良債権処理」で数十兆円の国家財政をつぎこみ、産業再生法などをつくり解雇促進法を画策するなど、銀行や大企業を救済するために「犬馬の労」をとっている。

 昨年の一二月には、竹下元首相の肝いりでつくられた青木建設(中堅ゼネコン)が三七二一億円の負債をかかえて倒産した。これからぞくぞくと大型倒産がすすんでいく。すでに失業者三三〇万人(失業率は五・四%)に達している。労働者は職をうばわれ、賃金もきりさげられ、中小零細企業は倒産に追いこまれ、自殺者も増えている。労働者と人民への犠牲はそれだけではない。患者の負担増による医療制度の改悪、健康保険制度の改悪など社会保障・福祉制度の見直しによるきりすてなどがたくらまれている。日本の構造的不況は、企業倒産と産業の縮小・再編、工場、企業の海外移転による一次、二次産業を破壊し、ぼうだいな失業者をつくりだし、派遣、期間、非常勤、フリーターなど不安定雇用労働者を増大させ、賃金上の差別、雇用問題など身分上の差別もひろげ、貧富の差を拡大している。「構造改革」がすすめば日本は、巨万の富を手にして優雅な生活をいとなむ少数の者と将来に展望がもてないぼうだいな貧困人民が存在する社会になるであろう。

 日本の資本主義は、ぼうだいな国家資金をつぎこんで公共投資をおこなっても、経済を活性化させることもできない。IT産業も、わずか数年で過剰生産になり「ITバブル」は音をたててくずれさった。世界的にそうであるように日本も、社会主義が資本主義にとってかわる全面的な「構造改革」をはからなければたちなおることはできない状態にある。それは、貧富の差などすべての社会における差別の根拠である「生産の社会化と私的資本主義的所有の矛盾」をなくすことのできる社会主義をめざすことである。

新たな発展のきざし

 本誌は昨年の一月号で、二一世紀の第一歩をふみだす労働運動の課題として、つぎの六点を提案した。

@社会主義の展望をもった労働運動の構築
・現代資本主義の分析のなかから社会主義の展望をあきらかにする
・二〇世紀の社会主義の失敗と成功の教訓や、最近の社会主義国の改革の研究

A労働者の要求と政治闘争
・雇用、賃金、民主的権利のためのたたかい
・これと結びつけた政治闘争

B他階級・階層との連帯

C国際連帯

D労働組合活動の強化
・反動的労働組合内での多数派形成
・未組織労働者の組織化

E教育・学習活動
・労働法、労働協約等
・内外情勢、政治闘争課題
・マルクス・レーニン主義

 昨年一年間をふりかえると、停滞していた労働運動に、あらたな発展的なきざしかみえる。それは、まだ少数ではあるが先進的労働者のなかでふるい「物取り主義」の労働運動観をあらため、根本的な社会変革をもとめる社会主義の志向をもつ意識への変化が生まれつつあることである。また、マルクス主義の研究者、知識人、左翼的な活動家のなかで「ソ連邦崩壊の要因と社会主義について」の理論研究がすすめられているなど、人民各層のなかで新たな社会を求めその具体像をつかもうとする意識がつくりだされ、さまざまな模索がはじまっている。

 また、昨年の実践のなかでは、先進的労働者が職場、生産点を基礎にして活動をすすめ、労働者の気分、感情をふくむ意識を大事にしてふかいむすびつきをつくり、よりおおくの労働者と行動をともにするようにし、さらに具体的な要求、闘争課題を政策にしてたたかいをすすめ、労働者の政治思想意識を高めるようにすることが大きな課題になっていることがあきらかとなった。

 労働運動の六つの課題はひきつづき重要なテーマとなるであろう。とくにこんにちの情勢のもとでは、小泉「構造改革」のインチキ性を暴露し、労働者、人民を犠牲にして、独占資本の利益をはかる政府とストライキでたたかえる組合づくりをすすめることが重要となっている。労働組合幹部が、自治労のように数億円の裏金をつくって横領をはたらくようでは、敵とはたたかえない。労働組合とそれを指導する幹部は、清廉潔白でなければならない。こういう意味からも、下層の労働者を組織した労働組合をつくることは、きわめて重要となっている。

 「同時多発テロ事件」と「報復戦争」は、世界の経済危機に拍車をかけ、アメリカ帝国主義の威信をいちじるしく低下させた。労働者、勤労人民の力は相対的に着実に発展し、この力はかならず社会主義をめざして発展していくであろう。

 二〇〇二年を労働者階級と人民の未来へのあらたな展望を切りひらく年にしよう。

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