『労働通信』2002年9月号
「構造改革」の名のもと、あらゆる職場でリストラ「合理化」や賃金の切り下げ、解雇、倒産などがあいつぐなか、「労働通信」のホームページにもときどき、職場での労働問題をどう解決したらいいのかを相談するメールがはいってきている。
相談メールの件数としては、二〇〇〇年八月にホームページを開設し、同年一一月にはじめての相談メールがよせられたのを皮切りに、今年の八月初旬までで三七件となっている。男女の比率では、およそ三分の一が女性で、労働組合がない職場の労働者からの相談がおよそ八割程度をしめている。在日外国人労働者からの相談もあった。
労働相談メールでのワースト四位はつぎのようなものである。
- 第一位 むちゃくちゃな長時間労働や時間外・休日労働の割増手当がつかない問題……九件
- 第二位 転職・退職時のいやがらせについて……八件
- 第三位 仕事上のミスを理由にして「損害賠償」を請求された件……七件
- 第四位 賃金の未払いや賃金カットについて…六件

相談件数全体がそれほどおおいわけではないので、これがそのまま世の中の労働問題のすうせいを反映しているとはいえないだろう。だが、この相談内容をみて一つの特徴といえるのは、経営者が労働基準法のイロハも知らず、あるいは意識的に無視して、でたらめな仕打ちを労働者にあたえていることである。その例をテーマ別にあげてみよう。
労働時間関係
- 私の会社では、時間外手当や休日出勤手当がいっさいつきません。しかも会社の役員が、「手当がつかないのは当然だ」といいます。こんなのって、ありですか?
- キリスト教系の保育園ですが、毎日一二時間労働で、日曜日にはミサへの出席が強制されるので、まともに休めるのは土曜日だけです。
- 毎日、朝の九時から夜の〇時ごろまでの仕事がつづいています。「年俸制」を理由に時間外手当はいっさいつきません。休みも一〇日に一回ぐらいしかありません。
- 営業マンですが、六時すぎに帰社してからの事務処理(毎晩九時ごろまで)は残業としてカウントされません。
転職・退職時のいやがらせ
- 以前の会社をやめるさいに「競合他社には三年間は勤務しない」という誓約書を書かされました。サインしなければやめられないと思ったのです。でも、こんなことは法律的に通用するのですか。
- 退職の意志があり、会社に迷惑をかけることを懸念して退職希望日の約一カ月半ほど前に上司に相談しました。正式に退職願いをだしたのではなく、「来月末でやめたい」といういうことを話しただけなのですが、それから数日後、その月の月末で辞めるようにとの命令を受けました。自分で退職すると口にしている以上、退職時期は会社に決める権限があるというのです。
- 今月で職場を辞めることになりましたが、先日、先月分の給料をもらうと、いつもより六万円もおおくひかれていました。会社に問い合わせたところ、会社が借り上げて住んでいたアパートの不動産屋から請求がきたとのことでした。ところが、不動産屋に聞いてみると、「請求しておりません」とのことでした。
損害賠償請求
- 教えてもらっていない仕事のミスを理由に五万円もの損害賠償を請求されました。この会社ではこんなことが当たり前になっており、なかには二〇万円も損害賠償させられた社員もいます。
- 仕事中のインターネット私的利用を理由に一〇〇万円もの損害賠償を請求されました。
賃金関係
- もうすぐ一二月末になりますが、まだ九月の給料がもらえないです。会社は「もうちょっと待ってください」というばかり。この場合はどうすればいいですか。
- 退職金を事後承認で五回分割とされましたが、四回目以後の支払いは滞ったままです。
- 仕事を辞めたいと表明し、途中で無断欠勤したら、働いた分の賃金ももらえなかった。無断欠勤した私もわるいけど、働いた分は払ってほしい。
- 給与改定があり、基本給がさがったので、会社に「あたらしい給与規定を提示してほしい」と要求したら、「給与規定を個人に開示している会社なんてないよ」といわれました。
- 給料日になかなか呼ばれないので、「私の給料は?」と聞くと、社長が「あっ、そうか忘れてた。いろいろなところに払っちゃった。計算には入れてたんだよ」などといわれました。まったく馬鹿にしている!
これらの相談内容をみると、全体としてさいきんの経営者の質が低下してきていることを感じざるをえない。雪印にひきつづく日本ハムの不祥事もおなじことで、それだけ、資本主義が生産力を発展させ、世の中を発展させる力を衰退させてきているということがいえるだろう。
それだけに、労働者のがわも、労働基準法など自分たちの権利をまもる知識を身につけ、労働組合がない職場では労働組合を結成し、労働組合がある職場ではその力を強化し、労働者自身のちからをもっと大きくしていくことがせつじつにもとめられている。
「労働通信」編集委員会では、メールでよせられた労働相談には可能なかぎり、おこたえするようにしている。有効なアドバイスができない場合もおおいが、なかには相談者の方自身が、編集部のアドバイスを参考にしながら、自分自身の力で会社側の不当な攻撃をうちやぶり、問題を解決したケースもうまれている。編集部では、そうしたケースをホームページの「職場と労働法相談コーナー」に掲載し、おなじような問題に悩む方方への参考として情報提供している。
また労働相談メールとはべつに、「労働通信」ホームページの電子掲示板「労働運動・労働問題ネット討論会」にも、ときどき労働相談の投稿がよせられている。これにたいしては、ネット討論の参加者のみなさんからさまざまなアドバイスがよせられている。そのなかで、社会保険労務士の方から、未払い賃金の請求書や労基署への「申告」などの文書の例文が提供されている。編集部ではその内容をまとめて、「困ったときに役立つ文例集」としてホームページに掲載している。
これらのページが、労働運動を下積みの労働者のなかから発展させる要素の一つとなれば幸いである。
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