ピンハネ構造とたたかい5割増の単価を勝ち取る

『労働通信』2003年5月号

 東北の雪国で建設・運輸系の組合専従をしている狗川原権三です。名称に『一般』がついている労働組合ですので、個人加盟もアリな組合です。県内上部団体に来る労働相談で、面倒な相談はウチに来ます。労働相談は手間が非常にかかる割りに得るものは少なく、組合運動というよりボランティアの意味合いが濃いです。思い出すだけでブルーになりそうな内容が多いですし、程度の差こそあれどこも似たような状況でしょうから、本業の建設・運輸関係について報告します。

ピンハネの構造

 建設業界は、以前は失業者を吸収する受け皿というようないい方をされてきたようですが、私にいわせるとピンハネのいいわけでしかありません。都会では事情も違うのでしょうが、田舎の建設業界は「ほぼ公共事業だけ」で成り立っています。つまり、「公共事業を語ると建設業界をほぼ語った」ことになります。

 公共事業の入札の仕組みは簡単に言うと、『役所が値段を決める』→『業者は役所の値段を想像して入札』→『最低制限価格より高くて、一番安いやつが落札』という仕組みです。ところが、役所が決める値段というのがとんでもない代物です。

 資材や人件費などは調査の上で決定されており、それらの数字は公表されているのですが、なぜか人件費については東京などより田舎の方が高いのです。ウチの地域で役所が積算している人件費は、末端労働者の受け取る額のほぼ倍です。元請け業者は役所が高く積算した額を貰い、実際に汗を流す下請けには地場の単価で支払うので、約半分をピンハネできます。

 以上のように建設業はピンハネの舞台でしかなく、建設労働者はピンハネに必要な材料に過ぎなかったのです。役所としてもこの二重価格構造について公式に認めるわけにはいかないのですが、これを原因とした弊害もあるので無視するわけにもいきません。しかし、この構造は何十年来のものですし、ピンハネされた金が政治家に回っているので容易には崩せません。

ダンプ持ち労働者

 ところが、一昔前に役所の出した文書に面白い文章を見つけました。そこから役所との長い交渉が始まりました。

 その文書の内容に入る前にウチの組合が組織している「ダンプ持ち労働者」の説明をしなくてはなりません。「ダンプ持ち労働者」いわゆるダンプ屋は労働者自身がダンプカーを買い、建設現場などにダンプを持ち込んで働きます。燃料代やタイヤ代等の経費の支払いはもちろん、ダンプの償却も自分でしますし、税法上は自営業者として確定申告をしています。たとえていえば、大工さんが建築現場に自分の大工道具を持ち込んで働くのと同様です。つまり、労働組合法上では労働者ですが、労働基準法上では労働者ではないのです。そのため、組合を作る団結権はありますが、労働条件についての規制はほとんどありません。

 この中途半端さは仕事量の波動性が凄まじい建設業界の要請によるものでした。建設会社がダンプを買って運転手を雇用するより、個人にダンプを買わせて必要な時にだけ仕事を発注した方が安上がりです。年の半分近くは暇ですから、その間は遊ばせておけば金を払う必要がないのです。また、事故やとりしまりなどの危険負担もダンプ屋におしつけることができます。もちろん、ダンプ持ち労働者の数だけ見積もりを提出させることができるので、単価を叩くことも容易です。

組合があればモノをいえる

 このような状況下で長く無権利状態に置かれてきたダンプ労働者は、仕事をくれる会社と対等な交渉などできませんでした。ところが、例の役所の文書というのは対等どころか業者より強い立場にたてる文書だったのです。事の発端は私が生まれる前にまで遡ります。

 前記のように無権利状態に置かれたダンプ屋たちは過当競争に追い込まれ過積載、過労運転などもせざるをえない状態で、当然、交通事故が頻発しました。国も対策を迫られて各種施策を実施したのですが、その流れでダンプカー協会という団体が作られました。

 国はこの協会を交通安全団体として育成することでダンプカーが安全に仕事をしてくれる、と考えたようです。その育成のために「補助金」を出し、「公共工事では優先的に使用する」なんて通達も出しました。ところが、ダンプカー協会の実態は単なる天下り先で、交通安全には貢献してきませんでした。それに比べてわが組合は左折巻き込み事故防止などで先駆的な役割を果たしてきていました。

 「補助金使って何にもしてないダンプカー協会がどうして交通安全団体なのだ?」

 この当然すぎる訴えに、某中央官庁は文書の表現をちょっと書きかえることで対応してくれました。われわれの組合も使用促進されるべき交通安全団体として認められたのです。しかも、その文書は公共工事の契約書のなかにも綴じこまれているというのです。

 「契約に従って、ウチの組合を使用促進してください」

 元請に契約の履行を求めて大衆行動も含めた動員を組織し、履行されない場合には役所に対しても動員をかけました。土建屋も必死に抵抗しますが、契約事項ですからそうそう耐えられるものではありません。
 実際に、これまでの五割増の単価を勝ち取りました。また、組合の意義を良く分かっていなかった組合員もいたのですが、「組合があれば土建屋や役所にモノをいえる」ということを経験で実感できた組合員が組合活動に積極的になりました。今年度も既にいくつかの土建屋と交渉し、生意気な土建屋とは役所を交えた交渉をする予定です。

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