骨」と「皮」だけになった職場では
連日深夜までの激務がつづく

大阪府 NTT労働者
松村 健一

『労働通信』2002年5月号



 労働者・人民に「痛み」だけを押しつける「小泉の構造改革」が、NTTの職場でどのように具体化されているのか、簡単に報告する。

 五〇歳定年制の導入を柱とするNTTの「新三カ年計画」の攻撃がいま、具体化されて電通労働者におそいかかっている。それは、戦後、長期にわたる電通労働者の輝かしいたたかいをとおして勝ち取ってきた、多くの成果と教訓のうえに築かれたこんにちの労働条件を、あとかたもなく破壊し、労組の解体と労働者の行動や階級的意識をもふくめ、すべて根底から崩していく攻撃として具現化されている。

 NTTはこのかん、「中期事業計画」をすすめてきた。これは九八年(東西会社に分割再編時)から二〇〇二年までのあいだ、毎年約一万人以上の労働者の首切りをおこない、一〇万人体制にするというものであった。これ自体、毎年一万人以上の会社をつぶしていくのとおなじぐらいに、とほうもない大「合理化」攻撃であるが、その途上である二〇〇一年四月、「新三カ年計画」が突然打ち出された。

 これはNTT東日本・西日本一〇万人のうち六万人、NTT・ME六万人のうち四万人を解雇し、新たに立ち上げる「地域別子会社」(資本金一〇〇〇万円、赤字化は明らかでいつつぶしても本体には何ら影響がでない。最初から首切りを見込んだ子会社)に業務もろとも一五%から三〇%の賃下げのもとで再雇用するというものである。

 本体に残るのは、管理・企画戦略・設備構築・大口法人向け営業のみである。

 この時代、「超優良企業」の部に属するNTTによる三〇%もの賃下げと五〇歳定年制の攻撃は、戦後の労働運動史上からも例を見ないほどの規模・内容・質をもったものである。五年で一万人削減を打ち出した郵政「合理化」とくらべてみても桁違いのものであり、また、先の行政改革で中曽根が打ち出した三公社の民営化、とりわけ国鉄分割・民営化攻撃をもはるかにしのぐ規模と内容である(国鉄の分割・民営化でも賃金には手をつけていない)。

 五〇歳に達した労働者は「満了型(六〇歳定年)」・「一時金型」・「繰り延べ型」の三つから選ぶ。「満了型」は本体に残り「管理・企画・大口法人」に特化される。また、全国「配転」が条件である。東・西・MEの仕事は、すべて新たに立ち上げる子会社にアウトソーシングする。

 「満了型」を選んでもできる仕事がなく、全国配転をちらつかせ不安をあおり、「一時金型」を選択するよう追い込み、半強制的に「辞職願い」を書かせている。

 三〇年あまりにわたり、こんにちの電気通信事業を現場で支え築いてきた五〇歳をすぎた電通労働者が、いまさら企画・管理や大口法人を相手に仕事ができるほどあまくはない。圧倒的な労働者が選びたくても選ぶ事ができない「満了型」を、形式的につくることで「退職強要」の批判を回避している。

 「新三カ年計画」の最も大きな攻撃ポイントは、賃金の大幅減額と五〇歳定年制の導入である。

 賃金の減額幅は、
 一五%カット=東京
 二〇%カット=大阪
 二五%カット=茨城・埼玉・栃木・群馬・山梨・京都・滋賀・兵庫・愛知・奈良・広島
 三〇%カット=その他の地域
となっている。

 これにともない、扶養手当は減額、都市手当(東京・大阪は減額)は廃止、離島・寒地手当はすでに廃止されている。これまで以上の労働強化のなかで、少なくても一〇万円から二五万円ぐらいの減収になることは明らかである。五〇歳代は教育費・ローンなど最も「金」を必要とする年代である。これまでの生活設計が根底から破壊されてしまうのである。

 東・西会社の六〇%以上、ME会社の七〇%以上の労働者が五〇歳以上といわれているなかで、新たに立ち上げる「地域別子会社」を選択した五〇歳以上の労働者は、意に反する「退職願」、「誓約書」を書き、賃金カットのうえ「雇用通知」を受け取るのである。

 昨年だけでも、つぎつぎとおそいかってくる賃下げと「合理化」攻撃にたえかねた一万六〇〇〇人あまりの労働者が、苦しみぬいたあげく「希望退職」という名のもとに首を切られている。

 新たにたちあげる「地域別子会社」は地域別に「設備系三三社」、「営業系三三社」、「共通系」の子会社である。そこでは、労働者派遣・在宅看護・宅配・チケット販売・警備保障・住宅販売・損害保険代理業務など二〇あまりの業務をかかげ、通信業務とは何ら関わりのない分野にアクセスし、新たな業務拡大をもくろんでいる。さらに問題は、今後、直接子会社に採用される労働者が、極端な低賃金体系に組み込まれ、さらには徹底した評価・成績主義により選別にかけられることだ。これにより本体から出向・再雇用された労働者は、現場管理者の判断一つでいつでも首切りのうき目にあわされることになるのである。

 「超優良企業」の部に属するNTTが打ち出した「度外れた」攻撃を、何の「抵抗闘争」を対置することもなく受け入れたNTT労組中央の裏切りは、まさに前代未聞である。いかなるいいわけをしようとも、現場の労働者は労組の対応に失望し、愛想をつかし「何一つ信用できない」と怒りをあらわにしている。五月からスタートする新たな「合理化」攻撃に向けた準備が大詰めを迎えている。

 これまでのたびかさなる首切り攻撃で「骨と皮」だけしか残していない職場では、連日深夜まで激務がつづく。どの労働者も疲れはて覇気がない。資本の計画性のない、無責任な対応に現場労働者はいつも振りまわされている。また、この場にいたっても何一つ労働者には明らかにされていない。ただ、ハッキリしていることは、いつつぶされるかわからない「地域子会社」にアウトソーシングされ、月額一〇万円以上の賃金カットで確実にこれまでの家庭生活が破壊されることだけである。

 職場の内外を問わず、労働者が寄れば激論を飛ばしている。何の責任も無いわれわれに犠牲を転嫁してくる資本にあらゆる形態で抵抗がはじまっている。これまで比較的冷静にかまえていた電通労働者も、ここにきて、この「怒り」をどこにむけ、どのような形で発信すべきか、こんにちの経済的社会状況のもとで、けっして特殊ではない状況のなかで、それだけに、新たなより強い怒りが激論を導くのであろう。激論した後の労働者はどの顔も高潮し明るい。

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