『労働通信』2002年9月号
坂口厚生労働大臣は、求職者給付(失業保険)をはじめとする雇用保険の掛け金の比率を現在の一・二%から、一・四%にひきあげること、さらに求職者給付の内容についてきびしい制限をくわえることを柱にした雇用保険法の改悪を表明した。
現在の失業率は、およそ五・六%。失業者は三五〇万人といわれている。しかしこれは公共職業安定所に出頭し、失業の認定をうけて職を探している失業者だけの数字であり、じっさいはこの倍以上の失業者がでていると思われる。
失業が増加している原因は、企業がすすめるリストラ「合理化」によるものや、海外への生産拠点の移動による工場や国内生産拠点の閉鎖によるものがおおい。また露骨な首切り、解雇や「自主退職」と称するもの、企業倒産によるものなど多種多様である。しかしこの根底に流れているのは、小泉流「構造改革」による産業の再編である。
小泉首相はかつて中堅ゼネコンである青木建設が倒産したとき、「これは構造改革の成果だ」と誇らしげにしゃべっていた。このように経済のグローバル化、構造改革とデフレ経済が、現在の失業者の増加の大きな原因である。
しかし政府はこの失業者の増大にたいして、具体的な対策をたてようともしていない。それどころかその負担をさらに事業主と労働者に押しつけようとしているのである。
雇用保険の負担率は、業界、業種や期間をさだめておこなう事業や、そうでない事業によって複雑にことなるので、いちがいにいくら値上がりするとはここでは断言できない。しかし負担率が上昇するということは、当然雇用保険料も上昇するということになる。そうなれば、いまでも苦しい経営をしている中小・零細企業などはいっそうくるしい経営に追い込まれることになる。また事業主と同様に保険料を払っている労働者もおなじことになりかねない。
問題はそれだけではない。雇用保険の中心的な給付である求職者給付(いわゆる失業保険)について、「自主退職」の場合などはいっさい給付をおこなわないという案が浮上している。つまり自分のつごうで会社をやめた労働者には、失業保険をだしませんということだ。いまでも労働者自身の責任で解雇された場合や、「自主退職」のばあい、給付制限があるわけだが、これからはその条件をもっときびしくしようということだ。しかも職場での「いじめ」や窓際への追い込みなどに嫌気がさして「自主退職」すれば失業保険の給付はまったくなくなる可能性もある。
小泉流「構造改革」と経済のグローバル化で生産拠点がどんどん海外に移動している。国内では産業の再編、規制緩和による企業間の競争が激しくなり、企業倒産の件数はうなぎのぼりである。そこにデフレ経済がのしかかり、「安ければそれでいい」というデフレスパイラルによって企業収益はもちろん、労働者の賃金も低下している。
一部の経営者は「簡単に労働者の首を切るな」と叫んではいるが、実際には日産や松下電器のように、企業収益があがらないので労働者を大量に解雇し、その実績で株価を上げることにやっきになっている経営者が大半である。
この結果、大量の失業者が生み出されているのである。これにたいして政府は、「雇用のミスマッチがある」とはいっているが、具体的な失業対策といえば、警察官を増やすとか、補助教員を増やすとかというものでしかない。とりわけ中高年層にたいして、どのように仕事を確保していくべきかということについては、ほとんど無策である。
失業問題を個個の労働者の努力だけに押しつけるのは不可能だ。小泉内閣は早急に失業問題について対策を講じるべきである。