『労働通信』2002年3月号
小泉内閣の登場いらい、カラスの鳴かない日はあっても、「郵政事業の民営化」がマスコミにのらない日はないほど、郵政三事業の公社化、民営化が話題となっている。
小泉首相は、「民でできることは、民でやらせる」「郵政事業の全面開放が構造改革の焦点」と例の絶叫型演説で宣伝してきた。最近の第一五四回国会の施政方針演説からは「郵政民営化」の文言が消えたものの、昨年一二月に発表された「郵政事業の公社に関する研究会」(総務大臣のもとに設置された審議機関)の中間報告では、小泉首相の強力な圧力のもとで、「ユニバーサルサービスの確保」を条件としながらも郵政事業への民間参入を認める方向をうちだしている。
このもとで郵政事業庁は昨年三月、「郵便新生ビジョン」というリストラ計画を作成して、各労働組合に打診した。最大労組の全逓はこれへの支持を決定している。ここには旧郵政省を残したい郵政官僚と「公務員たる身分」を固守する全逓労組幹部の思惑が一致している。しかしこのようなこそくな方法で、小泉構造改革と対決できるはずはない。
小泉内閣がすすめる構造改革の目玉商品である郵政事業の民営化問題について、その階級的本質をしっかりととらえ、これとの具体的なたたかい方を検討していく必要がある。
郵政事業が公社化=民営化の道をあゆむなかで、職場の郵便労働者にたいして、事業庁当局は徹底した「意識改革」を強要している。
「五年に一回」といわれる人事交流という名の配置転換は恒常的となっている。労働者の人格をも否定するような攻撃、「お客様第一」を口実にした労働者への一方的な処分、「自爆営業」(営業目標を達成するため自腹をきって郵政の商品を買うこと)など、きりがない。
職場では、「正当な理由」のない超勤拒否の撲滅、ミーティングへの参加の強要、氏名札の正常着用、労働者を管理するためだけのレイアウトの変更など、労働者への支配と抑圧が強化されている。そして、これに反論しようものなら、「君は公社へは行けないよ」と末端管理者が労働者をどうかつし、あげくの果てには処分の乱発である。
このような労働者への意識改革と歩調をあわせて、郵政事業庁は、「公社の運営の基本は黒字決算である」という理由で、さまざまな効率化施策を計画、実行している。
「新配達システム」なるものは、「お客様と接する業務は正職員で、そうでない業務は非常勤で」と称して、書留、速達、小包の配達は正職員、それ以外は非常勤の配達という区分で、人件費を浮かせようとしている。それに「正規職員の配達」といっても、かならずしもフルタイムの正規職員とはかぎらず、いわゆる短時間雇用職員がこの業務をになうことになるかもしれない。
郵便輸送にかんしては、一昨年らい、毎年のように運賃の値下げがくりかえされている。日本郵便逓送をはじめとする輸送企業は、この危機を労働者の手当の削減=賃金削減で乗り切ろうとしている。日逓の労働者は、昨年だけで年収が一〇〇万円あまりさがった。それに弘前郵便輸送のように企業として成り立たない会社もでてきている。
保険・貯金にかんしては内務職員が急速に減少している。それに各都道府県にある貯金事務センターが東西のセンターに統合されていく。簡易保険センターも同様である。
郵政民営化のもう一つの目玉は、郵便貯金問題である。現在郵便貯金の残高は二四九兆九三三六億円で最大の金融機関である。
独占ブルジョアジーは、「日本の不景気は郵貯に資金が滞留しているからだ」という口実で、郵便貯金の民営開放をねらっている。
しかし問題はこれだけではない。郵貯の民営化は、金融の再編成をねらった小泉構造改革の中心問題となってきている。
現在、銀行の不良債権が大問題となっている。公的資金を導入してもいっこうに不良債権が減少しない。銀行の職員に対しては「高給取りで国の援助を受けている」といった批判が大きくなってきている。
もし郵貯が民営化になればどうなるだろうか? 銀行の職員が今度は郵便局員の賃金と比較され、非難の声があがってくることは明白である。こうして銀行のリストラがすすめられる。いま郵便労働者がうけている攻撃がつぎには銀行の職員にむくわけである。
郵貯の民営化は、独占ブルジョアジーがその豊富な資金を自由につかうだけでなく、銀行、生保、損保を含む金融機関を再編する起爆剤となる可能性がある。
以上のように郵政事業の公社化・民営化問題は「国営ならばいいが民営ならばいけない」という問題ではなくなった。どのような経営形態をとるにせよ郵便(関連)労働者には徹底した抑圧と賃金低下がもたらされる。
このような「勝ち組と負け組」をつくりだす小泉構造改革と対抗するためにはどうすればよいだろうか?
いままでは管理者との衝突、突き上げでことたりていた。しかしいま労働者にたいせつなことは所属の組合の違いはあるが、労働組合を民主的に運営し、組合員の意志の統一をはかることである。個個人の「戦闘的な行動」だけでは小泉構造改革とは対決できるはずがない。このためには分会、支部の良心的役員の果たす役割が大きくなる。労働者の集団的な力で問題を解決していく気持ちをいままでよりも強めて、職場の労働者に接していこう。