『労働通信』2003年7月号
四月一日、日本郵政公社が「真っ向サービス」をかかげて発足したが、適切な要員の配置もしないまま新しいサービスをうちだしたために、職場では大きな混乱が起きている。このなかで、労働者のあらたなたたかいもはじまっている。
小泉首相は、郵政公社の初代総裁に株式会社商船三井の会長であった生田正治氏を任命した。初代総裁は、「信頼がかわらないようなサービスを」、「職員の能力開発と公正な成果主義を」、「豊かな価値ある公社を創造していく」と抱負をのべ、これを具体化するためには全逓(労組名が変わる予定)のちからづよい協力を必要としているとして、「労働組合とは良いパートナーシップを形成したい」と期待している。
こうしたことを基礎にした公社発足の施策により、これまでの作業管理や方法、労務管理などを変化させ、労働者の意識が変質させられることになる。とくに、労資の意識改革では、予算主義から決算主義に(官庁会計から企業会計に)転換し、これまで以上にコスト削減意識を強力に注入してくることはまちがいない。他方、全逓は基本的にこのような施策を支持し、「未来を展望した事業改革、私たち一人ひとりの意識と行動の改革、そして公社時代における郵政労働運動の構築と組織・財政の改革」を本年大会で提案し、公社「健全」経営に必須の「合理化・効率化」にともなう労働強化・雇用不安にたいして「総合的なセーフティネット」を構築し、組合員の安心と安全をまもると説いている。
日本郵政公社の発足による「改革」は、明治いらい一三二年ぶりの改革である。この郵政公社の発足は、日本独占資本の政策と方針にもとづくものである。このかれらの方向は独占資本にとっては日本資本主義の発展ととらえており、明治いらいのふるい仕事のあり方やシステムなどの「改革」をめざしているといえる。このなかには、ふるい形式的な、また、官僚的なものをうちくだこうとする面があるが、それ以上に重要なことは、労働者がこれまでたたかいとってきた既得権のはく奪、権利意識や労働者としての自覚などを喪失させ、使いやすい労働力を必要なだけ得るためであることをみおとしてはならない。
全国の郵便局職場では、仕事のあり方や作業方法の変更、そしてコスト意識を押しつけられ、労働者は想像をこえる混乱に直面している。公社当局は「顧客満足・サービス第一」をとなえるが、無計画な人員削減とコンピュータ至上主義の作業がおこなわれ、これまでの作業システムや作業方法の破壊が職場で蔓延している。ある都市の普通郵便局ではこうなっている。
郵便課(本務者約三○人・非常勤約六○人)では、四月一日から窓口が二四時間とおして開設されることになった。夜八時以降の窓口開設のための準備が十分にととのっていないにもかかわらず実施にふみきっている。夜の一○時以降にその当日のマルツ書留(留守宅からもちかえった郵便物。局に一週間留め置く)を交付するが、特殊課から窓口へのマルツ受けが夜の一○時ごろで重なり、書留の査数確認が満足にできず、保管箱に入れる準備すら出来ずに来客者に交付するため、窓口に混乱が発生している。これは、要員不足のために時間的な保証ができないことからおきている。
窓口の二四時間開設とともに、夜九時までの配達実施となった。夕方五時の特殊郵便と窓口での還付期間切れの再配達、さらに申出の再配達が処理しきれないぐらいあり、これが常態となっている問題がある。この延長業務について、おおくの労働者が以前から、「昼間には不在がおおいから何もかも夜間に再配達しなくても希望する人だけにせよ」といっていたが、それを無視して当局は再配達をおしつけたものである。
局内作業でも、人数減で個個の仕事量が増え、非常勤労働者も勤務時間内に仕事がおわらない場合がおおくなっている。午後四時から午後八時までの勤務でも、一○時ぐらいになるというのが常態化している。ときとして一一時ごろ終了になることもあり、この時間帯の公共交通は激減する。特に若い女性はたいへんなことである。聞いてみると歩るいてかえって深夜一時に家にたどりついたこともあるそうだ。職場では課長にそのことをつたえるなどの行動をおこしている。課長は「よくわかっている。何かあったらたいへんだ」といって態度を変化させている。当局の実際にあわない施策や考えには改善をつよくせまることが大事である。
A局では最近、四回の職場集会をひらいて意見の交換をはかった。仕事の円滑化と職場環境の整備、労働条件向上のために真剣な論議をしている下部組合員の意見は、きわめて建設的である。これまでのべてきたように、さまざまな職場の混乱の原因をつかんで問題の解決を当局に進言しているところにそれがあらわれている。作業をまちがいなくスムーズにすすめる案や、「客をおこらせない」方策などである。現場労働者の提案を採用すればまちがいなく「公社」は発展すると思われるが、これを阻んでいるのは現場を知らず、コスト意識丸出しで、古い体質の経営者・管理者である。現場ではこのような意識の向上がきわめて重要であり、その土台がいま出来つつある。