未知の航海に乗り出した発電労働者

韓国民主労総ホームページ(英語版)より

『労働通信』2002年5月号

 電力民営化に反対して四月二日に予定されていた韓国のゼネストは中止になったが、世界的な規模で公共部門の民営化が強行されるなかで、韓国の発電労働者が民営化反対をかかげて一カ月以上ものストライキ闘争をたたかった意義は大きい。しかもそのたたかいは、労働者や家族の団結、社会全体の支持、国際連帯などを基礎にしながら、「ネット先進国・韓国」にふさわしく、インターネットをも有効活用したユニークなたたかいでもある。  [資料・発電ストの経過]
 本誌は、この電力労働者のたたかいについて、韓国の民主労総の英語版ホームページに掲載された三月六日付けのレポートを翻訳・転載する。

  五〇〇〇人をこえる発電労働者は未知の航海にのりだした。――二〇〇二年二月二六日、ストライキの二日目の夜――

ストライキのあらたな手法

 公共事業の民営化に反対して連帯ストライキをたたかっている民主労総傘下の鉄道、発電などの労働者の合同集会の終了後、発電労働者はしずかにソウル大学のキャンパスをあとにした。かれらは、五人〜一〇人ずつのグループにわかれて、ソウルから二〜三時間以内の近郊地域に分散していった。

 ソウル国立大学周辺に配備されていた機動隊は、キャンパスのなかにストライキ労働者がだれ一人いないのをみてショックを受けた。

 これは、異常なストライキ戦術である。ストライキ中の労働者は、自分たちの職場に陣どるのが普通である。これは、大部分の製造業の労働者にとってはもっとも代表的なやりかたである。また、さまざまな理由で職場を確保できない場合は、大学のグラウンドのような、安全でひろびろとした公共の場所に集結することもある。公共事業の労働者もこのようにしてたたかいをはじめた。約一万人以上の鉄道労働者は、ソウルの建国大学をはじめとする全国五つの大学に結集した。また、発電とガスの労働者はソウル国立大学にあつまった。ごく最近も、韓国テレコムやソウル地下鉄の労働者は、明洞聖堂にあつまった。一九九四年の鉄道労働者のストライキでは、機動隊に排除されるまで、労働者は鉄道車庫に結集していた。ごく最近の銀行労働者のストライキのさいは、労働者はソウルの下町にある延世大学や、主要銀行の休養センターなどに結集していた。

 ストライキの期間中、一つの場所に集まる理由は、ストライキの隊列を維持し、機動隊の攻撃をかわすためである。 

 このようにストライキ中の労働者が職場や公共の場所に籠城する場合、でてくる結果はつぎの二つである。一つは、交渉によって紛争が解決し、職場へ復帰することであり、いま一つは、機動隊の襲撃によってむりやり仕事に復帰させられることである。後者のケースは、昨年はじめの大宇自動車のストライキのときのように、警察の暴力をともなう。

 ストライキにはいった労働者にとって、たんに「職場から離れる」だけという戦術は尋常ではない。

影を追う警察 

 しかし、労働者はストライキを継続するためにあえて前例のないコースを選んだ。五三〇〇人をこえる労働者が、五人〜一〇人のグループにわかれてストを継続している。 

 警察は、ストライキ労働者を逮捕するために捜査網をはっているが、まだだれも捕らえることができない。三月五日早朝、警察は、ストライキにはいっている発電労働者やガス、鉄道、電力の組合指導者を見つけるために、一万三五二人の捜査員を動員して、ソウルから二〜三時間以内の近郊地域にあるモーテル約一万二〇四件をいっせいに捜査した。この過程でかれらは、韓国ガスの労組の委員長と副委員長を逮捕した。ところが、ストライキ中の発電労働者はだれ一人見つけることができなかった。警察は、逮捕状がだされていた二四人の発電労組の指導者をつきとめたと発表したが、そのうち一〇人は明洞聖堂に結集していた人人であり、一人は民主労総の全国本部の「戦況司令室」につめていた人である。警察は、民主労総の事務所が入居しているビルのすべての出入り口をガードして、なんとか手配中の「お尋ね者」を逮捕しようとしている。

 五つの発電会社(韓国電力および発電会社の子会社)は、ストライキ中の労働者にたいして職場復帰するように警告(むしろ最後通告)をだした。ストライキから八日めの三月四日、経営者は組合の四七人のリーダーを解雇し、二五二人の組合リーダーおよび「職場委員」にたいする処分を強行した。かれらは、「労働者はたんに非合法ストをやっているだけでなく、国家の法と秩序システムそのものの破壊者となっている」とみなし、したがって「企業から永遠に追放することもふくめてできる限り強力な方法で罪人を罰するだろう」と宣言した。

 政府や経営者によるはげしい警告やおどかしにもかかわらず、ストライキの一〇日めにあたる三月五日(発電労働者は二月二五日にソウル国立大学に結集し、その日の夜勤から仕事にはでていないが、公式のストライキ宣言は二月二五日の早朝からとなっている)には、経営者側の数字では、組合員労働者のわずか七・一%しか職場復帰していない。組合によると、合計で二一八人の労働者がストライキに参加していない。組合の調査では、そのうち一三九人はもともと組合の決定があったにもかかわらずストライキに参加していない労働者であり、五四人は病気で、一六人は家族の事情で、六人は子供の出産でストライキに参加していない。ストライキ開始いらい、労働者の隊列を破壊して、職場にもどった労働者の実数は片手の指の数にも満たない。

インターネットを情報基盤にしてストライキ 

 組合の「戦況指令室」のスタッフのリーダーは、分散しているストライキ労働者との日常の連絡、接触をおこなっている。明洞聖堂に設置された組合の「戦況司令室」に配置された約三〇人の指導者と支援チームおよび、民主労総の全国本部や公共連盟(民主労総に加盟している公共部門の組織)は、携帯電話や組合のホームページをつうじて、潜水艦のように身を隠しているストライキ労働者のすべてのグループと二日に一回の連絡をとっている。

 組合は毎日、ストライキ中の労働者にたいして、グループ討論をおこなうための情報や資料、交渉の進展状況についてのニュースなどを組合のホームページをつうじて提供している。そして戦況司令室は、携帯電話を通じて、ストライキ労働者の状況について、だれが仕事に戻ったかということもふくめて把握することができる。ストライキ労働者も、ブロードバンドでつながったインターネットカフェ(通常はネットゲームなどに使用)などから、ネット上の掲示板をつうじてたがいにメッセージのやりとりをすることができる。

 メディアは、発電労働者が世界的に名高い携帯電話とインターネットのインフラを利用して、大学のキャンパスとおなじような安全性をかちとりながらストライキを展開していることをとらえてきた。

ホームページ閉鎖の脅し

 政府も、労働組合運動による現代的テクノロジーの有効な利用を黙ってみているはずはなかった。三月四日、警察は情報通信部傘下の「情報通信倫理委員会」にたいして、発電労働組合のホームページを、 IPアドレス(訳注・インターネット上のコンピューターのアドレス)もろとも閉鎖することを要請する申請書を提出した。かれらは、「組合のホームページは、闘争指令の発動や、逮捕状がでている組合指導者の隠匿、非合法ストの継続などをふくめ、非合法活動をそそのかすためにつかわれている」などといっている。

 これにたいして民主労総は、みずからのホームページのディレクトリ(一部)として、発電従業員組合のホームページのミラーサイト(鏡[ミラー]のように、元のホームページの内容と同じ内容のホームページ)をたちあげた。

  しかし警察は、ストライキ労働者がこのページにアクセスするのをふせぐため、民主労総のホームページまで閉鎖しようとするかもしれない。そのため民主労総は、警察が民主労総のホームページまで閉鎖するという極端な行為をとる場合にそなえて、海外にミラーサイトをたちあげる方法をさがしている。

 民主労総は、組合のホームページを閉鎖しようとする政府の策動に反対するキャンペーンを展開した。たとえば、大統領宮殿青瓦台や国会、産業資源部、警察本部をはじめとする政府のホームページを一斉行動によって麻痺させることもやられるであろう。

何がストライキを生み出したか

 先例のない「ゲリラ的」なストライキ戦術は、発電労働者が、みずからの頭上に機動隊の襲撃がおそいかかるという驚異や危険を感じることなく、ストライキを継続することを可能にした。それは、通信手段の効果的な利用とは別に、労働者同士あるいは労働者と指導者とのあいだの友情と規律、信頼関係によってもたらされたものである。同時に、このユニークな戦術を継続するのを可能にしたもう一つの重要な要素は、家族の心からの支援であった。 

家族もともにたたかう

 本日三月六日、全国三〇カ所の発電所のストライキ労働者の家族約一五〇〇人がソウルに結集して、「発電所の民営化を阻止するためのストライキを支援する家族集会」が開催された。ソウルの下町の公園での集会のあと、家族たちは子供たちとともに、組合の指導者たちにたいして、愛する家族とともにストライキの全期間をたたかう決意を表明するために明洞聖堂にむかって行進した。しかし、かれらは大聖堂の入口に非常線をはっていた機動隊によって行進を阻止されてしまった。 

 家族も、独自のたたかいをになってきた。「家族特別対策本部」が、発電所ごとに組織された。家族たちも全国で抗議集会をひらいてきた。

 三月二日には、六〇人の先進的な家族グループがソウルにやってきて、ストライキ労働者を支援するデモをおこなった。同日、おなじような抗議行動や支援集会が全国一〇カ所の主要都市でとりくまれた。それぞれの集会には一〇〇人〜二〇〇人の家族が参加し、民主労総組合員の支援をうけた。この集会は、民主労総がソウルの下町にある韓国電力本社で開催した抗議集会と同時におこなわれた。

一般大衆も支援の手

 ストライキが維持できたもう一つの重要な要素は、一般大衆の支援であった。おおくのストライキ労働者のグループは、宿泊しているモーテルや旅館の主人から、近隣の警察の動きについてアドバイスをうけた。なかには宿泊代の特別割引をしてもらったケースもある。しかし、それぞれのグループが必要とする資金は平均して二〇万ウォンであると推測され、それは特別徴収によって集められた組合のストライキ基金をどんどんとほりくずしている。そのため、民主労総は、傘下の組合員にたいして、発電労働者を支援するための緊急カンパをよびかけている。また民主労総は、ソウル近辺でストライキ労働者に泊まるところを提供するボランティアも組合員によびかけている。

労働者の連帯行動

 政府の頑強な民営化政策に挑戦する発電労働組合のメンバーの強固な決意とならんで、ストライキをささえた重要な要素は、労働組合運動によって全体としてうみだされた連帯であった。民主労総レベルでの全面的な政治的・戦略的調整とは別に、民主労総傘下の他産業の労働組合がストライキの二日めに連帯ストにたちあがった。二月二六日の連帯ストで主要な役割をはたした韓国金属労連は、三月五日の緊急執行委員会で、もし警察が電力労働組合の指導者を逮捕したり、あるいは二月二六日の連帯ストの件で民主労総の指導者を逮捕した場合は、再びストライキにはいることを決議した。韓国電力の下請け企業の労働組合もストライキ労働者への支援を表明し、ストライキで不足となった発電所の操業要員の穴埋めに組合員を派遣することを拒否することをあきらかにした。

民営化に対抗する社会的同盟の形成

 ストライキが継続できたもう一つの側面は、世論の支援の強さであった。主要な公共機関の労働者のストライキは、政府による民営化政策全体にたいする社会的論争や関心をあらたによびおこした。約一〇〇〇人の著名人が、発電労働者のストライキにかんして、政府にたいして組合が提起した問題に真しに交渉を開始するようよびかける共同声明を明日(三月七日)発表する予定である。

国際連帯

 気づきにくいかもしれないが、現在の公共部門の労働者のたたかいをはじめ韓国の労働運動を前進させている要素として、非常に貴重で高く評価されるべきなのは国際的な連帯である。世界の労働組合運動は、ストライキ労働者にたいする政府の弾圧のきざしをふせぐため、すみやかに動きだした。ICFTU(国際自由労連)が金大中大統領にたいして抗議の手紙をだしたのをはじめ、ITF(国際運輸労連)ICEM(国際化学エネルギー鉱山一般労連)UNI(ユニオン・ネットワーク・インターナショナル)IMF(国際金属労連)PSI(国際公務労連)なども同様の手紙をよせた。これらの国際組織の頭文字は、韓国の労働組合員のなかでは通り文句になった。 

 南アフリカ労組会議(COSATSU)は、労働組合のナショナルセンターでは先頭にたった。さらに、南側世界では、インドネシアのFNBI、全インド労働組合会議(AITUC)、SIGTUR(グローバリゼーションと労働組合権についての南半球イニシアチブ)の労働組合フォーラムなども抗議行動をとりくんだ。イタリア労働総同盟(CGIL)フランス労働総同盟(CGT)も、韓国民主労総にいちはやく連帯を表明した。三月六日には、オランダの労働組合総同盟であるFNVが、ハーグの韓国大使館に委員長を派遣し、傘下の組合委員長と委員会のメンバー全員の署名いりの金大中大統領あての抗議文を手渡した。

 個個の労働組合や活動家も、あいついで韓国にむけて連帯のメッセージや抗議文を送った。これらのおおくは、韓国の人民闘争に貢献するために開設された英語のウェブサイト、www.base21.org に掲載されている。 LabourStart のサイトも、現在のたたかいに焦点をあてて最新情報を提供する点で非常に貴重である。

目次へ戻る

この記事のTOPへ戻る

この記事へのご意見、ご感想をメールでどうぞ