海外で戦争に参加する第一歩
イラク特措法強行採決

2003年7月28日ホームページ掲載

 イラクに自衛隊を派兵するイラク復興支援特別措置法案(以下イラク特措法)は7月26日未明、参院本会議で与党3党の強行採決で成立した。日本は、先の有事法制の成立とともに、実質的に海外で戦争に参加する第一歩を踏み出した。これは歴史的な転換点である。

世論の大勢は反対

 毎日新聞の世論調査(7月6日)によると、自衛隊派兵「賛成」は19%にとどまり、「反対」が三八%、「どちらとも言えない」が39%となっている。八割の国民は自衛隊の派兵には賛成しかねているという結果である。

 各地で行われたイラク特措法反対集会の参加者からは、「自衛隊が占領地域、しかもまだ戦争状態の他国に武器を持っていくということは、戦争をしにいくこと以外のないものでもない。こんな法律を許せるわけがない」(学生)、「日本は米国の言いなりになっており、今回の法律も米国へのごますりにすぎない。そんなことに自衛隊員や現地で本当にイラク国民のために働いているNGOの人たちの生命を危険にさらしてよいのか」(労働者)、「自衛隊が海外に派兵するということ自体許せない。しかもそのような重大問題に対して国会の事後承諾で済ませることができるなど信じられない法律だ」(主婦)などイラク特措法批判の意見が多く聞かれた。

 その他多くの世論調査の結果からもわかるように、この法律は、大半の国民の意識を無視して成立させられたものである。

米英の侵略戦争を正当化

 イラク戦争の根拠となった「大量破壊兵器」はどこへいったのか。米英両国では情報操作が議会でも問題になり、政権自体が追いつめられるという事態にまで発展している。小泉政権は、この「大量破壊兵器」を唯一の根拠に米国の侵略戦争を支持してきたが、それが疑わしく未だに証拠すら見つからない状況のもとでも、今回のイラク特措法により米国の侵略戦争を正当化しようとしている。イラク特措法のはじめの条文には国連の決議番号をあげ連ねあたかも国連の国際協調の下での法律であるようにうたっているが、全くの欺瞞である。条項に盛り込まれた国連決議の解釈もねじ曲げられたものでしかないが、なによりも国連を無視して侵略戦争を行ったのは米国ではないか。その行為を支持することにいくら国連の決議をあげても全く意味がなく詭弁でしかない。この法律は全く正当性のない法律なのである。

占領地域への軍隊派遣

 イラク特措法では、非戦闘地域のみに限定して派兵するとうたわれているが、多くのマスメディアも指摘するように占領地域での戦闘・非戦闘地域の区別など出来るわけがなく、また、情勢は激しく変化しており、今日戦闘が行われなくとも明日には戦闘が起こらないという保証はない。全く現実を無視した条項であるといえる。現実に毎日イラク国民と米兵が数人づつ戦闘で死んでいる。既に米軍の戦死者は91年の湾岸戦争の戦死者を上回り200人に達しようとしており、イラク国民にいたっては女、子供、老人など戦闘員以外の弱者がその何十倍も無残な殺され方をしている。何よりもブッシュ自らが「イラク全土は戦闘状態が続いている」と明言しているではないか。非戦闘地域に限定という言葉にだまされてはいけない。イラク派兵はまさに戦争状態の地域へ派兵し侵略戦争に日本が参加するということなのである。

歯止めなき戦闘行動へ

 イラク特措法は、自己や指揮下にあるものの防衛のための武器使用が認められている。しかし、常に生命の危険にさらされる戦時下の地域では常に武器使用を認めていることと同じ意味である。それはまた、米国の侵略に抵抗するイラク国民を虐殺するということでもある。日本はこの法律により、ついに他国民を侵略し虐殺することを許されたのである。

 バグダッド周辺で米軍へのゲリラ攻撃を続ける武装集団のうち最大級とされる組織の幹部が7月8日、毎日新聞記者のインタビューに応じて語ったところによると、米国への攻撃理由は「親フセイン意識からではなく、米軍の占領に対する抗議だ」と語り、「日本の自衛隊がイラクに来て米軍に協力すれば、占領軍とみなし、攻撃対象にする」と明言している。

 私たちは、マスメディア等で「米軍に反抗する者」=「残忍な独裁者フセインの支持者」という構図を植えつけられている。しかし、冷静に考えるとフセインの支持者でなくとも本当に自分たちの国を自分たちで築いていこうとする者たちにとって自国を侵略した米国と闘うのは当然のことである。侵略者である米軍を拒否し抵抗するのはイラク国民の権利ですらある。事実、民衆の大衆的闘いに対して米軍は武力で弾圧し多くのイラク国民を殺害している。日本はこのような米軍を支援し同じように、イラク国民を抑えつけるために、イラクに自衛隊を派遣するといっても過言ではないであろう。まさに抵抗するイラク国民に銃を向け、殺害し、イラクの民主勢力を弾圧することがイラク特措法に盛り込まれた条項の真実である。そして一旦戦闘が起こると引くに引けない状態となり武力行使は歯止めのかからない最悪の事態を招くであろう。

本当に復興支援なのか

 今回のイラク特措法は表向きイラク復興を支援するように見えるが、自衛隊派兵の最大のねらいは米占領軍への支援・協力である。今、イラクでは無法な侵略行為を行った米軍の軍事占領自体がイラク復興を阻害する最大の要因となっている。日本が米占領軍を支援するということは逆にイラクの復興を妨げることに他ならない。日本政府が本当にイラク復興支援を目的とするならば、米占領軍の即時撤退を要求すべきである。

なぜイラク特措法なのか

 今回のイラク特措法は、四年間という時限立法であるが、政府はこの過程をへて自衛隊をその他の外国にまで派兵できる永久法の成立を狙っている。イラク特措法はそのひとつの過程でしかない。そして、今年6月に成立した有事関連三法案とともに本格的に日本も米国と同じように侵略行為を行える素地を造りつつあるのである。

一体誰が得をするのか

 イラク特措法による米占領軍への支援は、一体誰のためであろうか。自衛隊員や支援事業を行う民間人を危険にさらしても行う価値のあるものであろうか。この支援の唯一の狙いは巨大資本の利益のみである。占領後のイラクの石油資源と市場を思うままにし米国とともにイラク国民からの搾取による莫大な利益を得ることのみが目的なのである。過去の歴史が示すように、その目的のためには、自衛隊員や支援事業を行う民間人、そしてイラク国民の生命を犠牲にしてもかまわないということである。事実、既に米国の巨大企業がイラク復興事業を名目に次次とイラクに進出し虎視眈眈とイラク市場の席巻をねらっている。米国はブッシュドクトリンのもと、米国に歯向かうものは全て悪とし武力で押さえ込もうとしている。このような米国の世界戦略に日本の巨大資本も追随していこうとしているのである。日本は米国の侵略に手を貸すとともに略奪行為にも手を染めようとしている。

平和反戦運動は新たな段階へ

 国民の生命を犠牲にしても巨大資本・大企業の利益を追求し、侵略戦争を正当化するような政策には断固反対していかなければならない。

 今、世界的にもこのような米国、日本をはじめとする帝国主義陣営の動きに危機感を覚え、平和反戦運動が盛り上がろうとしている。ベトナム反戦運動以来といわれたイラク反戦運動の盛り上がりもそれを象徴している。しかし、イラク反戦運動が盛り上がったにも関わらず、私たちは米国の侵略を止めることは出来なかった。また、日本でイラク特措法反対の運動が各地で大きな輪に発展したにも関わらず、イラク特措法の成立を許してしまった。これは、私たちの平和反戦運動を新たな段階へ発展させなければならないということへの教訓である。戦争の本質を見極め、戦争を仕掛ける者たちへの決定的な打撃を与えるような運動の再構築が要求されているのである。それなくしては今後も同じ侵略行為が、イラク以上の規模で行われることは間違いない。そのためにも「戦争を仕掛ける者たち」=「巨大資本」の最も脅威とする「労働者の団結」が重要な要素となる。平和反戦運動と労働運動との強固な結びつきが無法で残虐な侵略行為を阻止するもっとも大きな力となるであろう。

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