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財界が9年連続で「ベアゼロ」を主張
日経連の労問研報告(財界の春闘方針)

2001年1月15日

 日本経営者団体連盟(日経連)は1月12日、臨時総会をひらき、独占資本、財界の春闘方針となる「労働問題研究委員会報告」(労問研報告)を了承した。

労問研報告要旨(日経連ホームページ)
奥田会長あいさつ要旨(日経連ホームページ)

 今年の労問研報告は、昨年につづいて「人間の顔をした市場経済」の理念をかかげている。それは、過酷なリストラ攻撃や雪印の食中毒事件にみられるような大企業の無責任体質への社会的な批判をすこしでもかわそうとするものである。だが、その内容は、やはり過酷な搾取の論理につらぬかれている。

成果実績主義を強調

 総会であいさつした奥田碩会長(トヨタ自動車会長)は「労働条件一般について、横ならびで決める時代は20世紀で終わったものと考えている」と述べ、全労働者やおなじ産業での一律賃上げ交渉に反対することを表明し、労働者一人ひとりの「成果・実績」にもとづく人事、賃金制度の徹底をもとめている。労問研報告は、このことを前提に、条件をめぐるトラブルを未然に防止するために、企業内にさまざまなレベルの労使協議の場をつくる努力が必要と指摘している。

 「成果・実績主義」といえば聞こえがよいが、実際には企業の利潤追求のために労働者同士を競争にかりたてるものである。これによって高い賃金や労働条件をえられるのはごく一部の労働者であり、大部分の労働者の賃金、労働条件はおしさげられ、資本だけがその成果を搾取しているのが現実である。一昨年から昨年にかけて輸出が好調な情報通信関連や電機などの主要産業は経常利益を11.1〜18.5%の純増となっているが、その成果が労働者に反映されていないことにも、そのことが明確にあらわれている。

9年連続でベア・ゼロを主張

 このことは、日経連のベースアップについての主張でいちだんとはっきりとする。報告では、昨年のような「賃下げ」という主張こそひっこめたものの、(1)日本の賃金水準が「すでに世界のトップレベルにある」こと、(2)社会保障費負担といった法定福利費などが増加していること、(3)「国際競争力維持の観点から、これ以上の賃金水準の引き上げは困難」であること――などの理由で、9年連続でベアゼロの方針をしめし、「雇用の最重要視」を労使交渉の課題におくべきだとしている。

 報告では、総額人件費の管理の徹底を強調したうえで、リストラなどで業績が回復した場合には、ベアというかたちではなく、(1)雇用の維持・安定に向ける、(2)賞与・一時金として配分する――ことが妥当だとしている。

雇用の流動化を促す

 春闘以外の雇用問題として、労問研報告では、労働人口が中長期的に減少するため、高齢者や女性、外国人の積極的な活用の重要性を指摘した。高齢者の雇用については、募集の際の年齢制限の緩和に向けて企業が努力することをもとめている。

 そして、中長期的課題としてあらたに「短時間勤務の正社員」の実現を提案している。派遣やパート、アルバイトといった雇用形態と、職種・勤務地の限定などの就労形態を組み合わせることにより、「働き方の選択肢を増やし、女性や高齢者の雇用につなげたい」(奥田会長)と説明している。

 これは、昨年うちだした雇用維持のためのワークシェアリング(仕事の分かち合い)構想を一歩すすめたもので、経営効率の向上、雇用コストの軽減といった会社側のメリットを挙げ、実現にむけた検討をうながしている。 
 これは、正社員は企業の心臓部分ではたらく少数の労働者だけに限定し、大多数の労働者や低賃金で無権利、雇用が不安定な臨時、パート、派遣労働者にかえていこうという「新時代の『日本的経営』」(95年に日経連がうちだした構想)をさらに具体化していくものである。

社会保障制度のいっそうの改悪

 そのほか労問研報告は、「民間主導の経済体制確立」のため、(1)いっそうの行財政改革と規制緩和、(2)産学の協力・連携などの教育改革、(3)消費税の増税、年金・医療・介護の改悪などによる国民負担の増大をうちあげている。昨年1年間をとってみても、年金制度、雇用保険、老人医療の改悪がつづき、正式スタートした介護保険制度は従来の介護の水準を大幅にレベルダウンするものとなり、まさに「カネの切れ目がいのちの切れ目」となる現実がおこっている。労問研報告の方向は、こうした事態をさらに深刻化させるものであり、大企業、独占資本の利潤追求に奉仕し、労働者、勤労人民に一段と過酷な犠牲転嫁をはかろうとうするものである。

「春闘」の再構築と労働組合運動の活性化のために

 連合や全労連は1月12日、この日経連報告を批判する談話を発表し、それぞれの立場から「春闘」をたたかうことをのべている。

「労問研報告」にたいする連合の見解
「労問研報告」にたいする全労連の見解

 失業者が300万人をこえ、リストラや企業倒産、解雇、賃下げ、ボーナスの未払いなど労働者をめぐる事態は一段と深刻になっている。労働組合のおおくが、こうした下部労働者の悩みや要求にこたえられず、IT(情報技術)産業の「花形」ともいうべきNTTの労働組合でさえはやくも「ベア要求見送り」をうちだすなど、2001春闘をめぐるたたかいはきびしい情勢である。

 だが、こうしたなかでも、おおくの労働者はこの現状を打開しようと、いろいろな職場や労働組合のなかで真剣な努力を開始している。「労働通信」のささやかなホームページにも毎月何件もの労働相談のメールがとびこみ、そのなかで労働組合づくりの取り組みもはじまっていることは、そうした全国の労働者の動向の一部を反映したものである。

 「2001春闘ネット討論会」は、こうした全国の労働者の情報交換や意見交換の場としてスタートした。これが、職場や地域での「春闘」の再構築と労働組合運動の再建に少しでも役にたてば幸いである。

 日経連の労問研報告批判を一つのきっかけとして、議論をもりあげていただくようお願いしたい。

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