『労働通信』2003年7月号

 編集部は、北九州地域で中小・零細企業の労働者の組織化をとりくんでいるユニオン北九州(全国一般全国協北九州合同労働組合)の本村真委員長に、地域の中小・零細企業労働者の現状とたたかいの課題についてお話を聞いた。(談話・文責は編集部)

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 *顧客サービス向上と労働条件の改善を求めてたたかう
   ―ユニオン北九州セルバン分会

 *資料から見る中小企業の実態

 

 これまでの「春闘」は事実上、大単産だけなく、中小労働組合でもなくなったようなものだ。今「春闘」では、日産のゴーンが格好をつけて組合の賃上げに応じただけで、あとは賃上げどころかというきびしい状況で、賃下げのところもあるようだ。わたしたちのような組合は、「春闘」時だけではなく、通年の生活給闘争としてやっている感がある。トラックやタクシーなどでは、賃下げ阻止の方針でたたかっているが、ビルメン(おもに清掃、北九州では二〇〇社ぐらいある)などでわずかであるが賃上げをかちとった。ビルメンでは、時間給で一三円のひきあげを獲得し、やっと時給六八四円になった。ベースは低いが、一カ月約二三〇〇円程度のひきあげになった。

ユニオン北九州
本村委員長

 あるパソコン教室では、インストラクターの技術を習得している労働者が時給で七五〇円だ。一日八時間はたらいて月に一三万円ぐらいにしかならないし、しかも二カ月の有期雇用である。この企業は、まったくでたらめだ。ここではたらく労働者はつかいすてである。企業もわるいが、それよりも、これらのことが法的にゆるされているいまの政治経済全体の傾向に問題がある。

 こうした雇用問題は、労働組合の賃上げ闘争を困難にしている。これは、一九九五年に日経連(独占資本)がうちだした「労働力の流動化」政策(『新時代の日本的経営』)の強行や、その後の政府による労働基準法をはじめとする労働法の改悪などによって、雇用形態と労働構造が変化してきたことによるものだ。いまでは会社・資本は、「企業の自由」といって、解雇はしほうだいである。しかし、労働者は首をきられる自由しかない。まさに、これこそ現代の奴隷制度だ。今年は、労働法があらたに改悪される。この先には、労働組合法の改悪も準備されている。アメリカ型の労働組合法が導入されて、労働組合をつくることにも制限がくわえられるようになる。いまは、日本では、一人でも労働組合に加入ができるようになっているが、これができなくなる恐れもある。いまや、中小・零細企業の労働者のせつじつな問題は、賃金が低いということもあるが、それよりも首を自由にきられているということである。

 ビルメン業界などに特徴的な現象は、自治体などの公契約をはじめとして、入札で仕事をとってくるが、自由競争の名のもとに最低基準をもたない入札価格が横行し、実体をもたない派遣会社などが暗躍してデタラメな低い契約金額で落札されることだ。近々では二つほどの実態にぶつかった。ある職場は事業撤退で全員解雇という事態すらあった。また契約価格では、労働者の最低の賃金すら保てない。この契約のなかにはじめから労働者の賃金をくみ込むことがまともに考えられていない。こうした仕組みが中小企業労働者の低賃金構造をつくりだしているといえる。これはタクシーの自由化においても、トラックの運賃ダンピングにおいても同じことである。こうした構造と対決できる組織化が求められている。

 最近、うちの組合で、生活対策部という部署をつくった。それは、組合員のなかで生活破産者が増えてきたからである。労働者が数百万円というカネをサラ金に借りてにっちもさっちもいかないようになっている。カネ貸しに貯金通帳をうばわれているものもいる。組合は、清算と再出発への手続きを指導している。こうした借金のほとんどが、いっそうの低賃金化はもちろんだが、子どもの教育費を含めバブル時に膨らんだ生活から逃れられないことによる借金である。賃下げ攻撃とは徹底的にたたかい、激変を防ぎながら、かたや現実的には生活を縮めることも組合員には訴えもする。労働者は、「破産」するのは、恥ずかしいといって抵抗する。借りた金は当然返さなければならない。しかし、われわれは「恥ずかしがることはない」、「銀行をみてみろ。破産して政府から不良債権としてぼうだいなカネをとっているじゃあないか。それにくらべたら、われわれの借金棒引きはささやかなことだ」という。弁護士にたのむとカネがかかるので、労働者自身が勉強してそれができるようにしている。極論すれば、現在の資本主義社会が保たれているのは、借金をリセットできることと、消費者金融のような仕組みが防波堤もしくは緩衝帯になっているともいえる。問題は、どうやってあかるく再出発できるかだ。借金ごときで命を捨ててはいけない。債務整理というかたちによる組合員の生活防衛も重要な活動になってきている。

 総じて、個人加盟という「一人でも入れる」というかたちでのユニオン・合同労組のきめの細かい活動は、職場・生活のすべてを含んで労働者の団結体として、個に分断された労働者の状況を再度の階級形成をすすめるひとつのかたちとしておこなわれている。また、三〇%をこえる非正規雇用労働者における活動も重要な課題であり、大企業・本工・正社員としてだけの労働組合は、非正規雇用労働者の権利を守ることなしにみずからも守れない。さらには、旧来の大産別・大企業労連ではなく、底辺からの産別・業種共闘の組織化が重要なカギとなる。旧来の企業内組合への一般的批判や観念的な批判ではなく、各業種的多数派をめざし、地域から業種から、職種をこえて団結する合同労組が多数をめざすことを困難ではあるが取り組んでいかなければならないと思う。リストラの原点ともいうべき、かつて国鉄分割民営化が強行される時に、国鉄労働者に比して劣悪な労働環境ではたらく交通運輸労働者総体は残念ながら国労の味方にはならなかった。いま、郵政労働者にかけられつつある公社化・民営化による労働条件切り下げも、自分たちを守ろうとするだけではたたかえないし、ライバル視されている劣悪な労働条件のもとにある宅配輸送などの労働者の労働条件をひきあげるたたかいに協力し、かれらと共闘することこそ鍵ではないかとも思う。

 わたしたちは、こうした観点から職場の闘争を基礎に、産別・業種の闘争、地域的なたたかいに全力をあげていきたい。     (談)

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