集 労組のあり方が問われる03春闘

政治的・社会的なたたかいの追求を

『労働通信』2003年3月号

 03春闘は、政府、財界が「構造改革」の名のもとに賃金の切り下げや社会保障制度の破壊を加速するなかでたたかわれている。

経済危機がいっそう深刻化

 小泉内閣は発足いらい「構造改革なくして経済の再生はない」とくりかえしてきた。だが景気の低迷はいっそう深刻化し、二〇〇二年の完全失業率は五・四%(完全失業者数三五九万人)と、比較が可能な一九五三年いらい過去最悪の数字にのぼっている。

 こんにちの不況は、たんなる一時的な景気循環で生じたものではなく、日本資本主義の構造が大きく変化した結果もたらされている。それは、日本資本主義の「高度経済成長」をひっぱってきた輸出主導型の経済が貿易摩擦などによってゆきづまり、八〇年代から九〇年代にかけて、輸出と海外生産に軸足をおいた多国籍企業型経済へと転換し、その結果、国内に資本、設備、雇用の「三つの過剰」が生まれてきたことである。小泉内閣は、不良債権の処理を突破口として、いっきにこれらの「過剰」を破壊しようとしてきた。

 だが、この「構造改革」路線は、不況をいっそう深刻化させる「魔の悪循環」をうみだしただけであった。

 「魔の悪循環・その1」は、不良債権処理をしゃにむに強行してきた結果、企業の倒産やリストラ、とくに地域経済をささえてきた中小零細企業のなぎたおしをすすめ、そのことが労働者の賃金・雇用の破壊をもたらし、国内総生産(GDP)の六割をしめる個人消費を低迷させ、不況の深刻化をもたらしてきたことである。

 「魔の悪循環・その2」は、構造改革が不況や企業の経営状態の悪化をもたらし、あらたな不良債権を発生させ、そのことがさらに「不良債権処理」に血道を上げる政策を促進していることである。

 「魔の悪循環・その3」は、こうした不況の深刻化によって、国家財政や地方自治体の財政が悪化し、そのことを理由に医療、年金、福祉をはじめとする社会保障予算のきりすてや自己負担の増大が強行され、一人一人の労働者の可処分所得がへり、消費を低迷させ、不況を深刻化させる。そのことがさらに国の地方の財政を悪化させるという悪循環である。

 それにもかかわらず、財界・政府は、?03?春闘や通常国会などをとおして、この破壊路線をいちだんとすすめようとしている。

強まる賃下げ攻撃

 今春闘の独占資本、財界の賃下げ攻撃の特徴は、「ベア・ゼロ」だけではなく、賃金制度の改革(人事制度と成果主義賃金制度の導入)と定期昇給制度の廃止を柱にするものとなっている。このねらいは、これまでの年功型賃金、退職金制度(公務員をのぞき基本的にくずされた)の全廃を徹底するための攻撃である。

 公務員にたいする賃下げ攻撃は、政府・自治体が人事委員会をつかってマイナス勧告をださせ、それによる賃金カットをおこなっている。特徴的なことは、民間とおなじように公務員にたいしても人事制度と成果主義賃金制度の導入を画策していることである。

 地方公務員にたいする攻撃は、自治体が経営している事業のきりすてと民間委託であり、市町村合併と道州制の導入による大量の人員削減攻撃である。この市町村合併と都道府県合併、さらに道州制の導入は、一五年後には地方自治体を三分の一に縮小するということであり、これによって七〇〇兆円の中央政府の赤字を解消するというものである。

社会保障制度の大改悪

 今年の「春闘」や国会の動きで見逃せないのが、税制や社会保障制度の改悪である。
 日本経団連は一月一日付けで発表した「奥田ビジョン」のなかで、経済活力を維持しつつ、年金や医療などの社会保障をまかなうためとして、二〇〇四年度から消費税率を毎年一%ずつひきあげ、最終的には一六%にまでもっていくことを提言した。

 通常国会においては、配偶者特別控除の廃止で七三〇〇億円、発泡酒やワインなどへの増税で八〇〇億円、たばこの増税や消費税の免税点の引き下げで八九〇〇億円など、合計で一兆七〇〇〇億円もの増税法案が提出されている。その一方で、大企業にたいしては研究開発減税・投資減税を用意し、相続財産が四億円以上ある人のための相続税の最高税率のひきさげなどをすすめようとしている。

 また今国会では、今年四月からサラリーマン本人の自己負担割合を三割にアップする健康保険改悪をふくんだ予算案や、物価スライド凍結解除で年金の給付をきりさげる法案、雇用保険の給付の期間短縮と金額削減をはかる雇用保険法改悪案など、社会保障制度を改悪する法案が目白押しである。これら社会保障関係の予算で約二兆七〇〇〇億円も削減されるといわれている。

労働者の権利をおかす労基法改悪

 さらに重要なことは、労働基準法の改悪案が国会に上程されようとしていることである。今回の労基法改悪の最大の問題は、労働者の解雇を「原則自由」とする条項をもりこもうとしていることである。そのほか、サービス残業を合法化する裁量労働制の大幅な拡大や派遣労働の拡大などももりこまれている。これは、一方で大量の失業者や不安定雇用労働者がいて、他方で、過労死するほどの長時間・過密労働をしいられる労働者がいるという日本の労働環境をいっそう悪化させ、労働者からいっさいの権利をとりあげていくものである。

不良債権処理で中小企業つぶし

 経済政策では、ひきつづき「不良債権処理」を前面にかかげ、企業のリストラを促進する司令塔ともいえる「産業再生機構」を設置する法案も上程されている。小泉内閣は、金融緩和政策によって、日銀から銀行にじゃぶじゃぶに資金を放出すれば、中小企業にもお金がまわり経済が活性化するだろうというシナリオをえがいてきたが、じゃぶじゃぶになったのは銀行だけで、中小企業への融資は減少する一方である。そのため、やる気と能力がある経営者や労働者がいる中小企業でも、一時的な赤字のためにつぶされていく事態がうまれている。

有事法制化

 今国会では、昨年、継続審議になっている有事三法案を「修正」のうえ、成立させることもねらっている。これは、イラク攻撃をはじめ、アメリカが世界中でひきおこす戦争に日本も積極的に加担していくことをねらったものであり、日本の多国籍企業の海外権益をまもるために公然と戦争に参加できる体制をつくろうとするものである。その一環として、報道の自由をうばう口実になる可能性が高いという批判をうけていったん廃案となった個人情報保護法も、今回あらためて再提出されようとしている。

 義務教育費国庫負担金を削減する法案や教育基本法の改悪など、教育分野の法律改定案も焦点になろうとしている。

政治的・社会的なたたかいへ

 小泉内閣の「経済政策」は、総じていえば、大企業や投資家、資産家などを優遇すれば投資が活性化し、日本経済が再生するであろうというストーリーを神話のように信じて実行されている。だが、それは貧富の格差をますます拡大し、冒頭で述べた「魔の悪循環」をくりかえして、日本の生産力そのものを破壊してしまう政策である。

 こうしたなかで、連合などの労組中央は、ベースアップの統一要求を断念し、じゅうらいの賃上げ相場づくりとその波及を中心とした春闘から、ワークルールなど、基本的労働条件の社会的な波及を軸としたミニマム春闘への脱皮をうちだしている。そこには、労組中央幹部のおおくが、一般組合員からはかけはなれた高給をとり、資本とゆ着して労働者のたたかいを抑圧しているという側面があると同時に、じゅうらいの「春闘」方式では、資本主義の構造変化や賃金制度・賃金体系の変化、それらのなかから生みだされる労働者の意識や労働組合組織の形骸化(けいがいか)などの状況に十分に対応できなくなっているという点をみておかなければならない。

 今後の「春闘」については、賃金問題だけにわい小化するのではなく、国家的搾取、階級的搾取全体とのたたかいを念頭におき、賃金問題を政治闘争としてとらえ、税金問題、医療・福祉、年金などの社会保障制度をふくめたたたかいを考えていくことが重要となってくる。連合は、中小・地場の労働組合やパートタイム労働者の賃金の底上げを重視した「ミニマム課題」をかかげているが、これを実際の大衆闘争のなかで実現し、成果をあげていくことがもとめられている。

 「春闘」のテーマとしてはつぎのような課題があげられるであろう。

*賃金の大幅引き上げ、中小企業労働者、パート労働者等のミニマム要求の実現
*解雇を自由化する労基法改悪案の撤回
*解雇制限法の制定。判例で確立されている「整理解雇四要件」の法制化
*パート、派遣などの非正規労働者にすべての面で正規労働者と同等の権利を保障する法律の制定
*配偶者特別控除廃止反対、発泡酒・ワイン・たばこ増税反対、健保三割負担・保険料ひきあげ等の凍結、雇用保険改悪反対。失業対策をはじめ、医療、介護、福祉、教育などの社会保障制度の拡充
*違法なサービス残業の禁止・罰則規定の強化。週三五時間労働時間の法制化
*「不良債権処理」の名のもとでの中小企業つぶしに反対し、中小零細企業と地域経済を活性化させる政策の実現
*有事法制反対、アメリカのイラク攻撃への加担反対、「個人情報保護」法案反対


 そのうえで、たたかいの重点を職場、生産点におき、労働組合の強化と未組織の組織化におき、労働者の政治思想意識を高めることが不可欠である。

 ほとんどの労働組合は、かつてのように「春闘」時に政府、資本の政策に反対してたたかうというようになっていない。そのため下部労働者の不満、要求は解決できないばかりか、政府・独占資本の政策は日常の仕事のなかに具体的にあらわれる。したがって、それは、仕事をめぐって当局、会社・資本と労働者の対立となってあらわれ、その仕事をつうじて労資の矛盾は激化する。この矛盾の解決のために、職場、生産点において組合員の要求をまとめて労働組合をつうじてたたかうようにすることがだいじである。反動的な労働組合のなかで、そのことを実践しようと思えば、執行部と下部組合員の対立がおきる。しかし、こうした活動と闘争をつうじて、はじめて労働者は階級的な力をつけていく。

 この闘争でかちとるべきものは、職場における民主主義の確立であり、労働組合の民主的運営をたたかいとることであり、労働組合の階級的強化である。そして、この闘争のなかで、労働者が「構造改革」の階級的本質とねらいをつかみ、政治をかえて労働者と人民の未来をたたかいとることができるという確信をつかむことができる。そのために奮闘しよう。

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