『労働通信』2002年9月号

通常国会の焦点であった「郵政関連法四法案」が七月二四日参議院で可決され、成立した。小泉首相の永年のねらいであった郵便民営化への「第一歩」である。

 郵政関連法四法は、つぎの四つで構成される。

  1. 郵政公社法(独立採算制の国営による郵政公社を設立)

  2. 信書便法(手紙、ハガキなどの集配業務を民間企業に開放する条件をさだめる)

  3. 信書便関係法整備法(信書の定義)

  4. 日本郵政公社法施行法案

 これら法案そのものは、自民党内ですったもんだしたあげく、政府が行政改革大綱にのっとり国会に提出したものである。民間開放を推進するあまり、信書便法にいう「信書」がどういうものかも明確に定義されず、法案成立後の適当な時期に各分野の意向を吟味して決めるといったしろもので、見切り発車の感がある。

 また、ヤマト運輸などの運送大手は、現時点で郵便事業への参入条件の「ハードルの高さ」に異議をとなえ、全国銀行協会などは公社への「国家補償の特典」がのこされることを指摘し、郵便事業の完全民営化を要求するにいたっている。

 一方で、全国特定郵便局長会は、自由な民間参入になれば、もうかる都市部での業務確保競争になだれこみ、過疎地域をふくめた全国一律のユニバーサル・サービス破壊につながる危ぐを訴え、「郵政民営化に断固反対」を表明している。

 そして全逓であるが、小泉内閣となって以降、「郵政公社化」を錦の御旗にしたて、目標達成のため郵政当局とともになりふりかまわない「郵便新生ビジョン」のキャンペーンをはり、殺人的な労働現場をつくりあげてきた。中央本部は、法案成立にさいして公社法に反対した民主党を非難しながら、「総体的には与野党の枠をこえて『国民の生活インフラである郵政事業を新時代にいかに適合させるか』の観点から真摯(しんし)な論議がおこなわれた」と評価している。

 全逓は、「公社が経営形態の最終到達点」と強調し、企業会計原則、コスト論にもとづいた公社の事業基盤の確立をもとめている。

 小泉首相は厚生大臣時代、「肥大化した行政にたいして、郵政を民営化することで、公務員が三〇万人も削減できる」と豪語していた。しかし、実際は「聖域なき構造改革」の中心的目玉として、郵便事業に競争原理を導入し、この事業を運輸や金融・サービス業大手の食い物にしようとするものである。

 郵政事業は、通信手段、輸送手段が発達していなかった時代から、政府の政策をすみやかに全国にゆきわたらせ、国民の零細なカネを全国すみずみからかきあつめ、商品や情報の流通をうながしてきた。そのため、ぼうだいな費用とシステムを必要とする郵便事業を国営で管理・運営して、独占資本が必要とする情報、流通を確保してきた。郵便の利用状況は、個人間の郵便物がわずか二割程度で、のこりの約八割を企業が利用している。貯金、保険であつめるカネは、必要額をのこし、大蔵省(財務省)の資金運用部に預託し、「第二の予算」といわれる財政投融資のおもな原資にしてきた。このように資本主義のもとでの郵政事業は、それが政府の経営であったとしても、商品流通や市場の拡大をうながし、独占資本の労働者や人民にたいする搾取と抑圧の道具になっていることをあらわしている。

 だが、構造的に「赤字」とならざるをえない郵便事業であるが、こんにちのように生産力の発展にくらべて市場が相対的に狭あい化するもとで、あらたな市場を開拓するために、郵便貯金や簡易保険の膨大な資金がねらわれたのである。小泉改革の目玉はここから発生したといっても過言でない。小泉がいう郵政事業の民営化のねらいは、こうした郵貯・簡保の膨大な資金を独占資本に提供するとともに、郵便事業の市場にも民間の流通・運輸資本を参入させ、それを口実として徹底した効率化をおこない、競争意識をむきだしにする労働者をつくりあげ、コストの大幅なひきさげと独占が利用しやすいかたちに郵政事業を再編しようとするものである。

 パンフレット「郵政事業の民営化に反対するために」の三章のおわりに、「資本主義のもとで『効率化』を徹底してやれば、裕福で優雅な生活をいとなむ少数の金持ちと、将来に夢も希望ももてないぼうだいな数の貧困層をつくりだす以外にない」と指摘している。

 郵便労働者は、小泉内閣の「構造改革」とむすびつけて「民営化」問題をかんがえ、労働者の意識の統一と労働組合の組織機能をつよめていかねばならない。

目次へ戻る

この記事のTOPへ戻る

この記事へのご意見、ご感想をメールでどうぞ