パレスチナ問題とは何か

『労働通信』2002年5月号


 パレスチナでは、イスラエル政府による弾圧・虐殺が激化している。その原因、解決策を考えるために、パレスチナ問題の基本的な事実と観点を明らかにしていきたい。

パレスチナ問題の起源

 パレスチナ問題の起源は、遠く中世ヨーロッパでのユダヤ人差別にさかのぼる。中世の封建社会は領主の農奴への支配を軸とした体制であり、この体制を維持するためヨーロッパでは、利子や商業利潤の追求はキリスト教徒にあるまじき悪徳とされていた。しかし、封建社会といえども、実際には金融も商業活動も必要だった。そこでヨーロッパの封建支配階級は、これらの仕事を非キリスト教徒=ユダヤ人にになわせ、差別し賤民視しながらも一定数のユダヤ人を必要とし続けたのである。

 これが、ユダヤ人差別の起源であり、また四散状態にもかかわらず「ユダヤ人」なるものが存続し続けた理由でもある。つまり、この中世ユダヤ人は、すでに民族というより社会身分であり宗教集団にほかならなかったのである。

 また、近世近くになり身分の固定がゆるんでくると、相当量の「ユダヤ人」「非ユダヤ人」の入れ替えがあっただろう。現に、世界各地の現代「ユダヤ人」のほとんどは、現地の「非ユダヤ人」と同じ身体的特徴を持っているか、近代以降に「ユダヤ人」が数多く移住してきた地域の人人の特徴を持っている。文化・習慣においても、それぞれの地域の他の人人とほとんど変わらない――ただ一つの要素、ユダヤ教ということをのぞいては。

 こんにちのイスラエルにとっても、「ユダヤ人」の定義はやっかいな問題であり論争にもなっている。結局、宗教に依存せずには「ユダヤ人」を定義することはできず、イスラエルでのユダヤ人認定には聖職者が主要な力をふるっている。

資本主義とシオニズム

 資本主義になっても、ユダヤ人差別はなくならなかった。資本主義はたえず、人人の不満のはけ口を必要としてきたからである。

 当然、ユダヤ人は差別からの解放を求め続ける。一九世紀、各地で発展する民族独立運動の刺激を受け、ユダヤ人のあいだでも「民族国家」を求める運動が生まれた。シオニズム運動である。しかしシオニズムは、重大な問題をはらんでいた。かれらが自分たちの「民族国家」を作ろうとしていた地には、先住者=パレスチナ人がいたのである。

 こんにち、パレスチナ人を追い出すか隷属させてユダヤ人の排外的利益を強化しようとする人人は「シオニスト」と呼ばれている。

パレスチナ人にとっては「宗教紛争」ではない

 シオニスト侵入以前のパレスチナは、ユダヤ教徒も住む多宗教共存社会であった。けっしてユダヤ人は排除されてはいなかったのである。

 またこんにちのパレスチナ解放運動も、ユダヤ人一般の排除をめざすものではない。たとえば、PLOのパレスチナ国民憲章第六条である。

 「シオニストの侵略が始まる以前にパレスチナに正常に居住していたユダヤ教徒は、パレスチナ人とみなされる」

帝国主義こそ問題の根源

 パレスチナ紛争の重要な要因であり、その解決を妨げているのは、帝国主義の世界支配である。欧米のブルジョアジーは、はじめはシオニズム運動に冷淡であった。しかし二〇世紀初めアラブ民族運動が盛んになったとたん、態度を豹変させ、以後いまに至るまで、シオニズムを強力に支援し続けている。イスラエルは、中東地域における帝国主義のくさび、橋頭堡なのである。

 世界の反帝闘争を前進させ、これと結びついてパレスチナに共存社会をうち立てる以外、紛争解決の道はない。

 

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