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自由主義によるリストラと南北統一の展望についての深い考察

キム・チュンスン

PICISニュースレター77号(2000年11月22日)
『労働通信』ホームページ 2000年12月20日掲載

 以下の文章は、韓国より韓国の労働運動や民主的運動の現状、社会の状況などを英文のEメールで発進している「PICISニュースレター」77号(2000年11月22日付)に掲載されたキム・チュンスン氏の論文を翻訳したものです。
 この論文では、最近の韓国の「奇跡的な経済回復」や南北統一へむけた動きへの一面的なマスコミ報道を批判したうえで、韓国の民主的変革をもとめる運動と南北統一をめざす運動は不可分のものであり、新自由主義政策に反対する運動など韓国での人民運動の発展が、将来の南北統一を人民の利益に合致したものにしていくカギをにぎっていると論じています。
 いまの朝鮮半島情勢やそれとかかわるアジア、日本の情勢を読み解く上で参考になると考え紹介します。

 

 おそらく国際社会はこの数年間、マスコミをとおして韓国から二つの主要な出来事についてのニュースに接したことであろう。

 一つは、97年末から98年にかけての金融危機である。それは、韓国のみならず東アジア全体に衝撃をあたえた。いま一つは、最近の南北首脳会談であり、それにつづく離散家族の再開である。

 前者についての国際的な報道の内容は、その被害について心配するものから、最近では「奇跡的な」回復を賞賛するものへとトーンがかわっている。後者については、韓国の金大中大統領が「平和と和解」をリードし、冷戦時代の最後の章きりひらいたように描かれている。それは、金大統領がノーベル平和賞を受賞した理由の一つとなっている。

 こうした分析は、真理の一部をしめすものでしかない。

 主要な経済指標は、危機からの全面的な回復をしめすのみならず、安定成長へとうつったことを示している。外国為替レートは安定化し、外貨準備高も改善し、証券取引市場も回復した。インフレもおさえられ、経済成長率も改善している。

 南北の各部門の政府高官の会談がおこなわれていらい、南北の緊張もかなり緩和しているのもたしかだ。南北は、おたがいの社会を容認できるようになってきた。それは、朝鮮戦争いらい50年間にもわたる不信と敵対の関係からの脱却である。

 しかしこうした歪曲した見方――控えめにいうなら「えり好み」した見解では、朝鮮半島でおこっていることのすべてを語ったことにはならない。

「奇跡的な経済回復」の暗黒の側面

 IMF危機いらいの3年間は、社会的に抑圧されたもとでのたたかいの連続であった。それは、長年のたたかいでかちとってきた労働基本権をまもるたたかいである。

 労働者、農民、貧困人民、そして進歩的な活動家たちは、他の社会運動とも連帯して、国際金融機関、政府、企業などが一体となってすすめる構造調整政策に反対して休みのないたたかいをつづけ、数度にわたるゼネストを組織し、数えきれないほどのデモや闘争をたたかってきた。

 韓国の左翼勢力は、労働時間の短縮、社会保障制度の拡充、臨時雇用制度の廃止、雇用の安定、政府の政策決定への労働組合の参加、ホームレスや強制たちのきさられた人人への住宅の保証、公共部門の民営化計画の撤回、女性を非正規雇用労働者や臨時労働者にゆだねておこうとする雇用政策の撤回など多くの要求をかかげた。

 しかし、3年間にわたるIMFの新自由主義、リストラ政策がもたらしたものは、外国経済への従属の深まりであり、経済の不安定化、解雇、不安定雇用、失業の増大であり、富が一部のものに偏り、社会的な連帯をうしなわれたことなどである。韓国の人人の生活条件は、全面的にかつ劇的に悪化した。

 政府は現在、構造調整政策の第二段階をおしすすめようとしている。広がる反対の声をおしきって、公共部門のさらなる民営化と外国への売りはらいを推進しようとしている。

 これらは、会社組織のマスコミがさけてとおろうとしている「奇跡的な経済回復」の暗黒の側面である。

「平和と和解」のスポットライトのもとで見えなくなっているもの

 朝鮮半島の統一にかんする報道もまた一面的である。

 韓国の進歩的勢力のなかでは、今回の南北の動向について見解の相違もあるが、つぎの点については一致している。それは、現在すすめられている南北交流はほとんど完全に資本家の主導のもとですすめられており、その結果として、二つの制度の相互関係や、真の平和と和解のために解決しなければならない課題についての進歩的勢力のあらゆる見解が排除されていることである。

 そこには、南北首脳会談からその後の交流について進歩的勢力がみせた無気力な立場が部分的に作用していることもたしかである。

 韓国の左翼勢力は、4月の総選挙直前におこなわれた会談の発表について、一般民衆とおなじようにおどろいた。そして、突然の政治情勢の変化に対応する具体的な政策をもつことができないまま、その後の過程で分散してきわめて効果がない政策しかもつこができなかった。

 このことは、在韓米軍や国家保安法、そして現在の休戦状態にかえて武装解除と平和条約を締結するための会談というデリケートで重要な問題ともかかわってくる。これらは、韓国の進歩的勢力の長年にわたる要求である。だが、おおくの民衆や声や、ここ数カ月間、二つの制度の分断に直接かかわって韓国でたたかわれている闘争があるにもかかわらず、会談の場からは無視されている。

 一方、ビジネス界は今回の交流で中心的な役割をはたしている。韓国の三大財閥の一つである現代グループはその急先鋒である。その創立者であり、名誉会長であるチョン・ジュユン氏は、北の金正日氏とさえ会談し、経済発展について討議した。

 現代は、金剛山(北朝鮮の東部に位置する)観光に責任をもち、またいくつかの主要な建設、製造業などにかかわっている。いわゆる「経済特区」「自由貿易地帯」が設立され、北朝鮮になだれ込もうとする韓国の企業をむかえいれようとしている。

 こうした地域は、二つの国家の利害が一致した結果としてうまれている。北は、みずからの政治・経済体制を劇的に変化させることなく外資をひきこみたいとのぞんでいる。一方、南は、北の安価な労働力をつかい、潜在的な新しい市場のなかで不動の地位を占め、利益を還流したいと考えている。

 自由貿易地帯は、北が全面的な南北交流のなかでどのような方向とろうとしているかをしめすよい例である。現代グループの関係者は、北朝鮮の状況のもとでは労働争議はおこらないだろうと自慢げに語り、北への継続的な投資が計画されていると語った。

 資本の側はほとんど無制限に北へいくことができるのにたいして、市民運動、社会運動、人民運動の側の交流はきびしく制限されてきた。

 このことは、政府の統一過程についての見解を反映している。すなわち、明確な軍事的優位をたもち(そのため和平交渉を阻害する)、資本に指導的な役割をもたせ(そのため韓国の資本家の利益に奉仕する)、最終的には北の社会制度を南の新自由主義の資本主義経済に吸収してしまおうというものである。

 「平和と和解」のために会談のなかでの微笑と握手、パレード、優雅なディナーなどのもとでスポットライトの下で見えないものがある。

南の民主的運動と南北統一の運動は切り離すことができない

 分断の制度は、北と南の人民をともに過去50年間にわたって抑圧し、搾取してきたものであり、平和的民主的な統一は南北の朝鮮人民がともに念願してきたことである。

 南北統一へむけた政治的条件の突然の前進により、この憎しみと抑圧の制度の終焉が最終的にみえてきたようである。この制度を廃止し、あらたな制度をうみだしていくうえでは、民主的変革と人民の力をつよめるための運動を、統一のための運動ときりはなすことができないことは明確である。

 朝鮮人民、そして世界の人民も、南の民主的な人民運動のなかでつくりだされる前進が、二つの制度の関係の前進と南北人民の利益に合致する統一の前進に決定的な要因となることを認識することが重要である。

 韓国の人民が、資本と新自由主義のグローバリゼーションに対抗し、基本的な民主的権利のためのたたかいのなかで、さらに人民の生活のためのたたかいのなかで、政治的な力をつよめるたたかいのなかで、どれだけのものもをたたかたいとり、防衛できるのか−−−。そのことは、どのようなかたちで統一がすすめられていくのかに直接の影響をおよぼすであろう。きたるべき数年間に進歩的陣営がおこなう行動と判断は、将来の統一された朝鮮に永続的な影響をもたらすであろう。

 

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