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労働者が精神的にも肉体的にも疲弊していく日本の現実 |
佐藤 浩輔 |
『労働通信』2002年11月号
「労働通信」の読者のみなさん、私は最近、中国留学から帰国した者です。
帰国にあたっては、不安ばっかりでした。この留学の五年間はほとんど日本には帰っておらず、以前留学して日本に帰国した先輩からは日本の不景気による就職難をそれは恐ろしいものだと聞かされていました。
実際、二年前に卒業した友達も就職できずフリーターを今でもせざるを得ないといった状況です。
また今中国ブームといわれ、大企業にかぎらずおおくの中小企業も中国に進出していますが、その大部分が中国留学を終了した日本人学生を現地採用でしか雇わないというのが実際で、雇用の保障も社会保険もないし、「即戦力」ということでほとんど社員教育もされません。また企業が撤退などしたらそれはもう使い捨てといった運命。
私も中国語を学び、中国にたいし留学生という身分ではありますが特別な感情を持ち、できれば日中友好のかけ橋になれるような仕事を天職にしたいという希望があるのですが、でもそれを取り巻く環境は非常にきびしいというのが現状です。
また私の個人的な意見ではありますが、日本をいったん離れてみると、日本がはなつ独特の雰囲気というかプレッシャーがあることに気がつきました。
たとえばリストラやデフレなどの社会現象。私が日本にいた五年前とは一段と深刻化しているわけですが、今グローバル化の影響で、こういった現象は世界中至るところで存在しています。しかし、日本は他の国に比べ、リストラを受けた人人が企業や政府および国にたいしてそれほど反対や抗議などのアピールをしていないような気がします。アルゼンチンやフランスなどの国国は労働者が不当に解雇されたり、国の不良債権、債務のツケを民衆におしつけるようなことがあれば即座にデモなどのアクションをおこします。だけど日本ではそれほどではないような気がします。
以前、『ここがヘンだよ日本人』という番組でリストラやホームレス問題をとりあげたときなんかでは、ホームレスの人達が「職をあたえてくれない国が悪い」といった発言をすると、「それは自分が死ぬ気になってがんばっていないからだ」、「みんなそうだけど瀬戸際でがんばっているんだ」といった感じの反論がでてきて、それがさもただしいような雰囲気になっていました。
実際に就職してみると、今はこういった意見の方が大半です。本当に肉体的にも精神的にも疲弊して「過労死」していく、こういった現象がこんなに普遍的に存在しているのはなかなか日本以外に見つけるのもむずかしいと思います。
話がそれてしまったかもしれませんが、私も日本の現状というものについて友達や先輩から教えてもらったり、インターネットなどで情報を得ていただけで、実際どうなのかというのがわからないものですから非常に不安でした。
就職活動中、私が主に利用したのは職業安定所、インターネットの就職情報サイト、人材紹介センターでした。
まず職業安定所ですが、以前大阪で就職した時も職業安定所を利用したのですが、今回いってみてやはり以前とは違い、人でごったがえしていました。四〇〜五〇代の中年層から二〇〜三〇代の青年層と年齢層も幅が広く、また中年層の人達が職業ファイルに目をとおしているときの真剣さ、またみあった仕事がみつからず悲壮なおももちで帰っていく姿に、私も「これはたいへんだ」と痛感しました。
職業安定所から中国関連の出版業など一〇件の仕事を紹介してもらい、面接にいきましたが、そのうち九件は不採用でした。一件は中国人が社長の出版会社なのですが、出版会社とは名ばかりで実際なんの事業をおもにやっているのかさっぱりわからず、一日はたらいてやめました。職業安定所だから比較的しっかりしたところを紹介してくれるのだろうと思っていましたが、実際そうでもないらしいです。
また職安で、留学前に印刷会社で八年間はたらいたことを職務経歴として記載し、職安の相談員と話をするのですが、その時も「印刷やっていたといっても五年も空白があるのなら使えない。中国語もやっている人なんてゴマンといるからこれだけじゃ無理」といった感じであんまり相談にものってもらえず、面談を機械的にこなされているような気がしました。
インターネットの就職情報サイトでは製造業、出版、広告業などであたってみたのですが、一件も面接できませんでした。友達から聞いてみると、企業は雇用したいとは思っていないが、自分達の注目度などを調査したいがためにそういったサイトに登録しているのもおおいと聞き、これもなかなか確実性がないといった感じでした。
またその他に、めぼしをつけた会社で、募集をだしていないところには電話で問い合わせて履歴書と職務経歴書を送付するなどやってみましたが、面接までには到達せずでした。結局人材紹介会社をとおして面接にいった印刷会社に就職することになりました。のべ二カ月間の就職活動でした。
他の大学生や留学生はだいたい三〜六カ月かけて就職活動をするということらしいので、私は比較的短い期間でなんとか仕事が見つかったわけです。卒業前ほとんど調査もしていなかったし、また帰国した時は金銭的にもあまり余裕がなかったものですから、とにかく生活するためにははやく仕事をみつけないといけなかったので非常にあせっていました。
現在印刷会社で仕事を始めていますが、以前自分があつかっていた分野とは違った内容で、またこの数年で印刷業界はDTP(コンピュータを使った組版)の普及により印刷様式が急激に変化を遂げているので、今はついていくのが必死といった状態です。また残業も一日平均三〜四時間で帰宅すれば後は寝るだけといった毎日です。
日本に久しぶりに帰ってきた私にとって、この就職活動は少しではあるが日本の今に触れることができる機会でした。これから仕事をしていくことによってもっと現実がわかってくるのであろうし、ぜひ「労働通信」の読者の諸先輩方にアドバイスをいただきたいと思っています。