『労働通信』2003年7月号

四月二八日〜五月九日、フィリピンの戦闘的ナショナルセンター、KMU(五月一日運動)〈注1〉と国際人民闘争連盟(ILPS)〈注2〉の共催で、第一九回ISA(国際連帯行動)が開催された。
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ISAは、KMUのよびかけにより毎年メーデーの時期に世界各国の労働組合がフィリピンにあつまり、フィリピンの労働者とのひざを交えた交流をおこなうとともに、国際会議を開催し労働組合の国際的な共同闘争の方針を論議し、決定する取り組みである。今年はアメリカ、カナダ、オーストラリア、ミャンマー、インドネシア、韓国、台湾、日本などから労働組合や労働関係NGOなどが参加した。日本からは自立労働組合連合が参加した。
ISAに参加した各国の代表団は五月一日のマニラのメーデー集会に現地の労働者とともに参加したあと、五月二日〜四日にかけていくつかのグループにわかれて、フィリピン国内各地の労働者や農民との交流をおこなった。
この地方参観に参加した海外の代表団は、ブッシュの「反テロ」戦争戦略のなかでフィリピン国内でも人民運動にたいする暴力的な弾圧がつよまっていることを実感した。アロヨ政権は、MILF(モロ・イスラム民族解放戦線)などとの和平交渉を一方的に打ち切り、米軍との合同軍事演習「バリカタン」を背景に、ミンダナオ中西部に国軍を送り込んで大規模な「掃討作戦」を展開しており、この地域で十数万人の避難民が発生している。外国軍軍隊がフィリピン国土で軍事作戦を展開することを禁止した憲法の規定があるため、米軍は軍事演習だけに参加して、掃討作戦には直接参加していない建前になっている。しかし、昨年七月におこなわれた国際調査団での調査では、米軍が村人を連れ去ったことという証言がだされている。
弾圧は労働組合運動や人権団体などの合法組織にもおよんでいる。四月二一日には、ミンドロ島での人権蹂躙事件の調査団にくわわっていた南タガログ地方の農民活動家と人権擁護団体活動家の二人が調査団からひきぬかれて拉致され、死体で発見された。アロヨ政権は、合法団体であっても政府に反対する組織を「テロ組織」と規定して非合法化する「反テロ法」を国会上程している。
しかし、弾圧のなかでも、KMUをはじめとする進歩的勢力は、労働組合や都市貧民組織などの組織づくりを確実につみあげて大衆的基盤を強化し、大衆闘争を基礎に選挙闘争もふくめた闘争を強化している。
日本の自立労連からの派遣団が訪問した南タガログでは、日産の現地工場の労働組合がストライキをたたかっていたほか、ネスレ、矢崎総業など多国籍企業の工場で多彩なたたかいが組織されていた。
「ノー・ユニオン、ノー・ストライキ(組合を組織させない、ストライキをさせない)」政策が実施されているカビテ州の輸出加工区では、きびしい弾圧をかいくぐって、教会を中心とした「労働者支援センター」が人権問題などを旗印にして労働者のなかにはいり、労働者の教育や組織化をすすめている。
また、南タガログ地方では、スラム街など貧困民の生活をまもる団体の組織化が成功をおさめている。
アメリカのイラク戦争にたいしては、フィリピンでも国内の弾圧戦争に反対するたたかいともむすびつけて大規模な大衆闘争がおこなわれ、二月二八日のマニラの集会には、進歩勢力だけでなく教会勢力や市民団体もふくめて五万人の大集会が開催されている。
こうした大衆闘争の組織化を基礎に、フィリピンの進歩的勢力は、来年の総選挙(大統領選、国会、各地方議会)へむけて選挙闘争の準備をつよめている。
すでに、下院には進歩勢力の政党「バヤン・ムナ」(人民第一という意味)が三議席を確保し、議会の演壇から政府をきびしく追及し、大衆から強い支持をうけている。しかし、フィリピンの選挙制度〈注3〉では、「バヤン・ムナ」としては三議席以上ふやすことができないため、これとはべつに労働者・農民、女性、海外出稼ぎ労働者の家族など、階層別の合法政党をあらたに結成して進歩勢力の議席全体を拡大していこうとしている。
フィリピンの進歩勢力のなかでは、かつて選挙闘争の位置づけをめぐって、論争が何度もくりかえされてきたが、この十数年間の運動の総括をへて、大衆闘争が第一であり、議会闘争は補足的なものであること、議会活動は大衆闘争に奉仕するものである――という位置づけが定着してきているようである。また、弾圧がつよまるなかで、合法的に活動できる領域をできるだけひろげていこうという狙いもあるようだ。
五月七日〜九日に開催された国際会議では、労働運動をめぐる世界の情勢と労働組合の国際連帯のアクションプランが論議された。
情勢討議のなかでは、グローバリゼーションのなかで世界各国で共通して、民営化、規制緩和、派遣労働の拡大や失業が増大していることが論議された。とくに今年大きな話題となったのは、WTO(世界貿易機関)協定の一部であるGATS(サービス貿易に関する一般協定)であった。このGATSの貿易交渉なかでアメリカなどが要求しているのが、水道、電気通信、教育など政府の公共サービスの民営化や国境をこえた多国籍企業の参入の自由化である。とくに第三世界諸国では、公共サービスの民営化によって企業による露骨な営利主義がまかりとおっている。フィリピンでも国営の電力会社が民営化されたが、規定の料金を大幅に上回る料金を利用者からまきあげていたことが発覚し、国会でも大問題となっている。
また、グローバリゼーションと戦争には密接な関係があることが論議された。アメリカやカナダなどでは、イラク戦争反対の運動がもりあがるなかで、いままで運動のなかでもつかわれることがなかった「帝国主義」という言葉がひんぱんにつかわれるようになり、「敵は帝国主義だ」と位置づける活動家がふえていることも報告された。会議では、世界的な反戦運動のもりあがりを基礎に、こんごは労働者・労働組合が運動のイニシアチブをにぎり、反戦運動の成果を反帝国主義へと高めていくことの必要性が強調された。
労働者の国際連帯行動を強化していくための具体的なアクション・プランとしては、グローバル化のもとで各国の労働者が置かれている状態について、統計資料もふくめて調査・分析して蓄積し、実現可能な行動計画を提起していくための調査研究委員会を設置することが確認された。来年は国際人民闘争連盟(ILPS)の第二回大会が予定されているため、この調査研究委員会は、ILPSの労働者分科会としての取り組みとすることも確認された。