『労働通信』2002年9月号
小泉内閣がすすめる構造改革の一環として、じゅうらいから財政赤字が問題視されていた健康保険の改悪が通常国会で成立した。
健康保険法の問題は、労働者やサラリーマンが日常的に医療機関にかかる上で、欠くことのできない問題であり、勤労者への負担がいっそう大きくなることはまちがいない。
健康保険法の改悪が問題化された当初、小泉首相は「勤労者は負担が増える、医療機関は主収入が減る、政府は医療改革をすすめるから、三方一両損だ」とまことしやかに宣伝した。
しかしこれはまっかなうそであることがすぐにわかった。たしかに医療機関には、診療報酬が減少となるので収入が減る。しかし、被保険者である勤労者は窓口では負担が二割から三割となり、その上保険料も上乗せで負担させられる。
高知県の橋本知事は、健康保険の「改正」は、「三方一両損ではなく、一方二両損(被保険者である勤労者の負担が大きい)だ」と、改悪に反対した。
結局、構造改革と称しておこなわれる医療改革は、勤労者に負担をしいるだけのものだ。
しかもこの医療改革は、財政的には五年間しかもたない。つまり五年後には再度負担率や保険料がひきあげられる可能性があるということだ。それもそのはず、医療問題の抜本的な改革を先送りした以上、必然的な結果でもある。
医療問題の根本的な課題は、高額な医療機器や薬品の問題である。医療機器メーカーは、MRIやCTスキャンなどの高額医療機器を病院などに販売してきた。当然、病院はその経費をまかなうために検査漬け医療となる。また医薬分離になってからは、薬局はその経営を維持するために(もちろん病院もそうだが)必要以上のクスリを供給してきた。老人保険にかかっているお年寄りが、何十種類もの薬を持ち帰るのをみたことがある人もおおいと思うが、このような高額医療機械、薬品、不必要な検査にたいする費用が医療保険制度を圧迫している根本的な原因なのである。
しかし、小泉首相は、この問題には触れようともしない。
根本的な問題にはなに一つ触れず、小手先だけで問題を解決し、しかも費用の負担は勤労者に押しつける。小泉流改革とは独占資本に奉仕し、労働者の生活を破壊するものであることを医療改革が端的にしめしている。
もう一つの問題は、健康保険料の徴収の方法が変わることだ。
現在健康保険料は、毎月の総収入額によって、保険料が決定されている。しかし来年度からは、ボーナスをふくむ年収を基準として、保険料を設定することになる。ここに大きな落とし穴がある。
たとえば毎月総支給額が三〇万円、ボーナスが年間一〇〇万円の労働者がいるとする(図参照)。中小企業労働者が加入する政府管掌健康保険の場合、現行ではこの労働者の保険料は毎月の三〇万円の八・五%を事業主と労働者が折半しておさめている。もちろん現在でも、ボーナス(三カ月をこえるごとに支払われる賃金)からも保険料は徴収されるが、それはボーナス分の一%(労働者負担分は〇・三%)である。
しかし年収方式になればボーナス分も含めて徴収される。つまり年収四六〇万円にたいし保険料(あらたな保険料率は八・二%)がとられるということだ。この労働者の場合、年間で三万円以上も保険料がひきあげられることになる。
いままでと同じ年収でも、保険料が上がるので、とうぜん可処分所得は減少する。こうして一般勤労者をペテンにかけながら、保険料の負担が増加していくのである。小泉首相の絶叫にはもうあきあきしているが、こういうぎまん的な手法にだまされないように、私たちも彼のいう「改革」の中身をじっくり検討していく必要がある。