| 労働組合のつくり方――実践編 |
「組合結成(旗あげ)」は、未組織のなかまの夢の実現ですから、組合づくりにとりかかるやいなや、はやくやりたい、いそぎたい、と思うのは自然の人情です。
しかし、長年、組合づくりを経験した側からいわせてもらえば、組合の旗あげというものはだいたい「いつでもできる」ものなのです。一見ばらばらな状態であっても、いっせいにみんなによびかければ、じつはみんなが内心では期待しているわけですから、大部分は即座に加入申込書に署名してくれるものです。これは長年の経験から断言できることです。
問題は、旗あげのあとにあるのです。準備が不十分だと会社があの手この手で弾圧や買収にのりだしてきた場合に、インスタントの弱点をさらけだしてしまうのです。
たいせつなことは、旗あげのあと会社のどんな攻撃があってもびくともしない体制をつくりあげることであり、そのような十分すぎるほどの準備による完璧にちかい体制をつくってしまえば、会社につけいるすきをあたえず、攻撃を未然に防止し、組合つぶしの野望を未然にくじくことになるわけです。
事実、経験から明言できるのは準備を十分やった場合は旗あげ直後の攻撃をうけていません。
準備期間中は普通程度の秘密活動でなく、徹底的で、思いきった極秘を、準備会メンバーがおたがいにまもりぬくことを厳重に実行しぬくのです。
酒をのむと口がかるくなるなかまは、ざんねんながらメンバーにいれないとか、ある時期までは家族にもけっしてしゃべらない……というくらい徹底した極秘をまもりあうのです。
これは、会社側に「ぜったい」に秘密がもれない、もらさないという一点をまもりきるためにおこなうのです。そのためには、ふつうの秘密ではぜんぜんたりません。ふつう程度の秘密というやつは、「秘密だから」というので、いっそうひそひそ話でいつのまにかひろがってしまうものです。
徹底した極秘体制があれば、万が一にもれたとしても、もれたルートがわかるし、対策がたてられるわけです。
組合づくりは、旗あげの最後の瞬間まで、極秘をまもりきることがなによりもたいせつです。
何カ月もの期間、徹底した極秘活動をつづけるというのは、なみたいていのことではありません。
最低でも週一回、きめられた日と時間と場所に、人目をしのんで、きちんとあつまり秘密の会議を、きちん、きちんとつづけるというのは、そうとうにきびしい活動です。
しんけんさと実行力と忍耐力を必要とするこの準備活動をみごとにのりきれるようならば、たいがいの資本家の悪質な策略や攻撃を未然にふせぐこともでき、効果的に確実に対抗できるといえます。
ぎゃくに、準備活動のなかでたえられなくなったり、旗あげにばかりあせったりするようでは、旗あげ後の資本家側とのきりむすびで落第することがあきらかであり、旗あげをいそいであせれば、あせるほど、上部団体の指導としては旗あげにふみきれない、という皮肉な結果となってしまいます。
@労働組合の基本的な知識を吸収する
これらを上部団体のオルグを講師にしたり、自分たちで独自に順序だてて勉強します。
Aその会社・経営のいっさいの知識、就業規則など
その会社のなかではたらいていても、あんがい、自分のもち場以外の知識はうといものです。とりわけ上部団体のオルグにはまったく未知の世界ですから、準備会のメンバーが先生になってオルグにおしえこみ、同時に準備会メンバーも案外、社内の問題を知らないことがおおいわけですから、秘密のうちに調査活動を活発にやって、みんなで会社の内情や職場の問題や、労働者の要求を準備会で総合的にしらべぬくのです。
また会社の就業規則を研究することと、実際上の基準法違反事項の調査もかかすことができません。
B準備会の組織活動
準備会は会社ではたらいている全労働者を対象に調査をすすめ、会社の部・課・係ごとに検討し、勤続年数がふるく下級職制でもあり、みんなの信望があって、そして会社に対抗してくれる正義感のつよい人物をさがすとか、準備会メンバーがかたよった職場におおい場合は、準備会が会社の全域にひろげられるようどう接触したらよいか、などを検討します。
そういう場合のためにも、とくに準備期間中でたいせつなことは、準備会そのものは「徹底した極秘」活動ですが、しかし同時に、可能性を最大限にいかした「公然活動」を考える必要があるのです。極秘と公然は矛盾するようですが、この両面のつかいわけは組合のオルグとも十分相談して実行することによって、極秘一本槍のやり方ではとてもつかめない人材や、組合づくりへの飛躍的な職場の条件をつくりあげることができるようになるのです。
たとえば、会社がやっている野球とか旅行とか、お花とかのサークルに積極的に参加して多数のなかまとつきあえるようにするとか、会社のなにかの親睦会があるときは、条件さえあればその役員となり、親睦会としての活動を積極的にやって親睦会をみんなにちかづけるとともに、公然とみんなと接近して、準備会メンバーにふさわしい人材をみつけだすようにするのです。
一見すると、たいへん遠まわりするようにみえますが、「いそがばまわれ」で、職場のなかの、まだ組合づくりの意識ではおくれている多数のなかまたちを自然に成長させ、すすんだ意識の準備会メンバーにちかづける早道となるのです。ですから、親睦会がない場合に、組合づくりのためにわざわざ親睦会を結成するケースもあるわけです。
いずれにせよ、すすんだ意識の一部の人人だけの組合づくりなら、あしたからでも旗あげできますが、職場の大多数、約八割以上を組織する目標をたてるなら、それだけの準備が必要だし、悪らつな資本家ときちんと対抗していくのには、この程度の高等戦術を卒業することも必要なのです。
C準備会のなかま同士の強固な信頼関係をつくる
準備会のメンバーは、旗あげと同時に、ほとんどは組合の執行部となるはずです。ですから準備会は、たんに組合づくりの準備会というだけでなく、組合執行部の準備会でもあります。
それだけに準備期間中に、真の信頼関係(真の団結)をつくりあげないと、旗あげ後の、資本家家とのきびしい対抗関係のなかで多数の組合員を確固として指導しぬくことはできません。
真の信頼関係とは、準備会のなかま同士でなんカ月かともに苦労しあうだけではまだたりません。準備会の期間中に、おたがいの腹のなかをぶちあけあってつくりあげるものです。
準備期間というものは、この信頼関係をつくるためにあるといっても過言ではありません。
D上部団体オルグ・地域のなかまとの交流・信頼関係
将来にわたって指導の責任をおう上部団体の立場からいえば、上部団体のオルグは準備会の出発の時点から参加して、さいしょから相談し作戦をたてることがのぞましいです。
また、第二に組合オルグはその上部団体の代表であり、上部団体の顔です。このオルグと準備会メンバーとはかたちだけのつきあいであってはなりません。オルグをつうじて上部団体の性格や運動の仕方や指導方針を理解してもらうのですから、双方とも真剣勝負でなければなりません。
おれたちは組合のことは知らないが、オルグは専門家なのだからということで、オルグのいいなりになってはいけません。オルグは組合では専門ですが、職場の人のことや実状についてはずぶのしろうとであることをわすれてはいけません。
へんだなとか、妙だなと感じたことは、かならず質問してたしかめることがたいせつです。そして質問して納得できる回答がえられるかどうかがまただいじです。納得がいかないときは、おそらくオルグの方になんらかのあやまりか勘ちがいがあるのです。
勘ちがいのまま作戦をたてたのでは、たいへん危険です。
第三に、準備会活動のうちから、地域の労働組合のなかまと積極的に交流し、信頼関係をつくりあげること。実際の組合づくりの経験にまなぶことが重要です。
E要求づくり
さて、準備会活動が最終段階にはいったら、要求づくりのばんです。経営者側からうけた長年の抑圧や酷使、つもりつもった不平・不満があるだけに、あれもこれもととにかく山のように要求がでてきます。
しかし、公然化した当初は「すべての要求実現を」とはやる気持ちはできるだけおさえ、みんなが一致して頑強にたたかえる要求にしぼることです。同時に、公然化にともなう組合の基本的権利(組合事務所、電話、掲示板、時間内の組合活動の自由など)を重視します。
つまり、公然化のあと、比較的はやいうちに確実に成果をあげ、なかまの志気と団結をいっそう高める観点から、要求を整理するわけです。