『労働通信』2002年9月号
先日のこと、仕事が一段落し、B君が水圧ホースをかたづけようとしていた時のことである。B君ははじめてらしく、先っぽのジョイントがはずせず苦心していた。私は、かるい笑顔をみせて、ゆっくり近寄っていった。と、そのとき、そばを通りがかった社長がなにもいわずいきなりB君がもっていたノズルをわしづかみにして、バシッとジョイントを引き抜き、ガシャッとおいた。
B君は、社長がホースのほうも引き抜こうとしたのをみて、「こちらも引き抜くんですか?」と、すなおにたずねた。
社長は、こんなこともできないのかというあざけり見下した顔をしたまま無言でホースを引き抜くと、階段をパッパッと上っていった。
瞬間のできごとであった。私は社長がおいたノズルをとりあげ、「定位置じゃあない! 定位置はここだ!」と大声でいい、ゆっくりとノズルの先をわっかのなかにいれた。そして、Bくんのほうをふりかえり、「B君、一回やってみるかい?」ときいた。
「いや見ててもうわかりました」。おどろいたものをみたような心を抑えてきっぱりいった。私はホースのまかれたリールを洗濯機と壁のちょうどいいところにおき、「ここに置いた方がいい」といってかたずけた。するとそばにいた事務員が、「社長に教えてあげなさい」とめいっぱい怒りながら階段の上のほうを指さしていった。彼女は数年前に心臓を痛めたことがあった。
仕事が終わって二階の食堂で請負のCさん、それに古参のMさんと四人でその話になったとき、B君は「今までいろんな会社にいたが、こんなあつかいをされたのははじめてだ!」と頬を紅潮させていった。わたしはまわりを指さし「みろよこれを、こんなのが貼ってある会社があるかい! おれたちゃ奴隷じゃないちゅうんだ」と怒りをこめて叫んだ。
壁にはヘタクソな字で ”ここで飲酒、賭け事禁止”、”タバコのすいがらここえいれるな” などの貼り紙がしてある。
するとCさんが、「こんな時代だから会社、調子くれてんだよ、俺なんか車の保険まで出せだなんていいやがるから、んなもんいらねえといってやったんだよ」とやり場のない怒りを込めて話した。
Mさんはとまどいながらも、期待するような顔をして聞いていた。