職場に運動を広げる

『労働通信』2003年3月号

 本誌2002年7月号11月号でも紹介した日本郵便逓送(日逓)労働者による裁判闘争は、原告団を中心にあらたな広がりをみせている。一月二二日には大阪地裁で第四回公判がおこなわれるとともに、原告団と支援者による学習交流会が開催された。とくに公判の傍聴席は毎回満席でこの問題への関心の高さがうかがわれる。さらに一月二六日には東京でシンポジウムが開催され、運動のひろがりをつたえている。

 注目すべきは、このたたかいは、裁判闘争というかたちをとってはいるが、職場のなかで大衆路線にたって運動をひろげていこうという労働運動の原点に根ざした活動をおこなっている点である。また、御用組合の支配する職場のなかでいかにして民主的な組合を取り戻していくのかという日本の労働現場に共通した課題解決の糸口を模索している。

 今回、本紙記者が一月二二日に行われた第四回公判を傍聴し、原告団に参加している労働者や支援者にインタビューを試みた。


――この問題を原告団を組織し裁判に訴えようと思ったきっかけはどういうことですか?

原告団A氏 会社の理不尽な労働条件の不利益変更にたいして組合は民主的な手続きをせず、代表者会議にもかけずに御用幹部だけで了承しました。私たちは、有志で、組合員の納得していない労働条件の変更にたいして、労働基準局に申しいれしました。基準局も一方的不利益変更に抵触する可能性があるということで会社側に説明をもとめましたが会社は完全に無視してきました。私たちは、しかたなく司直にゆだね会社とたたかうことにしたのです。ただし、少数でたたかうのではなくひろく原告団と支援者をあつめることにより大きな力を得ようとしています。

――原告団をどのようにして組織しましたか?

原告団A氏 私の場合、職場を中心に休憩時間や就業後など、機会があるごとに同僚に今回の会社の攻撃について説明しました。説明には今回の会社の攻撃がいかに不当であるかという資料を示して同僚を説得しました。
 その呼びかけに四〇名ほど賛同を得て、そのうち二六名が原告団に参加してくれました。

――原告団を組織するときの組合員の反応はいかがでしたか?

原告団A氏 この問題にたいする組合員の関心は高いものでした。直接自分の収入にかかわる問題ですので、当然といえば当然ですが。そのなかで今回の二六名が原告団として会社とたたかうことを決意してくれました。

――会社などからの妨害は入りませんでしたか?

原告団A氏 直接会社からいやみをいわれたり、御用組合の幹部をつかって「こんなことに参加したらクビになる」などのおどしもかけられました。そのような妨害のなかでも自分たちの主張をつらぬこうとした意志の強い者たちが原告団に残りました。

――最初のころと今とでは、原告団の意識は変わりましたか? また、他の組合員の反応は変わりましたか?

原告団A氏 職場によってちがうのですが、末端の組合員には印象はよいと思います。いまは傍観している組合員も、会社のやり方には内心は怒っているはずです。かれらはいま私たちが本気なのかどうかを見ているはずです。私たちの運動がもりあがり有利な方向に発展していけば、かれらもきっとついてくる時がくると思います。

 原告団の意識も向上していると思います。最初はみんな裁判なんてはじめてで、不安もあったと思いますが、いまは自分たちのたたかいに勝利の確信をもちはじめています。とくに家族からの応援があり心強く感じています。

――他の組合員にはどのように働きかけていますか? また働きかけようとしていますか?

原告団A氏 ニュースを発行してタイムリーに情報を提供し、支援をよびかけるようにしています。このたたかいを原告団のみでおこなうのではなく、ひろく原告団以外の組合員や一般の人たちにひろめていき、大衆的な運動に発展させていきたいと思います。そうすることが、この理不尽な会社の攻撃に勝利する大きな要素になると思っています。そのために、「支援する会」を組織し広範に支援者をあつめています。

――ひごろは原告団同士でどのような活動を行っていますか?

原告団A氏 おたがいの情報交換は当然として、ニュースの発行やいろいろな雑用にもみんな積極的に参加してくれます。

――参加するにあたって不安はありませんでしたか?

原告団B氏 最初はみんなはじめてのことばかりで、不安がなかったといえばうそになります。しかし、いまは仲間同士のふれあいのなかで不安はほとんどありません。なによりも、学習会や交流会を通してますます自分たちの主張が正しいことを確信してきたことが自信につながっています。

――組合との関係はどのように対応しようと思われていますか?

原告団A氏 いまの組合幹部は、完全に会社の御用になっています。今回の私たちのたたかいを労働組合への反逆という構図にし、他の組合員から孤立させようとしています。私たちはあくまでも理不尽な労働条件を押しつけた会社とたたかっているのに、組合幹部は幼稚なビラをまいて会社と一体となり、私たち原告団を中傷しています。そのような組合幹部にたいして私たちは毅然とした態度でのぞみます。そして、御用組合を組合ほんらいの姿にもどすために、昨年組合役員選挙に原告団から三人立候補しました。準備不足と相手の組織的な対応の前に今回は残念ながら落選しましたが、予想以上の得票率をあげ組合員の関心の高さを実感しました。今回の得票率の高さに御用幹部もかなり危機感をもったと聞いています。

――Cさんは、この裁判闘争を支援されているわけですが、支援しようと思ったきっかけは?

支援者C氏 私の顔見知りの同僚が原告団に参加しており、私自身今回の会社のやり方に憤りを感じているので「支援する会」に入り支援しようと思いました。今回、私も原告団に参加しようと思っています。

――裁判闘争の盛り上がりについてどう思われますか。

原告団D氏 もりあがりは非常に結構だと思います。ただ最近、私はこの裁判闘争のあとのことを考えるようになりました。この裁判は、一つのステップであって、私たちはこの経験をいかして、さらに運動を発展させなければならないし、どうすれば発展させられるのかを考えはじめなければならないと思っています。

インタビューを終えて

 みなさんの貴重なお話しありがとうございました。
 私は、今回の公判と学習会に参加して、一番印象に残ったのは、彼らの底抜けの明るさとお互いの信頼感でした。それぞれ、いろいろな思いや考えをもった労働者が、同じ課題でたがいに信頼し団結できるすばらしさを実感しました。今日の労働運動の低迷を嘆く者はおおいが、かれらを見ていると日本の労働者もまだまだ捨てたものではなく、逆に大いに希望をもっていいのではないかと感じさせられました。今後とも、ともにがんばりましょう。
(本誌記者 谷崎肇)

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