賃下げと都営交通民営化に反対してたたかう東京都の労働者

自治体労働者の たたかいの前線から

『労働通信』2003年1月号

 東京都労連(増渕委員長、組合員一八万人)は、東京都当局の賃下げ攻撃と東京都人事委員会のマイナス勧告に抗議し、地下鉄、バスの「外注化」に反対して闘争を展開している。昨年の一一月八日には、「二〇〇二年賃金闘争勝利 都労連第五波総決起集会」を開催するなど、ねばりづよいたたかいをすすめている。都労連傘下の職員、労働者の賃下げ攻撃、公営交通の「民営化」攻撃に反対する闘争は、貧富の差を拡大する小泉の「構造改革」に反対するたたかいでもある。

「ダブル削減」の攻撃

 自治体労働者への賃下げ攻撃の特徴は、第三者機関である人事委員会をつかって当局が強行していることである。東京都人事委員会は二〇〇二年一〇月三日、都知事と都議会議長にたいし、都職員の給与などについての勧告をおこなった。この勧告は、八月からすでに四%の給与削減が実施されているという実態を無視し、さらに平均七三九三円(一・六四%)ひきさげるマイナス勧告をおこない、一時金についても現行支給月額四・七○カ月を四・六五カ月とするものである。一時金の削減はこれで四年連続である。年収で約一五万円の減額であり、賃金水準がおおはばにきりさげられることになる。また、この勧告は、「給与水準のひきさげであるので遡及(そきゅう)せず、条例公布の翌日から実施」とする一方で、四月からの逆格差については「年間給与で実質的な公民均衡がはかられるよう」にするとし、「不利益については遡及しない」という原則を無視して、「総人件費削減」路線を強行するものとなっている。

 労働条件の改悪は、給与と一時金の削減だけではない。勤勉手当の割合の拡大や成績率の導入・拡充、普通昇給への業績評価の反映、特別昇給のみなおしなども勧告にふくまれている。これらは、都当局の人事給与制度のみなおし提案と同様の意見である。さらに今回の勧告は、労使協議中の教育委員会の「主幹制度」を前提とした給料表をしめすなどしており、都当局の「人事制度白書U」や「公務員制度改革」を具体化・先取りしたもので、重大な内容をもつものとなっている。この勧告は、人事院勧告制度がはじまっていらい、はじめての「マイナス勧告」であり、東京都における労働者の生活実態や都労連の要求、さらに四%の給与削減(すでに八月から実施済み)がふたたび実施されている現状を無視した、きわめて悪辣(あくらつ)きわまる内容である。こうした人事委員会の動向は、第三者機関としてのほんらいの機能を放棄したものであり、完全に都当局の側にたったことを白日のもとにさらしている。

 一一月一日、都労連と東京都との団体交渉が決裂した。団体交渉の席上、副知事は、「マイナス勧告」と四%給与削減措置の「ダブル削減」は当然なものとしたうえで、さらに「給与削減措置の平成一五年八月以降のとりあつかい」を検討するとし、「具体的な内容がかたまり次第、おしめししたい」と発言した。都労連委員長は、「組合員のせつじつな要求をふみにじる暴挙だ」とその撤回をもとめたが、回答がないために「こんごの交渉をうちきることを宣言」して席をたった。都労連側は、このかんの交渉経過と労使ルールを無視した都当局の発言に抗議の意思を表明した。都労連によれば、当局による労使合意の破棄は、「この措置を講じてもなお生じる財源不足については、べつの対応を検討」するという三年前の発言、「給与削減措置については今年度で終了する」という昨年のトップ交渉の合意にくわえ、今回の問題をいれれば三度めの問題である。

 都労連傘下の組合員は、この二年間にわたるきびしい生活を覚悟しながら、総合計一八〇〇億円もの額にのぼる「財政再建」に協力してきた。しかし、この組合員の協力と努力にたいする答が「ダブル削減」(平均二万二〇〇〇円の賃下げ)と「削減期間の延長」の提案としてかえってきたことで、組合員ははげしい怒りに燃えている。

駅外注化、自動車の外注化をもくろむ

 地方自治体は、地方行革・リストラ「合理化」策の一環として、財政状況の悪化を口実に公営交通への補助金、負担金の削減をつよめている。すでに、函館市営バスの民間移譲につづき、札幌、秋田、岐阜などでも市営バスの民間委譲が画策されている。東京都も民間移譲を本格化させようとしている。都営交通ではたらく職員、労働者八二八六人は、こうした「民営化」攻撃に直面し熾烈なたたかいを強いられている。

 東京都当局は二〇〇二年七月一二日、東京都交通局経営計画「チャレンジ二〇〇一」の一環として駅業務の外部委託、自動車営業所の外部委託を提案してきた。東京都当局は、これまで戦後の都電絶頂期を例外として、たえず「合理化」をすすめてきたが都営交通の外注化だけはさけてきた。連続的な業務の効率化や人減らし「合理化」をしつつも、駅業務では清掃業務と定期券発売所の一部委託化、自動車業務ではワンマンバス化、バスの清掃業務の委託ぐらいにとどめていたのである。

 これまでの電車部門の「合理化」、効率化攻撃を歴史的にふりかえればつぎのようなものがある。

@出札・改札係の営業職への統合
A駅の清掃業務の外注化
B定期券発売所の一部委託化
C自動券売機の導入
Dホーム監視の縮小
E自動出改札機の導入
F自動精算機の導入
Gワンマン運転の導入

 電車部門における「合理化」は、基本的には業務の再編、統合・縮小、職種の統合と機械化、省力化がおもなものとなっており、鉄道事業者としての業務をあつかいながら外注化したのは清掃業務と定期券発売所の一部の業務にすぎなかった。しかし、今回の東京都当局の「駅業務の外注化」の提案は、これまでの「合理化」と質的にちがう重大な内容をもつものとなっている。駅業務の外注化をもりこんでいる「チャレンジ二〇〇一」は、段階を画した質のことなる「合理化」であり、全面的な「民営化」の方向をめざすものであるといえる。

都営の維持めざし、不安定雇用労働者の採用許さず

 東京交通労働組合は、「外注化」にたいし、都営交通の維持、存続にむけて奮闘している。

 組合の「外注化」にたいする基本的態度は、つぎのような内容である。

 @今回の提案は業務の機械化あるいは業務統合で鉄道にはたらく人が減るわけではない。外注化することで、交通局としての人件費を削減するということが都交通局理事者の最大の目的であることとして提案してきていることを確認する。
 A都交通局の理事者の提案である外注化を受け入れれば、たしかに交通局としての経費(人件費と物件費)は受託者の労働者の低賃金、低労働条件を前提として削減される。しかし、交通局業務を遂行しているにもかかわらず、雇用先がちがうというだけで、さまざまな労働条件の人がはたらく職場となること。
 B他都市の公営企業の例をみるまでもなく、関係先の法人(会社や財団など)に業務委託した場合でも、交通局職員よりもそうとう労働条件が低下している実態があきらかになってきている。

 さらに東京交通労組は、以上の点を明確にしたうえで、第一に、駅業務の外注化に反対すること、第二に、力関係で外注化された場合はただちに、はたらく職場での現場協議会、労働組合協議会などをたちあげ、労働条件の向上をともにたたかうこと、第三に、雇用形態のちがいによる職場での分断を克服し、はたらくものの団結をつくりあげていくこと、という方向をうちだしている。


賃下げも民間委託も根っこは一つ

東京交通労働者

 こんど東京人事委員会が賃下げを勧告した。いまになってなぜ、公務員が賃下げ勧告をうけなければならないのか。経済危機で財政が破たんしたといっているが、この経済的危機は小泉内閣の経済政策のあやまりからおこっているといわざるをえない。公務員法によって自治体などの職員と労働者がスト権を剥奪されたために、「第三者機関」として人事委員会がつくられたと聞いている。戦後からずっと公務員の賃金は低く、労働条件もわるかった。人事委員会は、民間労働者との賃金のちがいを埋めるためにつくられたものであると思う。これまで、民間労働者との賃金格差など労働条件でかなりのへだたりがあったが、さいきんになってやっとそれがちぢまった。そして、九〇年代にはいって民間企業がうまくいかなくなって、民間労働者が賃金をさげられたのであって、なぜわれわれがそのしわよせをうけなければならないのか。もうすでに八月から四%も賃金が削減され、都の財政再建に協力してきた。われわれのがまんも限界だ。ここまできたらぜったいに「ダブル削減」だけはゆるせない。断固としてたたかうつもりだ。

 もう一つの問題は、地下鉄とバスの民営化だ。これまで一貫して地下鉄・バス部門の「合理化」が遂行されてきたが、こんどの提案はちがう。地下鉄もバスも全部民営化するということを前提にしたものである。いま、かけられている電車とバスの部分的な外注化の提案は、全面的な民間委託をにらんでのことである。都営バスは二〇〇○台ぐらいあるといわれている。この規模は全国一のバス会社である。バスの民間委託は、営業所ごとに部分的に民間委託をすすめ、しだいに全面的な民間委託をおこなうというものである。うわさによれば、東京の観光バスを経営しているハトバスが買うといわれている。

 電車の方は、これも部分的に駅業務の委託をすすめ、さいごに全部を民間委託するというものであるが、具体的には営団地下鉄(JR資本と東京都が出資して経営)に払い下げることになるといわれている。いまは、駅の出改札に派遣労働者が配置させられようとしている。聞くところによれば、この派遣労働者は時間給で一七〇〇円ぐらいだといわれている。都交通局職員・労働者の賃金は、平均で年収四五〇万円ぐらいであり、時間給になおすと三〇〇〇円から四〇〇〇円程度だ。派遣労働者の賃金は、それにくらべ格安である。派遣労働者の時間給は、派遣会社からピンはねされるので手元にはいるのは八〇〇円から九〇〇円ぐらいにしかならないといわれている。民営化されると、われわれのように権利が保障され、比較的高い賃金が保障される労働者はいなくなる。公営交通の「民営化」は、安定した賃金と身分が保障されている公務員を削減して、低賃金で身分保障のない労働者にきりかえるということだ。考えてみると、人事院勧告による賃下げ攻撃も、こうした無権利な不安定労働者の導入による民間委託とむすびついた攻撃としてうけとめなければならないとおもう。われわれは、ここのところを問題にしてたたかわなければならない。

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