『労働通信』2002年3月号
一九九五年五月に、日経連が『新時代の日本的経営』という二一世紀の労務政策を発表して以降、日本中のすべての職場で、労働者の下降移動がはじまるとともに、分断差別がドラスティックに強化されてきた。
公務職場にも、正規・非常勤・臨時・派遣・シルバーという階層構造ができあがりつつある。目黒区では、目黒区当局が推進してきたリストラにより、現在、全職員の二二%、六〇〇人弱が非正規職員におきかえられている。
正規職員の三分の一から四分の一の賃金で任用できる非正規職員の大量導入によって、目黒区当局は大幅なコスト削減に成功したと宣伝につとめている。
こうした目黒区当局の攻撃にたいし、目黒区職労は「安易な非常勤の活用をゆるさない」という方針のもとに、非正規職員を目黒区職労とはべつの都区一般という組合(三役は目黒区職労の役員が兼任)に組織し、「非常勤職員制度」の確立によって対抗してきた。その結果、目黒区人事課の非正規職員にかんする労務管理規定は二三区内でもトップに整備されている。
ところがその内容たるや二三区内でも最低の水準である。とりわけ、労基署の内規を逆手にとって、短時間非常勤職員には通勤費が支給されず、社会保険に加入にしているにもかかわらず、健康診断が本人負担というものである。
かつて目黒区職労は、非正規職員を大量に組織し、組合運動の鏡であるかように内外に宣伝してきた。
しかし、五年前に妥結した任用更新回数制限(非常勤職員の契約更新の回数を制限すること)と一職種二報酬制の承認により、年年、非正規職員の組合員数は減少した。現在では、目黒区内の民間福祉施設で労組を結成し、都区一般目黒支部に加入させ、そのかたちを維持するというところまできている。
昨年四月、こうしたじり貧状態の転機がようやく訪れた。皮肉なことに、任用更新回数制限のおかげで旧賃金体系の非正規職員が職場から一掃され、月収で何万円も減額された新賃金体系の非正規職員のみとなったのである。
さらに、非正規職員へのおきかえによって、組織率が低下する一方の目黒区職労の執行委員会において、はじめて非正規職員問題が論議され、「任用更新回数制限の撤廃が非常勤組織化の前提である」という合意がなされている。
ながいあいだ、非正規職員のひとり相撲であったが、やっと目黒区職労としての取組となった。だが、目前の自分たちの利益だけを優先する考え方にたって一職種二報酬制を容認し、非正規職員を採用年度で分断してしまったという問題は古傷となった。
労働者の階層構造にたいして、「既得権をいかにまもるか」という運動は当局に相手にされず、まったく無力である。
「あなたがたの意見は聞きました。しかし、行財政改革の進捗もあり、住民が納得しません」の一言ですべて片づけられてきた。
また、労働者のなかでも、「(正規よりも身分が低いのに熟練した)非常勤にいばられるのはおもしろくない」(正規職員)、「財政難なら、安い非常勤を増やせばいいではないか」(非常勤職員)という、みにくいいがみあいによって労働者同士が分断されているという問題の解決はこれからである。
こうした経験をとおして、組合役員の一部が、「既得権をいかにまもるか」という運動が、もはや無力であることにやっと気づきはじめた。
さいきん、組合結成後、はじめて階層構造の枠をこえた職種別交流会がとりくまれ、労働者の分断策をうちやぶるたたかいの第一歩がふみだされた。
こんご、この認識を全組合員の共通認識にできるかいなかが、明暗を決するだろう。