集 労組のあり方が問われる03春闘

初めての賃下げを経験した郵政労働者

郵政労働者
明石 晴夫


『労働通信』2003年3月号

 郵政職員賃金は、初の右肩下がりを経験した。労働基本権に制約を受けている公務員には、春闘も労使交渉だけでなく人事院がからんでいる。過去賃上げ交渉は常に労使交渉で妥結することなく、人事院の調停作業にもちこまれ、「民間準拠」として民間産業の春闘状況を反映した人事院の『勧告』に基づいてベースアップ率が決定されていた。労使交渉はその率の配分交渉がおもな交渉であった。昨年は人事院初のマイナス勧告、つまり四月にさかのぼって賃金をボーナスで返納するという事態になった。

 率で一・九%、月平均七〇〇〇円がひきさげられたのである。

 これには裏話がある。労使協定では、労働者にとっての不利益については過去にさかのぼらないという、不利益訴求は行わないという協定があった。つまり、労使交渉でマイナスを受け入れても妥結月からのマイナスであり、四月にはさかのぼらないという協定である。しかし、全逓、全郵政労組中央はこの協定を返上し、組合員による協定違反の裁判闘争を封じ込めるという手段にでたのである。

 今年の春闘についても賃金制度の改革が焦点となっている。昨年の人事院勧告は単年度のマイナスでなく、俸給表が改正され、平均一・九%がこの先削減される事態となった。職場の声としては「民間がバブルではじけている時にも公務員は何の恩恵もなく指をくわえて見ていただけ、あの時給料でも上がっていれば我慢もできるが」といった意見があった。

 また、あらたな能率給導入の新賃金制度が提起されてきている。四月から暫定的な勤務評価が始まる。能率給制度の賃金予算は全職員の賃金を一〇%プールし、成績に応じて配分するという案が浮上している。この問題にはILO(国際労働機関)からも異議が唱えられている。日本の公務員には労働基本法の制約があることともかかわり、絶対的な勤務評価が公務員に適応できるか疑問が投げかけられている。はたして、公務員の労働力と民間労働者の労働力にどういった違いがあるのか。

 賃金ひきさげについては「民間や世間が不況にあえいでいる時だからしかたがないとも思う。しかし、能力給制度が導入され仲間同士が競争させられ、他人のことを思いやれない職場になるのはこわいことだ」という声も聞かれる。また、「引き下げた賃金でワークシェアリング等失業者対策を政府が取り組むことなども求めるのでなければますます労働組合が孤立しその社会性を失うのではないか」という意見もでている。

 賃金を考えるとき、雇用主との関係だけで見ると賃金の意味も不鮮明になる。社会的なつながり、労働力の再生産費という観点からもう一度賃金制度を見直してみないと賃金闘争の意義も、社会的なつながりも色あせてしまうのではないだろうか。

目次へ戻る

この記事のTOPへ戻る

この記事へのご意見、ご感想をメールでどうぞ