たかい方を忘れた労働組合

京都府 電機産業労働者
小林 栄太郎

『労働通信』2002年5月号




 今春闘は、長引く不況による業績悪化を理由にベースアップ要求を見送る組合が続出した。そして、交渉の焦点はもっぱら「雇用の維持」「賃金体系の維持」に終始した。一方、経営・資本は、業績の見通しが立たないことを理由に賃金体系の維持はもちろんのこと雇用の維持に関しても困難であることを主張し続けた。大手労働組合は、春闘の回答結果として「雇用の維持」「賃金体系の維持」を勝ち取ったかのようにいっているが、実際には、会社からの逆提案である定昇カット・凍結、賃金改定時期の延期、時間外賃金のカット、生産点での賃金・各種手当のカットなどなどさまざまな労働条件の改悪を春闘とは切り離し、闘うことを避けた。組合側は会社への協力を誓い会社の逆提案をほとんどそのまま受け入れてしまった。

 このような状況に職場の組合員は、あきれ果てている。組合員のなかには「春闘回答の後に組合員の声も聞かず会社の逆提案を受け入れるとは組合員を馬鹿にしているとしか思えない」と組合の御用幹部への怒りをあらわにするものも少なくない。大手労働組合は、莫大な費用と労力をついやして春闘を行ってはいるが、いまや単なる年中行事化してしまっている。今春闘では、末端組合員の意見をくみ取ろうという意志がまったくなく、ぶなんに交渉を終わらせみずからの地位を守ろうとする御用幹部の体質がいっそう鮮明になった。

 今後、ますます厳しくなる情勢のなかで経営・資本はさらにきびしい労働条件を突き付け、雇用にも手をつけてくるであろう。さらに、小泉内閣の「構造改革」により医療や税制の改悪など労働者の生活をおびやかす政策が進められているなか、このような闘いかたで労働者の生活を守れるはずがない。しかも、組合の御用幹部は、先進的な意識をもった労働者が行動を起こすことを恐れ、組合員への情報公開を制限し、密室のなかで事をすすめている。末端組合員には事後報告のみを行い意見をのべる機会も与えないようにしている。さらには、経営・資本の忠実な広報係と説得隊の役割を演じ、妥協がなければさらに悪い結果になるというような言いかたで組合員を納得させようとしている。彼らは大衆運動による闘いをわざと避け、逆に握りつぶそうとしている。

 このような状況を打開しない限り労働者に安心した生活を保障することはできない。そのためにも、大衆に依拠した闘う労働組合の再構築が最重要課題となっている。もちろん、それは非常に困難な道のりではあるが労働者ひとりひとりが意識的に行動することが大切であり、意識あるものがそれらを組織し、労働組合を御用幹部の手から取り戻すことが絶対に必要である。

 すでに組合役員のなかにも意識的に御用組合の体質を変えようとするものが現れており、まだまだ少数で公然とした活動を展開するまでにはいたっていないにしても着々と活動の輪を広げている。また、職場組合員のなかにも労働組合を自分たちの手に取り戻すことを願うものたちの輪ができつつある。これら意識ある労働者の活動が続くかぎりいつまでも御用組合が存続することはないであろう。

 団結した労働者の行動が私たちの生活を守る最も有効な武器となることを忘れてはならない。

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